ハイリスク児のフォローアップマニュアル

小さく生まれた子どもたちへの支援

改訂第2版

ハイリスク児のフォローアップマニュアル

■編集 ハイリスク児フォローアップ研究会

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  304ページ  2色,イラスト120点,写真120点
  • 2018年7月15日刊行
  • ISBN978-4-7583-1754-2

フォローアップに携わる医師・メディカルスタッフ必携。外来診療,支援の現場で役立つマニュアル,待望の改訂版

新生児科医の外来診療や児と家族の支援を行う現場で役立つ本として,フォローアップに携わる多くの医師,メディカルスタッフの方々に活用していただいている書籍の改訂版。実践的なマニュアルとしてポイントをわかりやすく解説する初版の方針を引き継ぎ,近年フォローアップの中で重要度が増している「発達障害の評価と対応」,「医療的ケアを必要とする児」,「学童期・思春期までのフォローアップ」などの項目の充実をはかった。


序文

序文

 「ハイリスク児のフォローアップマニュアル」は,小さく生まれた子どもたちへの支援をめざして,「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究(主任研究者:藤村正哲)の分担研究「フォローアップ体制の構築に関する研究」(分担研究者:三科 潤)で作成,2007年に刊行された。作成時には新生児科医,神経科医,心理士などに分担執筆を依頼し,研究班のメンバーで集まって読み合わせをしながら検討し,時間をかけて編集したことが思い出される。
 本マニュアルは,多忙な新生児科医の外来診療や児と家族の支援を行う現場で役立つ本として,フォローアップに携わる多くの医師,コメディカルの方々に現在活用していただいている。2007年以降も,新生児医療の進歩は在胎22週や23週,出生体重500g未満といった超早産児や超低出生体重児の生存の向上につながり,これらの児の成長・発達を支援するフォローアップはより多様となり,より長期の継続の重要性が高まっている。
 第2 版では,実践的なマニュアルとしてポイントをわかりやすく解説する初版の方針を引き継ぎ,近年フォローアップの中で重要度が増している「発達障害の評価と対応」「医療的ケアを必要とする児」「学童期・思春期までのフォローアップ」などの項目の充実を図った。改訂にあたりハイリスク児フォローアップ研究会の承認を得て,研究会のメンバーが主体となって新たに執筆を行い,編集作業は研究会事務局と幹事により前回と同様,数回にわたって読み合わせを行いながら内容を検討した。執筆いただいた先生方,編集作業を助けていただいたメジカルビュー社の浅見直博氏に心より御礼を申し上げる。
 前版と同様に,第2版がハイリスク児のフォローアップにかかわる多くの方々に活用されることを願っている。

2018 年7月吉日
ハイリスク児フォローアップ研究会会長
自治医科大学小児科学講座学内教授
河野由美

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[第1版より]刊行にあたって

大阪府立母子保健総合医療センター総長
 藤村正哲
厚生労働科学研究費補助金・子ども家庭総合研究事業「アウトカムを指標としベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究班,主任研究者」

 新生児医療の経験が蓄積するにしたがって,医療に求められる深さと範囲は大きくなってきている。急性期の病棟における医療のみならず,退院後のケア向上の重要性が高まってきたのも,そうした新生児医療発展の一面である。また医療の目的が死亡mortality と罹病morbidity の軽減にあるとすれば,その結果は生存率と生存児の健康状態でもって検証されることになる。前者は病棟統計で刻々に明示されるが,後者はそんなに簡単には明らかにならない。医療の検証が容易ではないことを示している。フォローアップは,児と家族のニードに対応した継続医療を実施するために,そして新生児医療の評価を完結するために,その意義が存在している。
 退院児のフォローアップは,わが国の代表的な新生児集中治療施設においても決して充実したものとは言えない。世界でも最先端の新生児集中治療と成績を誇ることができるとすれば,それは退院後も支援しつつ発達と発育の評価を成し遂げて後のことではないか? 医療提供のプロセスと共に,最終評価としてのアウトカムはこれからの医療に不可欠の指標であろう。新生児医療に向ける社会の関心もそれを求めている。
 新生児医療は予防的な診療活動が重視される。リスクを早期に診断して治療することにより,急性期の疾病の発生と慢性期の後障害を予防・軽減することが,この医療の基本的な方法論である。フォローアップでは主に慢性期の後障害を周生期のリスクと関係づけて検討し,過去の診療の結果を現在の診療に反映させることが重要な機能である。しばしば死亡率の減少で成績を評価するが,これが短期的評価であることは自明のことで,新生児医療の総合評価はフォローアップによって明らかにされる長期予後からのフィードバックを受けて完成する。
 本書を一読された諸氏は,フォローアップがひとつの専門技術体系を構成していることに気づかれるだろう。子どもの発達と発育の多面性を十分に評価してゆくためには,こうした広がりと深まりが大切である。またフォローアップには各専門分野のコーディネーションも重要であることが分かる。従って有効にこうした医療を機能させるためにはシステム化が不可欠となっている。小さな施設では人員やシステム化の面で効率が悪いことは否めないが,本書によって丁寧なフォローアップを心がける手引きとしていただきたい。大規模施設ではしっかりとシステム化して,子ども達や保護者に最大のサービス提供の努力をいただきたい。
 本書は分担研究者の三科 潤先生を中心として,多くの方々の3年間にわたる研究成果の集大成であり,その集中的なエネルギーに心から敬意を表したい。ハイリスク児のフォローアップの普及と向上に大きく寄与されることを願うと共に,わが国の新生児医療のいっそうの成熟を期待したい。

