身体運動学

関節の制御機構と筋機能

身体運動学

■編集 市橋 則明

定価 7,480円(税込) (本体6,800円+税)
  • B5判  464ページ  2色,イラスト720点
  • 2017年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1712-2

筋や靱帯,関節包による運動制御機構から関節運動の仕組みを解説。エビデンスに基づいた運動学の新テキスト!

本書は,運動機能の改善を目指す理学療法士・作業療法士にとって礎となる「運動学」のテキストである。各関節ごとに構造を示すとともに,筋や靱帯,関節包,関節構造が関節運動をどのように制御しているかを解説。特に筋の機能について詳細に解説するとともに,研究結果に裏付けられた運動学的知見を豊富に掲載している。また,関節の構造や動きを多数イラスト化し,視覚的にも学べる1冊となっている。


序文



 理学療法や作業療法において,運動学は最も重要な専門基礎科目である。解剖学は理学療法士や作業療法士だけでなく,すべての医療職にとって必要な基礎科目であるが,解剖学を基盤として身体の動きを理解する運動学は,理学療法士・作業療法士がさらに専門性を高めるために必須の科目である。
 理学療法や作業療法のエビデンスがまだ不十分である現状のなかで,患者を評価・治療するにあたり,運動学は多くのことを教えてくれる。近年,各関節の制御機構や関節にかかるストレス,関節の動的制御を担う筋の役割,歩行分析や姿勢分析など多くの研究成果のもと,運動学のエビデンスが積み重ねられてきた。身体運動に関するこれらの運動学的知見を礎として患者を評価・治療することは,理学療法や作業療法のエビデンスを蓄積するうえでも非常に重要となる。運動学のなかでも各関節の知識はセラピストにとって欠かせないものであり,各関節の構造,受動的制御や能動的制御,それらの関節の運動学と機能障害の関連に関する十分な知識をもつことは,理学療法や作業療法の基盤となる。
 本書『身体運動学』では,運動学の一般的な基礎知識についての記載は必要最低限とし,各関節の運動学に関して多くの文献をもとに詳細に解説した。特に各関節を受動的に制御している関節包や靱帯の役割と,能動的に制御している筋の役割に関して詳述しているのが本書の特徴である。各筋のモーメントアームや生理学的筋断面積を示し,解剖学的作用だけでなく各関節の角度が変化したときの運動学的作用に関しても文献等がある場合はできるだけ示した。本書は,筋の機能に関してかなり詳細に解説した最新の運動学の教科書であるといえる。さらに各関節の機能障害と運動学の関わりについて項目を設け,運動学的知識をもとに理学療法・作業療法を行うヒントを多く示した。また,運動学を理解するうえではイメージしやすいイラストが非常に重要なため,なるべくわかりやすいイラストを描くように出版社と協議を重ねた。
 本書は全11章で構成する。1章では運動学の基礎知識として,「1 身体運動の基礎」「2 関節の構造と機能」「3 筋の構造と機能」に関して述べた。2〜9 章では肩関節,肘関節,手関節,指関節,股関節,膝関節,足関節・足部,脊柱に関して,「1 骨構造」「2 関節構造」「3 受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)」「4 能動的制御(筋による運動制御)」「5 機能障害と運動学」に関して詳細に解説した。各関節の運動学のほか,重要な知識として10章では立位姿勢と姿勢制御,11章では歩行に関して述べた。また,「Clinical point of view」とした囲み記事では臨床場面で活用できる運動学的知識を説明し,「Supplement」とした囲み記事では本文での説明が不十分な項目の補足説明を行った。
 本書が理学療法士や作業療法士を目指す学生のための運動学の教科書として,さらには実際に臨床に携わっているセラピストの評価や治療の参考書として役立つことを期待している。

2017年8月
市橋則明
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目次

第1章 運動学の基礎知識  市橋則明
1 身体運動の基礎
 並進運動と回転運動
 力の合成と分解
 関節モーメント
 てこの原理
 身体重心と足圧中心
 オープンキネティックチェイン(OKC)とクローズドキネティックチェイン(CKC)
 運動連鎖
2 関節の構造と機能
 関節の分類
 関節の基本構造
 関節軟骨の構造と機能
 靱帯の構造と機能
 関節包の構造と機能
 関節運動に影響する因子
 関節運動
 凹凸の法則
3 筋の構造と機能
 骨格筋の基本構造
 骨格筋の収縮の仕組み
 骨格筋の種類
 筋収縮の種類
 筋張力に影響する要因
 関節トルクに影響する要因
 筋の解剖学的作用と運動学的作用
 単関節筋と二関節筋
 腱の構造と機能
 ストレッチショートニングサイクル(伸張−短縮サイクル)
 
