リハビリテーション
リスク管理ハンドブック

第4版

リハビリテーション リスク管理ハンドブック

■編集 亀田メディカルセンター

定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
  • B5判  396ページ  2色(一部カラー),イラスト100点,写真110点
  • 2020年3月22日刊行
  • ISBN978-4-7583-1943-0

最新の研究結果や各種ガイドラインを参考に,エビデンスに基づいたリハビリテーションのリスク管理を紹介

リハビリテーションの対象は高齢者であったり合併症をもっていたりすることが多く,リハビリテーション中に状態が急変するリスクが高い。しかし,老健施設や訪問リハビリテーションなど,急変時にすぐ医師の応援を依頼できない状況もあり,緊急性の判断から初期対応までをセラピストが行わなければならない場合がある。本書はこういった現状を踏まえ,リハビリテーション現場で働くスタッフを対象に,主に「患者の急変」という視点からリスク管理について解説した書籍である。
第4版では,最新のエビデンスや『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン』をはじめとする各種ガイドラインを基に内容をアップデート。また「筋骨格系の疼痛」や「リスク管理に必要な検査所見のみかた」「医師不在の環境での対応」など,内容を充実させた。リハビリテーションに携わる医療職の方には必携の1冊。


序文

 治療成績を最良のものとするためには,合併症や事故などの有害事象の発生を予防することが重要である。しかし,有害事象の発生を恐れるあまりに積極的なリハビリテーション治療ができなければ機能改善は不十分となり,治療成績は不良となる。よって,リハビリテーション治療を実施することにより得られる「益」の大きさと,それに関連して誘発される可能性がある有害事象の「害」の危険性と影響の大きさを考慮し,そのバランスにより練習の可否の判断や練習内容の調整を行うことが求められる。これには,リハビリテーション診療の対象となる疾患に関する医学的知識と,リハビリテーション治療の具体的手技に関する知識が必要となる。そして,これらの知識はエビデンスに基づくものでなければならない。
 近年ではエビデンスに基づく診療が一般的となり,それを臨床現場で活用するための診療ガイドラインも数多く発行されている。日本リハビリテーション医学会では,2006年に『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン』を刊行し,リハビリテーション分野の安全管理の普及に貢献してきた。そして2018年には第2版が刊行され,大幅なアップデートが施された。また,他の関連学会の診療ガイドラインも改訂が実施されているが,その中にはリハビリテーションに関連する推奨も数多く含まれている。
 このような背景から,本書も3回目の改訂を行い,第4版を刊行することとした。今回の改訂においては,新しく蓄積されたエビデンスや,関連する診療ガイドラインのアップデートに対応することを主な目的とした。また,臨床現場における実用性を考慮して,フローチャートの見直しも行っている。これにより最新の知識を効率よく習得し,実際の診療場面でも活用しやすいテキストとすることを目指した。
 今回の改訂作業にあたり,メジカルビュー社の皆様には大変お世話になった。担当の榊原優子氏にこの場を借りてお礼申し上げたい。
 今後も本書がリハビリテーション医療の質および安全性の向上に貢献し続けることができれば幸いである。

2020年2月
宮越浩一
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目次

I リハビリテーションにおけるリスク管理 -総論-
 1 リハビリテーションにおけるリスク管理の必要性と対策  宮越浩一
  有害事象の発生によって生じる影響
  リハビリテーションに関連する有害事象とその対策
  リスク管理に必要なシステム
  教育
  リハビリテーションにおけるリスク管理とリハビリテーション科専門医
 2 合併症予防のための情報収集  宮越浩一
  合併症予防のポイント
  カルテからの情報収集
 3 リスク管理に必要な検査の知識  宮越浩一
  検査所見の見方
 4 リスク管理に必要な薬剤の知識  今井由里恵
  はじめに
  抗てんかん薬
  抗不安薬・睡眠薬
  抗精神病薬・抗うつ薬
  抗パーキンソン病薬
  抗認知症薬
  筋弛緩薬
  降圧薬
  利尿薬
  糖尿病治療薬
  抗血栓薬
  排尿障害治療薬
  抗菌薬・抗ウイルス薬・抗真菌薬
  抗がん剤
  副腎皮質ステロイド
  鎮痛薬
 5 状態変化時の対応  宮越浩一
  緊急性に応じた対応
  医師への情報伝達
  現場での応急処置
 6 安全管理・推進のためのガイドライン  宮越浩一
  リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン
  運動負荷を伴う訓練を実施するための基準
  従来の中止基準
  その他の中止基準
  その他のクリニカルクエスチョン
 7 リハビリテーション中に起きた医療事故と法的責任  山田祥恵
  はじめに
  法的責任の種類
  民事上の責任について
  リハビリテーションに関連する医療事故に関する裁判例
 8 診療ガイドラインと法的責任  水沼直樹
  はじめに
  診療ガイドラインの意義と作成工程
  診療ガイドラインの法的位置づけ
  医療訴訟における診療ガイドラインの傾向と対策
  リハビリテーションにおける診療ガイドライン
  診療ガイドラインの今後の展望
  まとめに代えて:紛争防止のために
 9 医師不在の環境での対応  宮越浩一
  はじめに
  ハイリスク患者のスクリーニング
  安全管理ガイドラインの適応
  緊急性の判断
  現場での応急処置
  