平成19年1月

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[第1版より] 序 文

 この度,メジカルビュー社から『ハイリスク児のフォローアップマニュアル』を刊行する。
「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究(主任研究者大阪府立母子保健総合医療センター総長藤村正哲)の分担研究「フォローア ップ体制の構築に関する研究」班のメンバーが中心になって,本マニュアルを作成した。
 実際にフォローアップに携わっている新生児科医,小児神経科医,眼科医,歯科医,臨床心理士,理学療法士による分担執筆の部分を全員で読み合わせを行って検討し,完成度の高いマニュアルを目指した。
 周産期・新生児医療の進歩とともに,超低出生体重児の生存例が増加し,また,より未熟な,より小さな児の生存が可能になり,これらの児の成長・発達を支援する「フォローアップ」は,ますます重要性を増している。しかし,一方では,わが国におけるハイリスク児のフォローアップ体制は総合周産期母子センターにおいてさえも不十分で,フォローアップ専任のスタッフを得られず,多忙な新生児科医が病棟業務の合間に行っている施設が多い。本書は,フォローアップの専門家でなくとも,NICUを退院した児とその家族への支援を中心としたフォローアップを行えるように,実践的なマニュアルを作成した。
 特に,超低出生体重児ではしばしば見られる,運動発達の遅れに対する「支援・アドバイス」をフォローアップ担当者が行えるように,多くの写真を用いて具体的なポイントを専門家が解りやすく解説した。
 本書がハイリスク児のフォローアップに関わる医師・コメディカルの方々に,日常,参照される書物となるよう願っている。

2007年2月吉日

東京女子医科大学母子総合医療センター
三科 潤
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目次

Ⅰ フォローアップについて
 フォローアップの概念
  フォローアップの意義と目的/フォローアップの実施/「ハイリスク児フォローアップ研究会」のプロトコールと要点
 養育者への案内・説明と受診向上のために
  フォローアップ健診を実施するための方法/家族への周知・退院時の説明/未受診者への対策

Ⅱ すべての年齢に共通したフォローアップの評価と支援
 身体発育の評価
  身体発育の評価の要点/低出生体重児の身体発育/低身長/やせ,体重増加不良/肥満
 運動発達の評価
  運動発達の評価の要点/運動発達の観点からの評価項目/運動発達を促す観点からの評価と指導/各月齢別に観察される運動,注意すべき運動と徴候,運動発達を促す指導内容
 運動発達障害の告知
  運動発達が月齢に比較して遅れていると診断される場合の対応/脳室周囲白質軟化症(PVL)の告知時期/脳性麻痺という言葉をいかにして告知するか
 精神発達の評価
  精神発達の評価の要点/心理検査
 ことばの遅れ
  ことばの発達/ことばの遅れとその原因/ことばの遅れを診た際の主要診察所見と検査/ことばが遅い子どもへの支援
 知的能力障害・境界知能
  知的能力障害の評価と要点/フォローアップにおける問題点/親への支援/就学に関する問題
 行動の評価と支援
  評価の要点/自閉スペクトラム症(ASD)/高機能広汎性発達障害/注意欠如・多動症(ADHD)/限局性学習症(SLD)/支援
 聴力のフォローアップ
  入院中の聴覚検査/退院後のフォローアップ
 眼科のフォローアップ
  眼科的異常の徴候/眼科スクリーニング検査/早期専門医対応が必要な疾患/低出生体重児に多い疾患/年齢別フォローアップの要点
 歯科のフォローアップ
  低出生体重児の口腔の特徴/年齢別のフォローアップ健診時の要点/むし歯の治療/フッ素塗布/かかりつけ歯科医へ