第2章 肩 関節の運動学  市橋則明,宮坂淳介
1 肩関節の骨構造
 鎖骨
 肩甲骨
 上腕骨
2 肩関節の関節構造
 胸鎖関節
 肩鎖関節
 肩甲上腕関節
 肩甲帯・肩甲上腕関節の協調運動
 神経・血管
3 肩関節の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 胸鎖関節の関節運動と靱帯による運動制御
 肩鎖関節の関節運動と靱帯による運動制御
 肩甲上腕関節の関節運動と靱帯による運動制御
 肩甲胸郭関節の関節運動と運動制御
4 肩関節の能動的制御(筋による運動制御)
 肩甲帯の筋による運動制御
 肩甲上腕関節の筋による運動制御
 肩関節周囲筋の筋断面積
 肩関節周囲筋の挙上角度と屈曲伸展・内外転のモーメントアーム
 肩関節周囲筋の挙上角度と内外旋のモーメントアーム
 肩関節周囲筋のトルク寄与率
5 肩関節の機能障害と運動学
 scapular dyskinesis(肩甲骨運動異常)
 SICK-scapula
 肩峰下インピンジメント症候群
 肩関節拘縮
 投球障害肩
 肩鎖関節および胸鎖関節障害
 
第3章 肘関節の運動学  池添冬芽
1 肘関節の骨構造
 上腕骨,橈骨,尺骨
2 肘関節の関節構造
 腕尺関節,腕橈関節,近位橈尺関節
3 肘関節の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 内側側副靱帯
 外側側副靱帯複合体
 関節包および骨間膜
4 肘関節の能動的制御(筋による運動制御)
 肘関節周囲筋の筋形態
 肘関節周囲筋の作用とモーメントアーム
 肘関節周囲筋の筋力
5 肘関節の機能障害と運動学
 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)と運動学
 上腕骨内側上顆炎と運動学
 肘関節不安定性と運動学
 
第4章 手関節の運動学  越後 歩
1 手関節の骨構造
 橈骨遠位部
 尺骨遠位部
 手根骨
2 手関節の関節構造
 遠位橈尺関節
 橈骨手根関節
 手根中央関節
 手根骨間関節
3 手関節の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 手関節の支持組織
 遠位橈尺関節の支持組織
4 手関節の能動的制御(筋による運動制御)
 手関節運動
 手関節運動時の手根骨の動き
5 手関節の機能障害と運動学
 TFCC 損傷
 尺骨突き上げ症候群
 手関節尺側部痛の鑑別診断
 手根不安定症
 
第5章 指関節の運動学  越後 歩
1 指関節の骨構造
 中手骨・基節骨・中節骨・末節骨
2 指関節の関節構造
 手根中手(CM)関節
 中手指節(MP)関節
 指節間関節
3 指関節の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 CM 関節の支持組織
 MP 関節の支持組織
 PIP 関節の支持組織
 DIP 関節の支持組織
4 指関節の能動的制御(筋による運動制御)
 母指
 指の運動
5 指関節の機能障害と運動学
 浮腫の影響と皮膚の伸張
 関節リウマチの滑膜増殖による関節変形の機序
 指の変形
 母指CM 関節症
 指関節拘縮原因の鑑別
 
第6章 股関節の運動学  建内宏重
1 股関節の骨構造
 寛骨
 大腿骨
2 股関節の関節構造
 寛骨臼・大腿骨頭
 関節包・靱帯
 関節唇
 筋
 神経・血管
3 股関節の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 骨形態および股関節アライメント
 関節包・靱帯
 関節唇
 腸脛靱帯
4 股関節の能動的制御(筋による運動制御)
 筋の解剖学的作用
 筋の運動学的作用
 深層筋の機能
 股関節と骨盤・腰椎の協調関係
5 股関節の機能障害と運動学
 受動的制御の機能障害
 能動的制御の機能障害
 
