リハスタッフのための

排泄リハビリテーション実践アプローチ

排泄リハビリテーション実践アプローチ

■編集 鈴木 重行
井上 倫恵

定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
  • B5判  432ページ  2色(一部カラー),イラスト130点,写真150点
  • 2018年2月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1908-9

排泄リハってどうすればいいの? 具体的な実践方法をこの1冊で!

2016年の診療報酬改定で「排尿自立指導料」が新設され,理学療法士(PT)はチームで患者のケアにあたることとなった。しかし実際の臨床現場では「PTは具体的に何をすればいいのか?」「研修はないのか?」など,どうすればいいのかわからないという状況となっている。
本書は主に臨床勤務のPT・作業療法士(OT)を対象として,泌尿器科医,看護師,理学療法士による執筆により,排泄に関する基礎知識から患者のアセスメント,具体的なリハの方法・テクニック,実践例を紹介。「排泄障害に対するリハビリテーション」の章では,リハが奏効した症例や難渋した症例を取り上げ,詳細に解説している。


序文

 平成28年度(2016年)の診療報酬改定で「排尿自立指導料」が新設されました。算定のための施設基準として,排尿ケアチームを設置して多職種で患者のケアにあたることが明記されています。この排尿ケアチームは,医師,看護師,理学療法士または作業療法士(リハスタッフ)で構成することとなっており,各病院で排尿ケアチームを作る動きが活発になってきています。一方,実際の現場では「具体的にリハスタッフは何をすればいいのか?」「リハスタッフ向けの研修はないのか?」など,どのように下部尿路機能障害に対するリハビリテーションに関わればよいのかわからず困惑することもあるのではないでしょうか。また,2017年には「便失禁診療ガイドライン」や「慢性便秘症診療ガイドライン」など排便障害に関する診療ガイドラインが相次いで出版されていますが,排便障害に対するリハビリテーションに携わっているリハスタッフはごくわずかであるのが現状です。
 そこで,本書ではこの領域に携わっておられる代表的な先生方に,主に臨床に勤務するリハスタッフ向けに,排泄リハビリテーションの基本から実践までを具体的に執筆していただきました。第Ⅰ章では排泄障害の疫学について,第Ⅱ章では排泄リハビリテーションを提供するうえで必要不可欠な解剖生理について,第Ⅲ章ではリハスタッフが対象とすることの多い排泄障害の病態と特徴について,第Ⅳ章ではリハスタッフが理解しておくべき排泄障害のアセスメントについて解説していただいています。そのうえで,第Ⅴ章では排泄障害に対するリハビリテーションについて症例も交えて具体的に概説していただき,最後に第Ⅵ章では「排尿自立指導」の実際についてご紹介していただきました。多くのリハスタッフが本書を参考に排泄リハビリテーションに興味を抱き,臨床での実践に活かされることを願っています。
 排泄障害に関連する診療ガイドラインでは「骨盤底筋訓練」という用語が用いられているなか,近年リハビリテーションの領域においては「訓練」という用語を用いないことが基本方針とされていることから,本書においては「骨盤底筋トレーニング」という用語をあえて用いました。リハスタッフの皆様には,本書で用いた「骨盤底筋トレーニング」は「骨盤底筋訓練」と同義であること,医師や看護師等の他職種が用いる用語を理解することは重要であり,多職種協働の現場では共通言語を用いる必要があることも認識していただきたいと思います。
 最後に,本書の発刊にあたりお忙しい中ご執筆いただきました当領域のエキスパートでいらっしゃる諸先生方,執筆いただく先生方をご推薦くださいました名古屋大学大学院医学系研究科病態外科学講座泌尿器科学教授 後藤百万先生,藤田保健衛生大学病院国際医療センターセンター長/教授 前田耕太郎先生,本書の出版をご提案してくださった名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科部長 加藤久美子先生,小牧市民病院排尿ケアセンター部長 吉川羊子先生,さらには出版と編集に多大な労をとっていただいたメジカルビュー社の阿部篤仁氏,榊原優子氏ほか担当各位に感謝いたします。

2017年12月
鈴木重行
井上倫恵
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目次

Ⅰ章 排泄障害の疫学
 1. 下部尿路機能障害の疫学  後藤百万
  下部尿路機能障害と下部尿路症状
  下部尿路機能障害の病態と基礎疾患
  下部尿路症状の疫学調査
  過活動膀胱,前立腺肥大症の疫学調査
 2. 排便機能障害の疫学  前田耕太郎
  排便機能障害の種類
  排便障害の疫学において留意する点
  便秘および下痢の有病率
  便失禁,肛門失禁の有病率
  尿失禁との合併
  おわりに