Ⅲ 年齢別フォローアップ健診
乳児期健診
 乳児期(退院直後から歩行開始まで)の健診
  健診の要点/身体発育の評価/栄養の評価,貧血・未熟児くる病の評価と治療/身体所見/運動発達・神経学的評価/視覚/聴覚/精神運動発達(知的発達)の評価/行動の評価/健診時のアドバイス
 key month の神経生理学的意味
  4 カ月:原始反射からの解放/7 カ月:立ち直り反応の優位性確立/10カ月:平衡反応の確立
 運動発達の支援(ポジショニングとハンドリング)
  よく泣く子・反り返りがある子の抱き方/「向き癖」への対応/腹臥位のさせ方/背臥位のさせ方/寝返りの進め方/お座り(床座位)/お座り(椅子座位)/四つ這いの重要性と進め方/シャフリングベビーへの対応/つかまり立ちからつたい歩きへ/歩き始め(つたい歩き〜支持歩行〜独歩)
 摂食機能の発達
 離乳食の進め方
  極低出生体重児の離乳の基本/各時期の離乳食の進め方の目安/離乳の遅れと育児不安への対応
1 歳6 カ月健診(修正月齢)
 1 歳6 カ月の健診
  健診の要点/発育・発達の評価
 健診時のアドバイス
  アドバイスのポイント/心理士からのアドバイス
 歩き方に関する問題
  O 脚(両側内反膝),X 脚(両側外反膝)/うちわ(内旋)歩行,そとわ(外旋)歩行/外反扁平足/不安定な歩行へのアドバイス
3 歳健診(暦年齢)
 3 歳の健診
  健診の要点
 健診時のアドバイス
  3 歳頃の特徴/養育者の心配・関心/アドバイスのポイント/心理士からのアドバイス
 「食べない子ども」の食事指導
  小食への具体的対応
6 歳健診(就学前)
 6 歳の健診
  健診の要点
 健診時のアドバイス
  6 歳頃の特徴/養育者の心配・関心/アドバイスのポイント/心理士からのアドバイス
 就学について
  就学に関する新しい仕組み/就学決定のプロセス/ノーマライゼーションとインクルージョン/特別支援教育の理念/今後の特別支援教育
小学3 年生健診
 小学3 年生の健診
  健診の要点
 健診時のアドバイス
  アドバイスのポイント/医師からのアドバイス/心理士からのアドバイス
小学校高学年以降の健診
 小学3 年生以降から中学・高校生の健診
  健診の要点/小学校高学年〜中学生の健診/小学3 年生以降〜高学年頃の特徴と支援/中学生頃〜高校生頃の特徴と支援
 内分泌的問題およびメタボリックシンドローム
  内分泌的問題,特に思春期早発について /メタボリックシンドローム
 発達障害,精神疾患
  二次障害と支援

Ⅳ 合併症のフォローアップ
 未熟児貧血
  評価/対応
 未熟児代謝性骨疾患(未熟児くる病)
  評価/対応
 脳性麻痺(CP)
  定義/CP の発症率/CP の原因/CP の病型/CP の発生と進行の機序/治療/正常運動発達の基盤となる機能
 てんかん
  てんかんとは/乳幼児期にみられる代表的な難治性疾患/幼稚園・学校への連絡/発作が生じたときの対処法および治療/てんかんと紛らわしい状態(ひきつけ)との鑑別/予防接種
 脳室内出血
  脳室内出血とは/脳室内出血の予後/脳室内出血児のフォローアップ
 脳室周囲白質軟化症(PVL)
  PVL とは
 呼吸器系合併症
  反復性呼吸器疾患/慢性肺疾患(CLD)合併症児
 皮膚疾患
  母斑/乳児脂漏性皮膚炎/おむつ皮膚炎/乳児湿疹/汗疹(あせも)/アトピー性皮膚炎

