がん研 肝胆膵外科ビデオワークショップ

ことばと動画で魅せる外科の基本・こだわりの手技

がん研 肝胆膵外科ビデオワークショップ

■監修 齋浦 明夫

■編集 石沢 武彰
渡邉 元己

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • i_movie.jpg
  • B5判  180ページ  オールカラー,イラスト45点,写真60点,Web動画 51本/117分
  • 2018年7月15日刊行
  • ISBN978-4-7583-1533-3

がん研肝胆膵外科の繊細な手技のテクニックがよくわかる!

本書は,がん研有明病院 肝胆膵外科で毎月行われている「手術ビデオ勉強会」の内容をもとに,基本手技をマスターするために有用な回を編集し,1冊にまとめたものである。レジデントたちが日頃はなかなか訊けないような手技の疑問を提示し,専門医スタッフが勉強会の臨場感そのままの会話体で,通常の手術書では伝えきれない一つ一つの手技のニュアンスを巧みな言葉と見本動画とシェーマを用いて解説している。コラムでは,専門医スタッフが若手外科医に向けて,手術だけではない外科医としてのキャリアを積んで行くためのヒントとなる論文投稿や海外留学などの経験について語った。肝胆膵外科を志す若手医師にとって必読の書である。
Web動画51本 計117分。


序文

巻頭言

 昨今の医療技術の進化は目覚ましい。今世紀に入りヒトゲノムの解読が成され,いよいよゲノム医療や再生医療が本格的に日常診療を変えるのもすぐそこまで来ている雰囲気です。手術もそう。今世紀に入り腹腔鏡を代表とする低侵襲手術が本格的に導入され,高精細画像や3D画像などその進化には驚かされるばかりです。縫合器や止血デバイスなどの新兵器は初めて出合うときはいつも子どもがオモチャを買ってもらったときのようにワクワクします。もちろん,手技がより安全,確実,簡単にできるために必要なものであることは言うまでもありません。このようにますます進化が加速する手術技術ですが,その名のとおり手術を行うのは現在も外科医の手であり頭です。ロボット手術もAIが制御しない今のロボットにおいては外科医の指で操作を行う手術です。手術に必要なのは外科医の繊細かつ確実な技術であり,それを可能にするのは,組織の脆さ,柔らかさを感知できる手先の繊細な感覚,外科解剖を理解し目の前にある術野にその解剖を透見でき無駄なく合理的に手を動かしめる頭脳であることは古今東西まったく変わっていません。外科学は科学と技術2 つの要素がありますが,私は技術の上に立つ科学だと思います。若手外科医にとって,外科学の科学の部分と手術の新規技術は学会で大きく取り上げられ議論され興味をそそる部分でもあるので自然に身に付いているのですが,最も根幹を支える古典的な外科手技は意外と盲点になりやすい領域です。
 本書は手術手技の基本を読みやすくまとめたものです。多くの芸事と同じように本の中の手技はそれぞれの外科医がそれぞれの師匠から手取り足取り習い,洗練させ,確立してきたものです。がん研有明病院は卒後5年目以降の多くの若手外科医たちが数年の期間外科手術手技の修練に日夜励んでいます。特に肝胆膵外科は脆い組織を扱うことが多く,細い血管の糸縛りなど繊細かつ確実な手術手技が要求されます。今回,院内で定期的に行っていた手術ビデオ勉強会をまとめたものがこのような本となったことは嬉しい限りです。本書が全国の外科医の手術手技の向上に役立ってくれることを期待しております。
 最後に忙しい診療の合間に本書の執筆編集に頑張った石沢先生,渡邉先生の二人にその労をねぎらいたいと思います。私にとっても,緻密な性格の渡邉先生や何事にも積極的に取り組む石沢先生を中心とした仲間たちと一緒にこのような手術談義をすることは至福の時間でした。また,出版社のメジカルビュー社様に心より感謝申し上げます。

