新NS NOW 14

脳・脊髄外傷の治療

外傷診療を再発見しよう

脳・脊髄外傷の治療

■担当編集委員 菊田 健一郎

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • A4判  160ページ  オールカラー,イラスト120点,写真120点
  • 2018年5月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-1574-6

精密に,厳密に,どこまでも愛護的に,癒やす

No.14では脳・脊髄部位に発生する外傷とその治療をテーマに取り上げた。交通外傷が減ったとはいえ,頭頚部の外傷は今なお脳神経外科医が高頻度で遭遇する事例である。骨折・出血(血腫)・血管障害・神経障害・整容など注意・注力すべき点は多岐にわたり,「本領」のひとつといって過言ではない。
本書では外傷によって頭頚部に発生する主だった障害に対する治療法はもちろん,画像診断,急性期(緊急手術)の対応,ガイドラインの対応,術後合併症の対策などにも踏み込んでいる。

■シリーズ編集委員
森田明夫/伊達 勲/菊田健一郎


序文

 昨年ドクターヘリで救命活動に従事する救急医を描いた「コード・ブルー」というドラマが放映されました。外傷は気胸や臓器損傷など複数の科にまたがることもあり,専門性の高い診療科である脳神経外科医はあまり役に立たないように思っておりました。しかし考えてみると,脳神経外科の術後管理ではかなりレベルの高い全身管理が要求されます。われわれは血圧の上げ下げ,気道の確保や呼吸器の扱い,感染症への対応,CVPラインやAラインなどさまざまなライン確保にも精通しています。脳室ドレナージがさっと入れられる点で,脳圧の管理という他科の医師にはできない技術があります。このドラマでは脳神経外科医が救急チームに不可欠の存在として描かれておりました。崩落事故現場で意識障害患者に手廻しドリルで穿頭し減圧する姿にも少なからず衝撃を受けました。
 『新NS NOW』No.14では脳・脊髄外傷の治療を取り上げ,皆さんに外傷についてもう一度考えていただく機会としました。
 外傷の手術は若い先生が執刀することが多いため,初歩的な領域と捉えられがちです。しかし,外傷疾患は衝撃の種類,損傷部位,損傷臓器(組織)の組み合わせだけ疾患が存在し,脳卒中より種類が豊富とさえ言えます。また症例ごとのバリエーションも多く,治療のパターン化が困難で思考力と応用力も求められます。しかるに,専門修練医の後半くらいになると「もう卒業」とばかりにより若い人に委ねてしまい,実のところ,外傷疾患について幅広い経験をもっておられる脳神経外科医はむしろ少ないのではないかと思います。私も専門医試験を受験するときにはじめて,自分が案外外傷を経験しておらず,知らない疾患もあることに気付かされました。例えば皆さんは,眼窩吹き抜け骨折や視束管骨折の手術経験はありますでしょうか? Hangman’s fractureにさっとハローベストを装着できますでしょうか? 末梢神経の外傷である腕神経叢引き抜け損傷の手術を見たことはありますか? もちろん経験のある先生もいらっしゃるでしょうが,多くの先生は急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,慢性硬膜下血腫,外傷性髄液漏くらいが標準的な治療経験なのではないでしょうか?
 近年はエアバッグなどの安全装備のおかげで,交通事故による重症外傷はかなり減っています。しかし逆に少子高齢化のため,高齢者の転倒,転落外傷は逆に増えている印象があります。転落では頭部だけでなく脊椎外傷も多く発生します。北陸では高齢者が雪下ろしをしたり,脚立にのって植木の剪定をしたりする際の転落外傷がとても多く,条例で禁止してほしいくらいです。スポーツ外傷もまだまだ多いです。スキー場でリフトから下を眺めていると,若者がスノーボードでジャンプし,失敗して後頚部から雪に叩きつけられているのを目にします。頚部損傷一歩手前です。東京オリンピックを控え,来日する外国人も急増しています。最近は東京だけではなく地方にも外国人がどんどん増えてきています。今後銃や爆弾による外傷など,これまでは外国でしか発生しなかった外傷患者が運び込まれてくる時代がすぐそこまで来ているように思います。私たちはもう一度,脳・脊髄外傷について知識のブラッシュアップをすべき時期にいると思います。
 本書を企画してわかったことですが,血管内治療を志している現役の先生は多いですが,外傷を専門にされている,あるいは研究している先生はだんだんと少なくなっています。ましてや将来外傷をやってみたいという若手脳神経外科医はほとんどみかけることがなく,現在の治療技術の継承の点でも心配されます。本書ではそのような貴重な先生にお願いし,外傷に関する最新の知見と,われわれがあまり経験していないさまざまな外傷の治療について,わかりやすく,実践的に概説いただきました。本書が皆さんの明日からの臨床に役立つだけではなく,本書を読んだ若手の先生が外傷に少しでも興味をもってくだれば,企画したものとしてこれに勝る幸せはありません。

2018年4月
福井大学医学部脳脊髄神経外科教授
菊田健一郎
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目次

頭部外傷に対するICUケア,脳圧管理とモニタリング  髙山泰広
小児頭部外傷 −急性硬膜下血腫,虐待による頭部外傷−  荒木 尚
頭蓋骨骨折,急性硬膜外血種 北井隆平
急性硬膜下血種,脳挫傷に対する外科治療  末廣栄一,ほか
外傷性脳内出血に対する治療  柴橋慶多
外傷性脳神経障害 −視神経管骨折と眼窩吹き抜け骨折−  大塩恒太郎
外傷性髄液漏  北井隆平
慢性硬膜下血腫 −標準療法,内視鏡,薬物治療−  登坂雅彦
慢性硬膜下血腫の再発と治療オプションとしての血管内治療  中川一郎
脊椎・脊髄外傷の手術手技  秋山雅彦,ほか
腕神経叢損傷の治療  土井一輝
びまん性軸索損傷の治療と高次脳機能障害  秋元治朗
スポーツによる脳振盪の診断と管理  荻野雅宏
Blast injury, gun shot injuryの診断・治療 −爆風による外傷性損傷−テロ対応の観点から−  中川敦寛,ほか
外傷性てんかんの診断と治療   貴島晴彦

◆シリーズ わたしの手術記載
① 頭蓋咽頭腫に対する内視鏡下拡大経蝶形骨手術
 手術画像取り込みによる手術記載法  天野耕作
②Keynoteを活用した手術記録
 硬膜内髄外腫瘍  山畑仁志
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