心電図マイスターからの挑戦状
132問

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定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
- A4ヨコ判 320ページ 2色(一部カラー),イラスト30点
- 2025年10月3日刊行予定
- ISBN978-4-7583-2430-4
電子版
序文
はじめに
本書を手にとっていただき,ありがとうございます。本書は“心電図読影のプロフェッショナルになりたい人”を対象に,教科書の知識だけでは到達しえない読影力の増強を目指して企画・編集しました。筆者自身が最初にぶつかった壁は,“教科書を読んでも心電図が読めるようにならない”ことでした。これは筆者以外の方も経験され,中級と上級の間にそびえ立つ1つの壁となっているところでしょう。この壁を乗り越えられるかどうかの違いは単に知識量ではなく,1)波形から鑑別すべき疾患を取り出す引き出しの多さ,2)そのなかから正解を導く精度の高さ,にあると考えます。
例えばST上昇をみたとき,まずは虚血性心疾患を念頭に置くことを当然とし,心筋炎,たこつぼ心筋症,早期再分極,Brugada 症候群,肺血栓塞栓症など,より多くの候補をいかに挙げられるかどうか。それが上級者の“引き出しの多さ”です。そして,診断精度を高めるには順算(所見→疾患)と逆算(疾患→所見)という2つの思考を瞬時に往復する力が不可欠です。順算は見落としを防ぎ,逆算は誤答を排します。「ST上昇しているから虚血性心疾患かもしれない」(順算),一方で,「虚血性心疾患ならミラーイメージがあるはずだがそれがなさそう」(逆算)といった具合です。臨床のプロフェッショナルはこの思考プロセスを同時並行でこなし,限られた情報から最も合理的な結論に到達します。これが“精度の高さ”につながります。
本書は心電図読影の達人として認定を受けた“心電図マイスター”たちの思考過程を収録し,実際の臨床で役立つ“引き出しの多さ”と“精度の高さ”を育てるための知識を詰め込んでいます。今までの問題集とは一線を画すものになっており,なかには正解がわかっていない問題や,さまざまな考察,場合によっては摩擦を生じる可能性がある問題もあります。しかし,これこそリアルであり,複雑な心電図を結集すると,標準的な問題集でみるような誰もが正答までの道筋を立てられる心電図のほうが少なくなります。
議論の嵐を生む問題というのは,出題すること自体にリスクを伴います。そうした問題に対する考察は,ときに相違があることもあれば,定義の枠を超えて鑑別を必要とすることもあります。たとえ12誘導心電図1枚のみで完璧に診断することは不可能だとしても,その1枚から十分に所見を拾い,診断精度を少しでも上げるという行為そのものに意味があります。ついては,その思考に対する建設的なご意見を大歓迎しつつも,重箱の隅をつつくようなご意見やご質問はお控えいただき,筆者を含め,リスクを取っている執筆者=挑戦者たちを温かく見守っていただけますと幸いです。共著の先生方はそのような発信をすることのリスクを承知のうえで,喜んでご協力いただきました。ここに改めて謝意を捧げます。
最後に,読者の皆さんへ。心電図クイズであれば,“選択肢から1つを選び,正解であれば満足,外れれば残念”で済むでしょう。しかし,臨床の現場はそう単純ではありません。目の前の1枚の心電図から考えうる疾患を可能なかぎり挙げ,それぞれの可能性を裏づける根拠を積み重ね,適切な検査や治療へと論理的に導く必要があります。
“順算”と“逆算”を絶えず往復させ,所見と病態を突き合わせながら思考を深めていく過程こそが,心電図読影力を飛躍的に高めます。その積み重ねの先に,確かな診断力を備えた心電図読影のエキスパートへの道が拓かれていくはずです。本書が,その歩みにおける確かな道標となり,読者の皆さんが臨床の現場でより精緻で自信に満ちた判断を下す一助となることを,心より願っております。
2025年9月
藤澤 友輝
本書を手にとっていただき,ありがとうございます。本書は“心電図読影のプロフェッショナルになりたい人”を対象に,教科書の知識だけでは到達しえない読影力の増強を目指して企画・編集しました。筆者自身が最初にぶつかった壁は,“教科書を読んでも心電図が読めるようにならない”ことでした。これは筆者以外の方も経験され,中級と上級の間にそびえ立つ1つの壁となっているところでしょう。この壁を乗り越えられるかどうかの違いは単に知識量ではなく,1)波形から鑑別すべき疾患を取り出す引き出しの多さ,2)そのなかから正解を導く精度の高さ,にあると考えます。
