発達が気になる子どもを地域で支援!

保育・学校生活の作業療法サポートガイド

保育・学校生活の作業療法サポートガイド

■監修 小西 紀一

■編集 酒井 康年

定価 4,180円(税込) (本体3,800円+税)

保育士さん,学校の先生,その他医療職とのコラボレーションで,地域で子どもを支援する!

本書は,発達領域の作業療法士が,保育園・幼稚園,学校など地域の施設で仕事をする際にどうすればよいか,どのようなことができるのかを解説した書籍である。また,子どもの困り事のなかには,保育・学校生活に関する内容がかなり多いため,本書では直接学校などにかかわらない発達領域の作業療法士にも参考となる。
作業療法士が保育・学校施設に訪問して直接子どもの支援をすることもあるが,普段は保育士,教員が子どもに接する。そのため,保育士,教員ができることをどのように伝え,どう一緒に子どもに対応していくか,また環境をどのように整えるか,といった方法を解説している。
保育士,教員,他の医療職とコラボレーションしながら作業療法士ならではの力を発揮し,地域で子どもを支援していくことを目指してほしい。

  • B5判  168ページ  2色,イラスト70点
  • 2016年2月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1705-4

序文

【編集の序】

 「私は作業療法士です」
 作業療法士になってまだ数年しか経っていなかったころ,この一言を口にすることがとても恥ずかしく,なんとも居心地の悪かった記憶が強くあります。私が職を得た場は福祉施設であり,多職種がチームを組んで仕事をしており,そのなかで作業療法士としての自信をもつにはあまりにも未熟でした。もう一つの戸惑いは,個別のセラピーを行っていても,それが「子どもと家族の生活や将来に,本当に助けになっているのか?」というものでした。当時は福祉領域で働く作業療法士は少なく,参考となる文献も機能面に関するものが多く,通園や生活を作業療法の視点で見ることを解説するものは見当たりませんでした。
 そのように悩んでいた時期のある日,夏の京都で小西紀一という1人の作業療法士に出会うことで,そういったもやもやが一気に取り払われました。「作業療法は,たとえセラピー室という限られた空間で行うセラピーであっても,子どもの生活や将来にかかわることができる」ということを,理論的な側面と実践的な側面の両方での可能性を見せてもらえたのです。この出会いがなかったら,絶対に今の私はありません。
 本書は,これまで学んできた作業療法と,作業療法実践のなかで得たことを,実例を基に紹介しています。生活場面で作業療法の専門性を発揮するにはどうすればいいのか,それを発揮した場合の成果などを踏まえ,各筆者の実体験を紹介しています。
 教育現場,子育て現場は大きな変革のただなかにあります。福祉領域においても大きな構造改革が行われました。共通していることは,一施設内で完結することなく地域に出ていき,地域にある各施設と有機的な連携をとることが求められている点です。また,作業療法の潮流としても,「生活へ」という流れは今後より強くなっていくでしょう。
 しばらく続くであろうこの時代的変化は,作業療法士にとって大きなチャンスでもあり,同時に危機的状況でもあるといえます。大きなうねりと多職種の専門性のなかで,埋もれて泡となってしまう懸念です。実際に,「福祉施設の中で作業療法士の役割は?」という悩みを耳にすることが多くあります。「地域に出ていって何ができるか?」という悩みも聞きます。時代の変化をチャンスとするには,作業療法士が生活のなかで働くことで,具体的に対象者の生活が変わったという実績を残せるかどうかにかかっているでしょう。生活の場は,作業療法がもつ専門性を発揮できるまたとないフィールドであり,望ましいフィールドだと思います。今,地域で作業療法が求められているのです。
 本書を形にすることができたのは,担当して機会を用意してくださったメジカルビュー社 阿部氏の忍耐力とコツコツと確実に歩む力によるところが極めて大きいといえます。本当にありがとうございました。私を導き,支えてくれた恩師と同志にも感謝いたします。そして,いくつもの宿題と課題を与えて鍛えてくれた,たくさんの子どもたちと親御さんたち。今,みなさんは楽しく暮らしているでしょうか。ありがとう。
 最後に,私に親としての視点と思いをもたせてくれた大事な2人の娘,空と凜に。私を作業療法士にしてくれた妻の真知子に。ありがとう。