II 疾患ごとの急変予測 -どのような症例に急変が生じやすいか-
 1 脳卒中  西田大輔
  はじめに
  脳卒中の病型分類
  病型別のリスク管理
  頻度の高い合併症
 2 運動器疾患  宮越浩一
  はじめに
  大腿骨近位部骨折
  脊椎圧迫骨折
  四肢長管骨骨折
  脊髄損傷
  脊椎術後合併症
  膠原病
 3 循環器疾患  宮越浩一
  はじめに
  虚血性心疾患
  弁膜症
  心房細動
  心不全
  大動脈瘤,大動脈解離
  末梢閉塞性動脈疾患
 4 呼吸器疾患  宮越浩一
  はじめに
  肺炎
  慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  間質性肺炎
  喘息
 5 悪性腫瘍(がん)  宮越浩一
  はじめに
  腫瘍緊急症(oncologic emergencies)
  抗がん剤の副作用
  血栓症
  骨転移
 6 糖尿病  宮越浩一
  はじめに
  血糖コントロール
  低血糖
  糖尿病ケトアシドーシス(DKA)・高浸透圧高血糖症候群
  糖尿病網膜症
  糖尿病神経障害
  虚血性心疾患・脳卒中
  糖尿病足病変
  シックデイ
  糖尿病と運動療法
 7 深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症  宮越浩一
  はじめに
  深部静脈血栓症
  深部静脈血栓症の危険因子
  深部静脈血栓症の診断
  深部静脈血栓症の治療
  深部静脈血栓症と診断された患者に練習を継続するか?
  肺血栓塞栓症(PTE)
  肺血栓塞栓症の診断
  肺血栓塞栓症を生じた場合の対応
  