Ⅱ章 解剖と生理
 1. 下部尿路の解剖  窪田泰江
  膀胱の構造
  尿道の構造
 2. 消化管の解剖  前田耕太郎
  消化管の概要
  小腸・大腸の区分と固定
  体表面からの腹腔内消化管の位置
  小腸・大腸の壁構造
  小腸・大腸の脈管系
  神経系
  骨盤部,肛門部の解剖
 3. 骨盤底の解剖  秋田恵一,室生 暁
  ヒトの骨盤底の特徴
  肛門挙筋の付着
  肛門挙筋の起始
  骨盤底筋の構造と機能
 4. 排尿機能の生理  小澤秀夫
  排尿量と排尿状態
  蓄尿と排尿のメカニズム
 5. 排便機能の生理  前田耕太郎
  消化管の機能と運動
  便の形成と食物の通過
  ガスの形成と成分
  正常な排便と便通
  直腸肛門部の排便調節機能と禁制

Ⅲ章 排泄障害の病態と特徴
A 下部尿路機能障害の症状・病態・診断・治療
 1. 下部尿路機能障害の概要  澤田智史
  はじめに
  蓄尿症状,排尿症状,排尿後症状の定義と概要
  下部尿路機能障害を示唆する徴候
 2. 女性に多い下部尿路機能障害:①尿失禁  金城真実
  尿失禁の病態と症状
  尿失禁の診断
  尿失禁の治療
 3. 女性に多い下部尿路機能障害:②骨盤臓器脱  巴ひかる
  病態
  症状と診断
  治療
 4. 女性に多い下部尿路機能障害:③瘻孔やその他の疾患  加藤久美子,鈴木省治
  膀胱腟瘻
  尿管腟瘻
  尿道腟瘻
  膀胱子宮瘻
  尿道カルンクル
  尿道脱
  陰唇癒着症
 5. 男性に多い下部尿路機能障害:①前立腺全摘出術後の腹圧性尿失禁  長岡 明
  はじめに
  男性尿禁制のメカニズム
  疫学と原因
  治療前評価および治療方針の決定
  保存的治療
  外科的治療
  おわりに
 6. 男性に多い下部尿路機能障害:②下部尿路閉塞性疾患による排尿障害
    馬嶋 剛,後藤百万
  はじめに
  症状
  病態
  診断
  治療
 7. 中枢性排尿障害-パーキンソン病を中心に-
    榊原隆次,舘野冬樹,小川明宏,寺山圭一郎,治田寛之,秋葉 崇,山本達也,山西友典,内山智之
  はじめに
  神経症候からみた神経因性膀胱の見方
  パーキンソン病の排尿症状とその検査
  パーキンソン病による中枢性排尿障害の病態生理
  パーキンソン病による中枢性排尿障害の治療
  おわりに
 8. 脊髄性下部尿路機能障害  亀井 潤,井川靖彦
  はじめに
  病態
  症状
  診断
  治療

B 排便機能障害の症状,病態,診断,治療
 1. 排便機能障害の概要  味村俊樹
  はじめに
  正常な排便
  便失禁
  便秘
  下痢
  おわりに
 2. 便失禁  勝野秀稔
  はじめに
  症状
  病態
  診断
  治療
 3. 便排出障害(閉塞性排便障害)  髙野正太
  はじめに
  便排出のメカニズム
  分類
  症状
  検査
  治療
  疾患別各論
  おわりに
 4. 大腸癌術後の排便機能障害  小嶋幸一郎,松岡弘芳
  排便機能障害が起こる原因
  排便障害に伴う症状
  排便障害に対する治療
  おわりに
 5. 便秘  味村俊樹
  はじめに
  便秘の定義
  便秘の分類
  慢性便秘症の診断基準
  便秘症の疫学
  慢性便秘症の診断
  慢性便秘症の治療
  おわりに

Ⅳ章 排泄障害のアセスメント
A 下部尿路機能障害のアセスメント
 1. 質問票  和田直樹
  代表的な症状質問票
  排尿ケアにおける質問票の活用
 2 排尿日誌  谷口珠実
  排尿日誌の目的と位置づけ
  排尿日誌の記載方法
  排尿日誌を用いた評価と活用
 3. パッドテスト  渡邊日香里
  短時間のパッドテスト
  長時間のパッドテスト
 4. 尿流動態検査  皆川倫範
  はじめに
  残尿測定
  尿流測定
  膀胱内圧測定
  おわりに

B 排便機能障害のアセスメント
 1. 質問票  角田明良
  はじめに
  便失禁
  便秘
  おわりに
 2. 排便日誌  積 美保子
  排便日誌とは
  排便記録のつけ方(詳細版)
  便失禁記録のつけ方(詳細版)
  排便日誌を活用したアセスメント
  排便日誌を活用した排便習慣指導
 3. 排便造影検査  吉岡和彦,畑 嘉高,徳原克治,權 雅憲
  はじめに
  排便造影検査の対象患者
  排便造影検査の方法
  排便造影検査結果の評価
  考察
  おわりに
 4. 経肛門的超音波検査  山名哲郎
  はじめに
  経肛門的超音波検査装置
  肛門管の解剖と正常肛門管超音波像
  肛門管超音波検査による排便機能障害のアセスメント
  おわりに
 5. 直腸肛門内圧検査  高尾良彦,手塚絢子
  はじめに
  直腸肛門内圧検査の概要
  何をどのように評価するのか
  リハビリテーションへの応用
  おわりに
 6. 腸管運動検査  川﨑俊一
  検査の目的
  検査概要
  検査方法と評価
  おわりに