第7章 膝関節の運動学  市橋則明
1 膝関節の骨構造
 大腿骨
 膝蓋骨
 脛骨
 腓骨
2 膝関節の関節構造
 脛骨大腿関節
 膝蓋大腿関節
 関節包
 半月
 靱帯
 筋
3 膝関節の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 関節包・靱帯による膝関節内側安定化機構
 関節包・靱帯による膝関節外側安定化機構
 関節包・靱帯による膝関節後方安定化機構
 半月,靱帯による膝関節内安定化機
4 膝関節の能動的制御(筋による運動制御)
 膝関節周囲筋の筋形態
 膝関節周囲筋のモーメントアーム
 膝関節周囲筋のトルク寄与率
 膝関節周囲筋による動的安定化機構
5 膝関節の機能障害と運動学
 変形性膝関節症(膝OA)患者における歩行のバイオメカニクス的特徴
 膝蓋大腿関節痛(PFP)患者のバイオメカニクス
 膝関節のバイオメカニクスからみた筋力トレーニング
 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)とバイオメカニクス
 
第8章 足関節と足部の運動学  伊藤浩充
1 足関節・足部の骨構造
 足関節・足部の骨配列
 後足部(距骨と踵骨)の配列
 中足部の配列と横アーチの形成
 前足部の配列(第1 趾列から第5 趾列)と横アーチの形成
 足部の内側縦と外側縦の配列
2 足関節・足部の関節構造
 距腿関節と脛腓関節の関節構造
 足部の関節構造
3 足関節・足部の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 距腿関節の運動と靱帯による運動制御
 脛腓関節の運動と靱帯による運動制御
 距骨下関節の関節運動と靱帯による運動制御
 横足根関節と足根間関節の関節運動と靱帯による運動制御
 足根中足関節と中足間関節の関節運動と靱帯による運動制御(主に第1 趾列から第5 趾列の運動)
 中足趾節関節と趾節間関節の関節運動と靱帯による運動制御
4 足関節・足部の能動的制御(筋による運動制御)
 距腿関節の筋による運動制御
 距骨下関節と横足根関節の筋による運動制御
 第1 趾列の筋による運動制御
 歩行における足関節・足部の運動制御
5 足関節・足部の機能障害と運動学
 足関節の機能障害と運動学
 足部の機能障害と運動学
 
第9章 脊柱の運動学  正木光裕
1 脊柱・胸郭の骨構造
 脊柱
 胸郭
2 脊柱の関節構造
 頸椎・胸椎・腰椎
 仙腸関節
 肋椎関節
 関節包,靱帯
 筋
 神経,血管
3 脊柱の受動的制御(関節構造・関節包・靱帯による運動制御)
 関節構造
 関節包
 靱帯
4 脊柱の能動的制御(筋による運動制御)
 筋の作用
 筋による安定化作用
5 脊柱の機能障害と運動学
 非特異的腰痛
 脊柱の姿勢アライメント不良
 仙腸関節痛
 
第10章 立位姿勢と姿勢制御  建内宏重
1 立位姿勢の力学的平衡
 姿勢とは何か?
 姿勢の安定
 立位姿勢のアライメント
2 立位姿勢の制御
 立位姿勢の制御に必要な要素
 身体重心と足圧中心
 姿勢制御の戦略(ストラテジー)
 3 つの姿勢制御戦略の選択
 予測的姿勢調節
3 姿勢制御における運動器系の役割
 受動的要素と能動的要素
4 姿勢制御における感覚系の役割
 体性感覚系
 視覚系
 前庭系
5 姿勢制御における中枢神経系の役割
 姿勢制御に関わる中枢神経系の機構
 フィードバック制御とフィードフォワード制御
 感覚情報の再重みづけ(sensory reweighting)
 姿勢制御の優先性(posture-first strategy)
6 座位姿勢および姿勢の制御
 座位姿勢のアライメント
 座位姿勢の制御
7 立位姿勢および姿勢制御の障害
 立位姿勢の障害
 姿勢制御の障害
 
第11章 歩行  建内宏重
1 歩行とは
 歩行周期
 歩行の距離・時間因子
 歩行時の身体重心の動き
 歩行時の床反力
 歩行における3 つの機能
 歩行時の3 つの機能と各関節の運動学・運動力学
 歩行時の3 つの機能と下肢筋筋活動
 歩行時の床反力の生成に貢献する筋
 歩行時の距骨下関節の動き
 歩行時の骨盤,脊柱,胸郭の動き
 歩行時の体幹筋筋活動
 歩行時の上肢の振りについて
 歩行の神経制御
 歩行速度と関連する因子
 歩行の変動性について
 歩行における力学的エネルギー
2 歩行の障害
 加齢による歩行の変化
 筋骨格系疾患による歩行の変化
 神経系疾患による歩行の変化
3 歩き始め(gait initiation)と歩き終わり(gait termination)
 歩き始めのメカニズム
 歩き終わりのメカニズム
4 歩き始めと歩き終わりの障害
 歩き始めの障害
 歩き終わりの障害
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