バスキュラーアクセスの手技&Tips

腎臓内科医と形成外科医のコラボレーション

バスキュラーアクセスの手技&Tips

■著者 岡崎 睦
佐藤 英一

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • A4変型判  132ページ  オールカラー
  • 2018年1月14日刊行
  • ISBN978-4-7583-1801-3

長持ち・穿刺のしやすい血管は,こうつくる! 瘤・狭窄・逆流には,こう対処する!

新規血液透析導入患者にバスキュラーアクセス(VA)を作製する際は,できるだけ長持ちし,穿刺のしやすい血管を作製したい。そのためには,さまざまな基礎疾患を抱える患者の血管状態に合わせ,適切な場所に,適切な血管を使用したVAをつくる必要がある。
本書は,血管吻合と創傷治癒のプロである形成外科医と,血液透析のプロである腎臓内科医がコラボレーションすることで,個々の患者に合ったVA作製のノウハウを,豊富な写真とイラストでわかりやすく解説している。また,作製した血管に起こりうる,瘤や狭窄・逆流などのトラブルに対してどう対処するかを,ケーススタディとして具体的に紹介。さらに,VA作製後の術後管理と穿刺までも解説している。
明日のVA作製時に試してみたいテクニックが必ずみつかる1冊である。


序文

 この本は“手技の本”です。バスキュラーアクセス(VA)の管理と穿刺に関する特集や単行本は無数に発刊されていますが,VA造設手術のコンセプトと手技に的を絞った本は,今までほとんどありませんでした。よって,手技に徹した本を作りました。
 血液透析患者は年々増加してしており,高齢者が多く,糖尿病性腎症が4割以上を占めるなど,血管の状態や組織還流の悪い患者が多く存在します。そのためVA造設手術には,皮膚切開,組織・血管の剥離,血管吻合に至るまで,綿密な計画と丁寧な手技が必要になります。また,作製したVAを使って順調に血液透析を行っていても,年余の後にはシャントトラブルにより再度のVA造設術を強いられることも多く,その際にはさらに難しい術式が求められます。こう考えると,初回のVA造設術のときから,次やその次のVA造設術のことまで考慮して,皮膚切開から選択術式まで計画的に施行していく必要があることがわかります。
 形成外科医は,血管吻合,組織の愛護的な扱い方,創傷治癒の専門家であり,創傷治癒機序が障害された患者のVA造設術を行うには適任なのですが,ここには大きな問題がありました。形成外科医である著者が,VA造設術を開始したのは1993年で,当初は,腎臓内科から依頼された手術を看護師と2人で行っていましたが,血管吻合のことばかりを考えていました。しかし,腎臓内科医の共著者と一緒に仕事するようになってからは,これが大きな間違いであることに気づき,術後管理や実際の穿刺を十分に考慮したうえでのVAルート作製プランを中心に考えるようになりました。“腎臓内科医と形成外科医のコラボレーション”。著者らがコラボを始めてから10年が経ちました。医師・看護師・臨床工学技士を含めたチームで術前から綿密な手術・管理計画を練り,VA造設手術の全例を著者2人が一緒に行うことにより,形成外科医の手術テクニックと腎臓内科医の管理経験が融合して生まれたのが本書です。
 まず,初心者が初めて定型的前腕遠位内シャント造設術を行うときに,本書をみればできるように,多数の写真による術式説明,解説やポイントを詳記しました。次に,さまざまなVAのバリエーションから代表的なトラブル症例への対応について,著者たちが考えるコンセプトと適応手技を提案しました。さらに,より精度の高い手術と管理ができるように30のTipsを配しました。これらの提案は,従来はあまり立ち入られることがなく術者ごとのこだわりによって行われてきた“密室の領域”にまで,あえて足を踏み入れる内容になっていますので,初心者だけではなく上級医師までVAにかかわるすべてのスタッフの参考になれば幸いです。
 最後に,技&Tipsシリーズの第2弾として,この本を刊行してくださいましたメジカルビュー社と,病院を挙げて執筆にご協力くださいました新松戸中央総合病院長の松尾亮太先生に深謝いたします。