III どのような急変を生じるか -遭遇しやすい症状とその対処法-
 1 高血圧・血圧上昇  宮越浩一
  はじめに
  本態性高血圧
  高血圧緊急症・切迫症
  高齢者の高血圧
 2 低血圧・血圧低下  宮越浩一
  はじめに
  ショック
  本態性低血圧
  起立性低血圧
  食事性低血圧
  血管迷走神経反射
  循環血液量減少
  慢性心不全
 3 動悸・不整脈  宮越浩一
  はじめに
  動悸
  頻脈(tachycardia)
  徐脈(bradycardia)
  期外収縮
 4 意識障害  宮越浩一
  はじめに
  失神
  せん妄
  低血糖・高血糖
  てんかん発作・症候性発作
  非痙攣性てんかん重積
  脳卒中
  COPD急性増悪
  薬剤性(睡眠薬,抗精神病薬などの向精神薬)
 5 呼吸困難  宮越浩一
  はじめに
  肺血栓塞栓症
  気胸
  アナフィラキシー
  急性喉頭蓋炎
  過換気症候群
 6 胸痛  宮越浩一
  はじめに
  虚血性心疾患(急性冠症候群)
  大動脈解離
  その他の緊急性が高い疾患
 7 筋骨格系の疼痛  宮越浩一
  はじめに
  骨転移
  化膿性脊椎炎
  化膿性関節炎
  椎体圧迫骨折
  大腿骨頸部・転子部骨折
  異所性骨化
  複合性局所疼痛症候群(CRPS)
  偽痛風
  絞扼性末梢神経障害
 8 頭痛  桂井隆明
  頭痛の分類
  頭痛で確認すべき病歴・所見
  見逃してはいけない主な原因疾患
  現場での対応
  その他の二次性頭痛
  参考:主な一次性頭痛について
 9 腹痛  宮越浩一
  はじめに
  急性腹症
  虚血性心疾患
  腹部大動脈瘤・大動脈解離
  腸間膜動脈血栓症
  急性胆嚢炎・急性胆管炎
  胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  消化管穿孔
  腸閉塞(イレウス)
 10 嘔気・嘔吐  宮越浩一
  はじめに
  脳卒中
  虚血性心疾患
  内耳前庭疾患
  高血圧性脳症
  肺血栓塞栓症
  慢性的な嘔気・嘔吐
  現場での対応
 11 めまい  宮越浩一
  はじめに
  良性発作性頭位めまい症(BPPV)
  メニエール病
  突発性難聴
  前庭神経炎
  脳卒中
  不整脈
  起立性低血圧
 12 痙攣・てんかん発作  宮越浩一
  はじめに
  急性症候性発作・症候性てんかん
  脳卒中後の急性症候性発作・症候性てんかん
  脳性麻痺に伴うてんかん
  痙攣重積状態(重積発作)
  突然死
  非痙攣性てんかん重積(NCSE)
  発作時の対応と評価
  てんかん発作と鑑別するべき不随意運動
  治療の流れ:医師到着後から再発予防まで
  翌日以降の対応
 13 発熱  宮越浩一
  はじめに
  敗血症
  肺炎
  髄膜炎
  感染性心内膜炎
  熱中症
  尿路感染
  手術部位の感染(SSI)
  カテーテル関連血流感染(CRBSI)
  薬剤性の発熱
 14 浮腫  宮越浩一
  はじめに
  深部静脈血栓症
  慢性静脈不全
  リンパ浮腫
  
IV 急変を生じた場合に
 1 一次救命処置,心肺蘇生  室井大佑
  一次救命処置
  救命の連鎖
  救命処置に関するガイドライン
  『AHAガイドライン2015』について
  一次救命処置の実際
  一次救命処置の流れ
  一次救命処置で使用する道具について
  死戦期呼吸について
  一次救命処置に伴う合併症について
  チームアプローチの重要性について
  急変時への備え
 2 一次救命処置後の対応  鵜澤吉宏
  はじめに
  アルゴリズムを知っておく
  各アルゴリズム
  基本手技
  再評価の時期
 3 救急カート  鵜澤吉宏
  救急カートとは
  救急カート備え付けの物品
  救急カートの外側
  
V リハビリテーションに関連するその他のリスク
 1 転倒の予測方法  宮越浩一
  転倒により生じる問題
  転倒を予測する因子
  各種転倒評価法とその予測精度
  既存の予測方法を転用する際の注意
  亀田メディカルセンターでの転倒予測モデル開発
  スクリーニングにおけるカットオフ点の設定
  スクリーニングはいつ実施するべきか
 2 転倒予防方法と転倒後の対応  髙橋静子
  はじめに
  転倒の原因と発生しやすい場面の患者指導用パンフレットへの活用
  リスク評価と高リスク患者の識別方法
  リスク対応
  転倒・転落発生時の院内対応
  転倒予防チームによる病棟回診
  リハビリテーション医療における安全管理
 3 転倒・転落による外傷への対応  宮越浩一
  はじめに
  骨折
  脱臼
  靱帯損傷
  頭蓋内出血
  脊髄損傷
  皮膚損傷
 4 窒息事故の予測と対応  根本達也,室井大佑
  はじめに
  窒息に対するリスク管理
  摂食・嚥下障害の評価
  安全に食べるための対策
  窒息時の対応
 5 吸引の基本と手技,それに伴うリスク  鵜澤吉宏
  はじめに
  気道吸引の目的
  気道吸引の流れ
  気道吸引の方法の選択
  気道吸引の実際
  可能性のある合併症状とその予防
  感染予防
 6 気管カニューレの取り扱いに関連するリスク  根本達也,宮越浩一
  はじめに
  気管切開と気管カニューレの目的
  気管カニューレの構造
  気管切開が患者に及ぼす影響
  気管切開患者の嚥下に関する問題
  気管カニューレ使用時のリスクとその管理
 7 感染管理の知識  古谷直子
  はじめに
  感染管理の考え方
  標準予防策
  感染経路別予防策
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