Ⅴ 予防接種について
 予防接種
  予防接種と受動免疫療法/早産低出生体重児への予防接種で考慮すべきこと/接種スケジュールの考え方/パリビズマブ(抗RS ウイルスモノクローナル抗体)

Ⅵ 極低出生体重児の早期支援
 早期支援
  早期支援の目的/早期支援プログラムの運営

Ⅶ 在宅医療支援について
 在宅医療支援
  NICU からの退院準備
 医療的ケアへの外来対応
  主要な医療的ケアの留意事項/必要物品/外来で算定する在宅療養指導管理料/他施設との連携・情報共有
 HOT,気管切開の管理の要点
  在宅酸素療法(HOT)/気管切開
 医療的ケアを要する児の福祉制度(レスパイトも含む)
  障害者総合支援法(児童福祉法も含む)の福祉制度(自立支援給付)/児が受けられる障害福祉サービス
 在宅医療支援の必要性とその課題
  社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正 /児童福祉法の改正/在宅医療移行への具体的な手順/地域との連携とフォローアップ支援/在宅医療の地域支援システムの構築/指導療養管理料が認められている在宅医療

Ⅷ 養育者の育児不安への支援
 育児不安への支援
  養育態度の観察とその理解/不適切な養育に対するアドバイスと支援
 死亡した児の養育者への対応
  退院後,フォローアップ中に死亡に至った養育者への対応/入院中に死亡した児の養育者への対応/退院後診断が確定した児の遺伝相談

Ⅸ 地域の医療資源の活用法と受けられる社会的支援
 保健所・保健センターとの連携
  家族支援と虐待の予防/保健所・市区町村保健センターとの連携・協力/育児教室・遊びの教室等/長野県の極低出生体重児フォローアップ・信州モデル
 療育施設・福祉施設・特別支援学校との連携
  療育施設・福祉施設との連携/障害児保育・教育との連携/特別支援学校のセンター的機能
 幼稚園,保育所(園),子ども園との連携
  幼稚園と保育所(園),子ども園の違い/受け入れ年齢,保育時間/設置者,保育料/入園時期と入園先決定に関するアドバイス/子どもの発達に気になる点がある場合のアドバイス/自信をもたせるために
 福祉制度
  身体障害者手帳・療育手帳など

付録
 1. 全国の総合・地域周産期母子医療センター
  1)総合周産期母子医療センター一覧
 2. フォローアップのスケジュールと案内例
  1)出生体重別発達外来のスケジュール例(大阪母子医療センター)
  2)対象別のフォローアップ外来のスケジュール例(自治医科大学)
  3)発達外来予定表例(都立墨東病院・周産期センター・新生児科)
  4)3 歳健診の案内状例(自治医科大学)
 3. 問診用紙
  1)1 歳6 カ月児用 2)3 歳児用 3)6 歳児(就学前)用 4)9 歳児(小学3 年生)用
 4. 低出生体重児健診用紙
  1)1 歳6 カ月児用 2)3 歳児用 3)6 歳児(就学前)用 4)9 歳児(小学3 年生)用
 5. 身体発育値
  1)乳幼児身体発育調査結果を利用する際の留意事項 2)乳幼児身体発育調査結果にもとづく身体発育値・曲線 3)横断的標準身長・体重曲線 cross-sectional growth chart 4)肥満度判定曲線 weight-for-height chart 5)BMI パーセンタイル曲線 BMI percentile chart 6)低身長診断のための身長基準・成長速度基準
 6. 極低出生体重児の身体発育曲線
  1)体重(出生体重別) 2)身長(出生体重別) 3)頭囲(出生体重別)
 7. 極低出生体重児の運動発達の指標
 8. NRN データベース
 9. WEB リンク
 10. 参考図書

コラム
 赤ちゃんとテレビ/低出生体重児の発達障害の特徴/おしゃぶりについて/かご型のベビーキャリーについて/赤ちゃん用歩行器について/絵本の読み聞かせ/就学後のフォローアップの大切さ/超低出生体重児の長期予後研究/新生児に対する鉄剤投与のガイドライン2017(案)の要点/乳児血管腫/バクバクの会
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