例えばST上昇をみたとき,まずは虚血性心疾患を念頭に置くことを当然とし,心筋炎,たこつぼ心筋症,早期再分極,Brugada 症候群,肺血栓塞栓症など,より多くの候補をいかに挙げられるかどうか。それが上級者の“引き出しの多さ”です。そして,診断精度を高めるには順算(所見→疾患)と逆算(疾患→所見)という2つの思考を瞬時に往復する力が不可欠です。順算は見落としを防ぎ,逆算は誤答を排します。「ST上昇しているから虚血性心疾患かもしれない」(順算),一方で,「虚血性心疾患ならミラーイメージがあるはずだがそれがなさそう」(逆算)といった具合です。臨床のプロフェッショナルはこの思考プロセスを同時並行でこなし,限られた情報から最も合理的な結論に到達します。これが“精度の高さ”につながります。
本書は心電図読影の達人として認定を受けた“心電図マイスター”たちの思考過程を収録し,実際の臨床で役立つ“引き出しの多さ”と“精度の高さ”を育てるための知識を詰め込んでいます。今までの問題集とは一線を画すものになっており,なかには正解がわかっていない問題や,さまざまな考察,場合によっては摩擦を生じる可能性がある問題もあります。しかし,これこそリアルであり,複雑な心電図を結集すると,標準的な問題集でみるような誰もが正答までの道筋を立てられる心電図のほうが少なくなります。
議論の嵐を生む問題というのは,出題すること自体にリスクを伴います。そうした問題に対する考察は,ときに相違があることもあれば,定義の枠を超えて鑑別を必要とすることもあります。たとえ12誘導心電図1枚のみで完璧に診断することは不可能だとしても,その1枚から十分に所見を拾い,診断精度を少しでも上げるという行為そのものに意味があります。ついては,その思考に対する建設的なご意見を大歓迎しつつも,重箱の隅をつつくようなご意見やご質問はお控えいただき,筆者を含め,リスクを取っている執筆者=挑戦者たちを温かく見守っていただけますと幸いです。共著の先生方はそのような発信をすることのリスクを承知のうえで,喜んでご協力いただきました。ここに改めて謝意を捧げます。
最後に,読者の皆さんへ。心電図クイズであれば,“選択肢から1つを選び,正解であれば満足,外れれば残念”で済むでしょう。しかし,臨床の現場はそう単純ではありません。目の前の1枚の心電図から考えうる疾患を可能なかぎり挙げ,それぞれの可能性を裏づける根拠を積み重ね,適切な検査や治療へと論理的に導く必要があります。
“順算”と“逆算”を絶えず往復させ,所見と病態を突き合わせながら思考を深めていく過程こそが,心電図読影力を飛躍的に高めます。その積み重ねの先に,確かな診断力を備えた心電図読影のエキスパートへの道が拓かれていくはずです。本書が,その歩みにおける確かな道標となり,読者の皆さんが臨床の現場でより精緻で自信に満ちた判断を下す一助となることを,心より願っております。
2025年9月
藤澤 友輝
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目次
登場人物紹介
本書のコンセプトと使い方
略語一覧
第1 章不整脈カンファレンスで迫る82問
第2 章模擬試験問題50問
模擬試験問題の解答・解説
付録
①不整脈起源推定のための心臓解剖&閉塞部位鑑別のための冠動脈イメージ
②全解答・出題データ一覧
本書のコンセプトと使い方
略語一覧
第1 章不整脈カンファレンスで迫る82問
第2 章模擬試験問題50問
模擬試験問題の解答・解説
付録
①不整脈起源推定のための心臓解剖&閉塞部位鑑別のための冠動脈イメージ
②全解答・出題データ一覧
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心電図マイスターすらも悩む波形にどう挑むのか? その“思考”が学べる不整脈カンファレンス✕解説LIVE
心電図マイスターが心電図波形と互いの解答を持ち寄り,判読法や心電図検定について語り尽くす誌上カンファレンスを再現。感想戦と出題者による解説をミックスした,新感覚の難読心電図読影指南書。多角的で再現性のある考え方を会得し,心電図の限界ラインにおける考え方と実力チェックを会話形式で楽しめる。本編82題に加え,心電図検定1級および心電図マイスター認定を目指すための模擬試験問題50問。心電図検定対だけでなく,究極の鑑別力や判読の精度を追い求める人,診断等における心電図の有用性を模索する心電図愛好家にうってつけ。