産科危機的出血への対応

産科危機的出血への対応

■編集 関 博之
山本 晃士
松永 茂剛

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • B5判  216ページ  2色,イラスト30点,写真30点
  • 2019年3月25日刊行
  • ISBN978-4-7583-1760-3

産科医必携! 産科危機的出血のメカニズムからその対処法までを理解できる!

凝固系や疫学,妊婦の特殊性などの,産科における出血のメカニズムを視覚的に理解するための書籍である。
一次施設においては,説明がきちんとなされていなかった搬送のタイミングなどについての理由を示し,妊婦の病状の進行を予想して早めに対応することを促す内容となっている。一方,高次医療機関においては,妊婦の特殊性を理解した上で,適切な対処が早めに行える内容を示している。手技を示す項目では,イラストで手順・手技を示している。
産科危機的出血を理解し,実践的に現場で対応するための決定版である。


序文

巻頭言

 産科出血は産婦人科医であれば,誰でも遭遇する疾患である。多くの場合は,適切な止血操作と輸液管理により,分娩後短時間に止血される。しかし,症例によっては止血困難で輸血が必要となり,さらに妊産褥婦の生命に危険が及ぶこともある。産科に長年携われば,このような産科危機的出血には必ず遭遇するといっても過言ではない。
 産科出血は一般手術などの出血と比較して凝固因子の枯渇が起こりやすい。また,循環血液量が増加している妊婦では出血性ショックの症状がマスクされやすいため,対応が遅れ気味になり,急速に全身状態の悪化を招きやすいという特徴がある。日本産婦人科医会医療安全部会の妊産婦死亡検討評価委員会の報告では平成22〜24年の妊産婦死亡の原因疾患は,産科危機的出血が第一位である。また世界的にみても,産科出血は母体死亡の原因の第1位で年間15万人(全体の1/4)が亡くなっている。ローリスクであった妊産褥婦が突然発症し,生命に危険が及ぶような重篤な状態になることも産科出血の問題点である。
 どの程度出血したら,産科危機的出血と診断できるのか明確な定義はないが,ショックインデックス(心拍数/収縮期血圧)が1以上であれば産科危機的出血を考慮すると『産科危機的出血への対応指針』に記載されていることや,多くの文献を基に考察すると,1,500 〜2,000mL以上を産科危機的出血とするのが妥当と考えられ,分娩300例に1例程度発症すると推測されている。
 したがって,産科危機的出血は産婦人科医であれば誰でも遭遇する可能性が高く,その診断・管理・治療に精通することは分娩管理を安全に行うためにきわめて重要で,産婦人科医の必須の知識・技術である。
 産科危機的出血への対応で重要なことは,妊産婦の循環動態の特徴や出血時の血液凝固学的特徴を理解しておくことである。また,出血量の評価に関する問題点も併せて理解しておく必要がある。そのうえで,迅速な出血原因の究明と適切な対応・処置を心がけることが重要である。
 本書は,開院以来埼玉県の周産期医療の3次救急を担ってきた埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターで,多数の危機的産科出血の症例を経験し,系統的に解析し,さらに文献的考察も加えて確立した「産科危機的出血への対応」について解説したものである。本書が,読者の皆様の日々の診療に役立つことを祈念している。

2019年3月
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター センター長
産婦人科教授
関 博之
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目次

1 産科危機的出血の疫学
 母体死亡の原因
 産科危機的出血への対応指針2017
 産科DIC スコア
 産科危機的出血と診断するための出血量の目安
2 凝固線溶系の基礎知識
 凝固系のしくみ
 凝固制御系のしくみ
 線溶系のしくみ
 凝固線溶系とカリクレイン・キニン系
3 妊婦の循環動態の特殊性
 循環血液量の増加
 凝固の亢進と線溶の抑制
 側副血行路の発達
4 産科危機的出血の特殊性
 希釈性凝固障害
  ・希釈性凝固障害とは
  ・フィブリノゲンの重要性
  ・低フィブリノゲン血症による出血症状
 消費性凝固障害
  ・消費性凝固障害とは
  ・消費性凝固障害を診断・治療するための臨床検査
  ・産科領域での消費性凝固障害
 出血量の評価
 血管虚脱
5 産科危機的出血の原因疾患
 産道損傷
 弛緩出血
 常位胎盤早期剥離
 前置胎盤
 子宮内反症
 羊水塞栓症
  ・病型・病因・病態
  ・診断
  ・対応
6 産科危機的出血の止血法
 薬物療法
  ・弛緩出血に対する子宮収縮薬
  ・凝固因子補充
  ・トラネキサム酸(TXA)
 外科的処置
  ・軟産道裂傷に対する縫合
  ・uterine compression suture
  ・動脈結紮
  ・子宮内タンポナーデ(ガーゼ・バルーン)
  ・癒着胎盤に対するballoon occlusion 法
  ・TAE
7 産科危機的出血への輸血療法
 産科危機的出血に対する輸血療法の特殊性
  ・hemostatic resuscitation
   大量出血における凝固障害の発生機序
   凝固障害の増悪過程
  消費性凝固障害における凝固障害の発生機序と増悪過程
  ・massive transfusion protocol
   massive transfusion protocol とは
   massive transfusion protocol の実際
  ・damage control surgery(DCS)
   damage control surgery(DCS)とは
   DCS の実際
 POCT(point of care testing)
 フィブリノゲンの補充療法
  ・フィブリノゲン製剤
   フィブリノゲンとは
   FFP とフィブリノゲン製剤の比較
   フィブリノゲン製剤の投与が臨床的アウトカムに与える影響
  ・クリオプレシピテート
 その他の血液製剤
  ・トラネキサム酸
  ・ⅩⅢ因子製剤
  ・活性型Ⅶ因子製剤
  ・プロトロンビン複合体製剤
  ・トロンボモジュリン製剤
  ・その他の抗凝固薬およびC1 インヒビター
8 異型適合血輸血
 濃厚赤血球
 新鮮凍結血漿(FFP),濃厚血小板
9 産科麻酔
 鎮静・鎮痛
 酸素投与
 気道確保とバッグ・マスク換気
 アシドーシス・低体温・電解質異常の補正
 循環血液量を維持するための輸液とモニタリング
 REBOA
  ・REBOA の概要
  ・REBOA の実際
10 産科領域における貯血式自己血輸血の利点と限界
 自己血輸血とは
 適切な貯血量
11 産科危機的出血の搬送システム
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