 本書が,時代のチャンスを具現化することの後押しに少しでもなれたら,その先にいる子どもと家族の力になれたら幸いです。
 今は胸を張って言えます。
 「私は作業療法士です」「私は福祉領域の作業療法士です」

葛飾柴又の地にて
2016年2月
酒井康年
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目次

1章 総論
 1 発達障害作業療法をめぐる現状
  子どもと子育て
  特別支援教育
  子どもたちの事情
  作業療法士の流れ
  今後の作業療法士の展望と本書の役割

2章 福祉領域で期待される作業療法の専門性
 1 作業療法の専門性を考える:発達的視点をもった活動分析
  はじめに
  作業分析,活動分析,動作分析
  発達を構造的に把握する
  卒園式を活動分析した事例
 2 生活場面を活動分析する
  はじめに
  人を見て態度を変える
  話を聞かない
  ウソをつく
  ケンカをする
  忘れてしまう
  姿勢が崩れる
  気持ちを切り替えることが難しい,気持ちを切り替えられない
  まとめ
 3 支援のあり方を活動分析する
  はじめに
  支援の方向性:具体化と抽象化
  支援のスタートは「できること」から
  支援を段階づけるスモールステップ
  成功体験を蓄積し,好循環を引き出す

3章 通園施設における作業療法
 1 通園施設内における作業療法の役割
  通園施設
  通園のスタイル
  福祉施設の通園施設だからこそ行える支援
  通園施設における作業療法士の役割
 2 通園施設内で実施する個別作業療法
  概要
  前提条件:チームアプローチの一つである個別作業療法
  事前の情報収集:個別作業療法の実施前に行うこと
  目標設定:支援の方向性・糸口を探る
  評価および介入:通園施設で意識したいポイント
  保護者との振り返り
  チームメンバーとの情報共有
  個別作業療法を行うことの効果
  まとめ
 3 通園施設内で実施する小集団療育への関与
  主担当として
  集団療育とは
  集団をとらえる際のポイント
  ポップコーングループから学んだこと
  保育園や幼稚園と異なる小集団の意義:発達支援の視点から
  保育園や幼稚園と異なる小集団の意義:家族支援の視点から
  まとめ
  クラスに入るときに大切にしていること
  クラスの相談に乗る
  フィードバックで大切にしていること
  作業療法士がクラスに入ることの効果
  まとめ
 4 通園施設内での連携の実際
  集団活動に入れない子に対し,活動分析から環境と個別対応を見直して連携したことで集団参加ができるようになった事例
  さっちゃんについて
  初回の個別作業療法の様子
  さっちゃんの状態像を見直すきっかけ
  音楽活動の分析結果
  支援方針と結果
  家庭生活の話
  まとめ

4章 地域における作業療法の実際
 1 地域作業療法の役割と目指すこと
  はじめに
  地域へのかかわり方のモデル
  地域で行う作業療法の制度と支援モデル
  地域に出たときの作業療法の対象者は誰か
  主訴を考える
  作業療法および作業療法士の役割
  役割を果たすために重要なこと
 2 保育園との協働実践報告
  地域に出かける作業療法の裏づけ
  保育所等訪問支援とは何か
  あきちゃんの紹介
  まとめ
  保育園側から:保育がどう変わったか
  作業療法士と保育士が協業するコツ
  作業療法士に期待すること
  ともに育ち合う職員集団の育成
 3 小学校との協働実践報告
  はるちゃんの紹介
  最初のアセスメント
  書字について
  はさみの使い方について
  ビーズのれんのこと
  友達とのこと
  生活のこと
  まとめ
 4 保育園・幼稚園巡回相談の取り組み
  はじめに
  保育園・幼稚園巡回相談の実際
  おわりに
 5 町の職員としての実践
  はじめに
  町で勤めるうえで大事にしていること
  町のなかの作業療法士の位置づけ
  町と作業療法士のかかわり
  作業療法の実際
  事例・実践例
  町に勤める作業療法士の意義
  まとめ
 6 地域作業療法に期待すること
  はじめに
  保育園というところ:紡がれていくものがたり
  保育のなかの発達支援
  作業療法士による保育園の園内研修
  地域作業療法に期待すること
  まとめ
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