Ⅴ章 排泄障害に対するリハビリテーション
 1. 排泄障害に対するリハビリテーションの必要性  鈴木重行
  排泄障害に対する理学療法教育の現状
  排泄障害における理学療法
  ガイドライン情報の共有
 2. 骨盤底筋トレーニング  大内みふか,橘田岳也
  尿失禁および便失禁に対するPFMT のエビデンス
  理学療法:評価・介入・再評価
  日常生活に対する指導
  おわりに
 3. 尿失禁に対するバイオフィードバック療法  山本綾子
  バイオフィードバック療法とは
  筋電図バイオフィードバック療法の実際
  まとめ
 4. 便失禁に対するバイオフィードバック療法と便排出障害に対するバルーン排出トレーニング  槌野正裕
  はじめに
  バイオフィードバック療法
  骨盤底筋群について
  便失禁に対するバイオフィードバック療法
  排便困難症例に対するバルーン排出トレーニング
  おわりに
 5. 行動療法  井上倫恵,鈴木重行
  排泄障害に対する行動療法
  症例紹介
  おわりに
 6. 尿失禁に対する電気刺激療法  松田陽介
  はじめに
  神経変調療法の作用機序
  電気刺激療法(ES)
  干渉低周波療法(IF)
  仙骨神経刺激療法(SNM)
  経皮的脛骨神経刺激療法(PTNS)
  今後の展望
  おわりに
 7. 便失禁に対する電気刺激療法  勝野秀稔
  仙骨神経刺激療法
  脛骨神経刺激療法
  肛門管電気刺激療法
 8. 磁気刺激療法  山西友典,加賀勘家,加賀麻祐子,布施美樹,石塚 満
  はじめに
  磁気刺激療法の原理
  下部尿路機能障害に対する電気・磁気刺激療法のメカニズム
  尿失禁に対する磁気刺激療法の効果
  おわりに
 9. トイレ動作  岩井 歩
  トイレ動作とは
  評価
  治療・動作練習
  環境面の配慮について
  虚弱高齢者の排尿自立支援
  おわりに
 10. 排泄用具  渡邉順子
  はじめに
  排泄用具の選択フローチャート
  おむつの絶対適応
  おむつ選択のアルゴリズム
  おむつの適切な使用例
  おむつとポジショニング
  おむつのメカニズム
  コンチネンスケア用品の国際評価基準
  失禁関連皮膚炎(IAD)
  おわりに
 11. 清潔間欠自己導尿  田中純子
  清潔間欠自己導尿とは
  患者指導のポイント
  CIC 指導の実際
  CIC の継続的支援
 12. 食事指導  中野かおる,高橋知子,角田明良,清水幸子
  はじめに
  適度な便性状の維持
  症例紹介
  新しい食事療法
  おわりに
 13. 外来における排泄リハビリテーション  重田美和
  はじめに
  筆者の施設での骨盤底リハビリテーションの流れ
  医師との連携について
  外来における骨盤底リハビリテーションの実際
  症例紹介
  おわりに
 14. 在宅における排泄リハビリテーション  阿部信美
  はじめに
  排泄機能のアセスメント
  生活環境,トイレ環境
  症例紹介
  おわりに 今後の課題
 15. 地域における排泄リハビリテーション  吉田遊子
  はじめに
  高齢者尿失禁予防事業の立ち上げ
  「女性のための高齢者尿失禁予防教室」の立ち上げから教室開催まで
  教室の実績と教室開催の成果
  啓発事業
  おわりに
 16. 排泄リハビリテーションにおける多職種連携  吉川羊子
  はじめに
  包括的排泄ケアでなぜリハスタッフによる介入が重要か
  リハスタッフが共有すべき排泄ケアスキル-排尿自立指導から学ぶスキルとは
  多職種連携を深めるための学ぶ場をもつ
  おわりに

Ⅵ章 排尿自立指導
 1. 排尿自立指導:医師の立場から  亀井 潤,藤村哲也
  排尿自立指導料の概要
  東京大学医学部附属病院における排尿自立指導の特徴
  今後の課題
 2. 排尿自立指導:看護師の立場から  小柳礼恵
  はじめに
  体制作りと活動
  活動するうえで考慮すべき点と課題
 3. 排尿自立指導:理学療法士の立場から  松永明子
  はじめに
  排尿自立指導料届出まで
  排尿ケアチームの活動の実際
  高度急性期病院ゆえの問題点
  今後の課題
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