2018年1月
東京大学大学院医学系研究科形成外科学分野教授
岡崎 睦
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目次

Ⅰ章 筆者が推奨する手術器具
 
Ⅱ章 基本的バスキュラーアクセス手技
 1. 定型的左前腕遠位部内シャント造設
 2. 右前腕遠位部内シャント造設
 3. かぎタバコ窩での内シャント造設
 4. 前腕中・近位での内シャント造設
 5. 尺骨動脈-尺側皮静脈内シャント造設
 6. 上腕動脈表在化法
 7. 上腕動脈-橈側皮静脈内シャント造設
 8. 透析導入時の初回手術術式選択のまとめ
 
Ⅲ章 トラブルに対するケース・スタディー
 1. 静脈に生じた瘤・狭窄への対応
  【症例1】AVF付近に生じた瘤で,瘤と狭窄部を切除しても再吻合が可能な症例
  【症例2】狭窄部切除のみであれば吻合が可能な症例
  【症例3】狭窄部が長く,切除すると再吻合できない症例
 2. 静脈の狭窄・逆流・迷走への対応
  【症例1】AVFすぐ下流(前腕近位側)が閉塞し,逆流を介して上腕に流れている症例
  【症例2】RMAVFすぐ下流が狭窄し,逆流を介して上腕に流れている症例
  【症例3】複雑な逆流・迷走の症例
 3. 長期透析患者のトラブルに対する人工血管を用いた再建(AVG)
  【症例1】拡張した静脈-人工血管-上腕橈側皮静脈の症例
  【症例2】拡張した橈骨動脈-人工血管-上腕橈側皮静脈の症例
  【症例3】拡張した静脈-人工血管-上腕尺側の静脈の症例
 
Ⅳ章 術前・術後管理と穿刺
 
Tips
 ① モノポーラ型電気メスよりバイポーラ型止血摂子がよい理由
 ② へパリン生食水用には,なぜ10mL シリンジと20G サーフロー® 針の組み合わせがよいか
 ③ 局所麻酔注射について(1%キシロカインE®)
 ④ 橈側皮静脈(CV)の枝の処理について
 ⑤ モスキートペアンで,7-0 プロリン糸のような細い糸を把持する場合のコツ
 ⑥ 橈骨動脈と橈側皮静脈が離れている場合の吻合位置と方法の決定
 ⑦ 血管吻合における形成外科的感覚—縫合糸の選択,連続縫合 vs. 結節縫合—
 ⑧ 膜を破る前に局所麻酔の追加をする
 ⑨ 血管の条件の違いによる側々吻合手技の違いについて
 ⑩ 動静脈側端吻合の手技
 ⑪ 連続縫合は,針を無鈎摂子でとるとリズミカルではやい
 ⑫ その他の術式(1) 伴走静脈を表在化して橈骨動脈とAVF
 ⑬ 皮膚切開の方向と術後瘢痕
 ⑭ 動脈を側とした吻合は,破綻した場合に止血されにくい
 ⑮ 真皮縫合と垂直マットレス縫合の功罪
 ⑯ 上腕動脈表在化の術後に創縁皮膚壊死が生じた場合
 ⑰ 誤って静脈に穴をあけたときの修復法
 ⑱ その他の術式(2) 上腕尺側の静脈を表在化して上腕動脈とAVF
 ⑲ 神経を栄養する血管
 ⑳ 白色血栓と赤色血栓
 ㉑ガーゼ・包帯の巻き方とシーネのあて方
 ㉒再手術の際の切開線について
 ㉓再手術の際のアプローチの順番
 ㉔血管壁の薄い静脈の端々吻合
 ㉕皮膚の構造と創傷治癒の大前提
 ㉖創の管理と抜糸の時期
 ㉗長期留置型カテーテルについて
 ㉘内シャント肢における血流量の変化
 ㉙術中の組織検査
 ㉚腎臓内科医からみたバスキュラーアクセスの評価
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