がん研有明病院 消化器センター 肝胆膵外科 部長
齋浦 明夫

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はじめに

「ことばで手術を伝える」
 「ビデオを題材にした会話形式で,一般外科の基礎からマニアックな肝胆膵外科手術のコツまで解説する」 という本書のコンセプトが出来上がるまでには3 つの背景がありました。まず何よりも,その卓越した技術を魔法の言葉に変換して若い外科医をインスパイアしてきた齋浦部長から, 「撮り貯めた手術ビデオを活用して勉強会しようや」 と提案をいただいたこと。次に私自身が,書店に並ぶ医学書を手にするたびに, 「完璧なイラストと解説だけど,果たして手術の機微が伝わるだろうか」 と,いつも 「もどかしさ」 を感じていたこと。そしてもう一つ告白すべきは,あくまで仕事のためにやむなく
,最近流行のSNSを同僚と始めてみたところ,意外にも必要最小限の情報に会話の臨場感を乗せて 「送信」 するのに最適なツールだと気付かされたことです。40歳を過ぎるとどうしても長文になり,いわゆる 「既読スルー」 を頂戴すること頻回ですが,教科書であればすぐに返信が来なくてもいいわけですし……。
 本書の 「ソース元」 は,当科で定期的に開催してきた 「手術ビデオ勉強会」 をさらにビデオで録画し,その様子をレジデントの渡邉君が書き起こした 「口述筆記」です。特に齋浦部長の 「ことば」 は,神戸のアクセントを除き可能な限り 「原文ママ」 で掲載しました。一方,レジデントの質問は,優等生のG,楽観的なI,心配性のK,の3人に集約させました。この3 名にもモデルはいますが,私が相当程度に偏見と脚色を加えており,実際の彼らはもう少し 「まとも」 で信頼できる仲間たちであることを申し添えます。もちろん, 「ビデオワークショップ」 のタイトルが示すように,ビデオやイラストを豊富に取り入れ,一般外科の医師や看護師にも活用いただけるように配慮したことも本書の特長です。一方,本書は通常の手術書で伝えきれない,一つ一つの手技のニュアンスをお届けすることを主眼にしていますので,手術の基本事項については 『がん研スタイル 癌の標準手術シリーズ(メジカルビュー社刊)』 などをご参照ください。
 編集の過程で, 「祐くん」, 「HIRO」, 「ようすけ」, 「みせっち」 として登場する当科のスタッフも,それぞれ独特の経験と 「一家言」 を持つ,言い換えると 「キャラが立つ」 存在であることを再認識しました。学会の権威でもない私たちの個人的見解を掲載することは憚られましたが,「 若い外科医に伝えたい!」 という本書の趣旨を振り返り,各人の経歴や得意分野について 「思いのたけ」 を語ってもらいました。私たちが大先輩からありがたく頂戴した 「おことば」 もストレートに紹介してあります。これらの新鮮な 「ことば」 を通して,私よりもっと若い外科医に,手術だけではない外科医としてのキャリアを積んでいくためのヒントをお届けできれば幸いです。 「針糸ができるまで」 のコラムでは,毎日使う針糸に 「手仕事の技」 が満載されており,工業分野では職人技を機械に記録し再現させる必要に迫られていることに触れました。さすがに外科医の仕事はロボットに任せられず,人から人へ 「ことばで伝える」 過程が必ず残るはずだ,いや,単に壮年外科医の感傷なのでしょうが ―― 「残ってほしい」 と願います。自分がこれまで,玉石混淆のことばで育てられたように。
 本書で紹介した手術のコンセプトは,これまで 「がん研肝胆膵外科」 に在籍し,周術期管理と手術に専心された先生方の日々の活動に基づいています。今回私たちが執筆の機会を頂戴したことは大変光栄であり,皆様に感謝申し上げます。また,いつどんな手術でも引き受けてくれる 「がん研手術室」, 肝胆膵外科特有の術後合併症に真正面から対応してくれる病棟の皆様, ビデオやデータを管理する秘書の塩出さんに,この場を借りて御礼申し上げます。最後に,従来の教科書の枠を越えたこの企画をメジカルビュー社に提案した際,「 面白いですね!」 と一発回答いただいていなければ本書が世に出ることはありませんでした。宮澤 進 様,長沢 慎吾 様,編集をご担当いただき本当にありがとうございました。

2018年7月
石沢 武彰
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目次

Ⅰ 基本手技についてのQ&A
 1) 速くて確実な結紮のコツは?
 2) 状況別に運針法を変えるには?
 3) 血管周囲の剥離のコツは?
 4) 止血の方法と注意点は?
 5) 「ずれない」 ドレーン留置のコツは?
 
Ⅱ 肝切除のQ&A
 1) 右肝授動の手順は?
 2) 速く, 正確な肝離断をするためには?
 3) 肝静脈からの出血のコントロール
 4) 腹腔鏡下肝切除を始めるにあたって
 
Ⅲ 胆管切除・膵切除のQ&A
 1) Kocher授動でつまずかないためには?
 2) Bursectomyの剥離ラインがわからない
 3) 「前割り」 による膵頭・SMA神経叢郭清のコツ
 4) PDでの空腸間膜とTreitz靭帯処理のポイントは?
 5) 膵上縁の郭清のコツは? PD編
 6) 膵上縁の郭清のコツは? DP編
 7) #13の郭清のコツは?
 8) 肝十二指腸間膜の郭清をきれいに行うためには?
 9) 「漏れにくい」 膵管空腸吻合,「 漏れない」 胆管空腸吻合をするためには?
 10) 左腎脱転の適応と方法は?
 
コラム
 1. 学会発表をしよう! 論文を書こう! その① 「テーマの探索と投稿用抄録の書き方」
 2. 学会発表をしよう! 論文を書こう! その② 「論文作成のキホン」
 3. 学会発表をしよう! 論文を書こう! その③ 「論文投稿からAcceptまで」
 4. 学会発表をしよう! 論文を書こう! その④ 「学会発表のコツと禁忌」
 5. 海外留学のススメ
 6. 外科の日常臨床:日本と米国の違い
 7. 外科医のトレーニング:地域の基幹病院, がん専門病院, 大学病院で学ぶべきこと(1)
 8. 外科医のトレーニング:地域の基幹病院, がん専門病院, 大学病院で学ぶべきこと(2)
 9. 手術シェーマ作成の重要性
 10. 針糸のできるまで 取材協力:株式会社 河野製作所(CROWNJUN®)
 11. 外科医とオペナース
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