新 癌の外科 -手術手技シリーズ 2

泌尿器癌

泌尿器癌

■編集 藤元 博行

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • A4判  132ページ  2色
  • 2001年9月26日刊行
  • ISBN978-4-89553-956-2

1992年の刊行以来,大好評をいただいてきた『癌の外科−手術手技シリーズ 泌尿器癌』の新版である。旧版刊行より9年余りの間の,泌尿器癌手術手技の最新知見を網羅し,イラスト点数も大幅にアップ。線画,鉛筆画の詳細な図解により,泌尿器癌手術手技をより分かりやすく説明している。泌尿器科臨床医必携の書籍である。

■シリーズ監修
垣添忠生


序文

 ふと気がつけば,初版からすでに10年近い歳月が経過していた。国立がんセンター中央病院泌尿器科のこの10年はまさに悪性腫瘍に対する開放手術の改良にあった。癌の悪性度を理解し,可能な症例に対しては癌の根治を確保しつつ,機能温存を目指す方向と拡大切除により,より根治を目指す方向を模索しつづけた。さらに技術を確立し,より侵襲や合併症の少ない,安定した手術手技の確立を目指してきた。一方で,これらの技術が一部の卓越した術者しか施行できないようでは普遍化できない,という観点から,若いレジデントの先生が一人前の術者として成長できるように援助がなされ続けた。これはある面では,膨大な労力と忍耐を必要とする作業であった。初版時,泌尿器科におけるレジデント体制はまだ黎明期であったが,その後,全国から泌尿器科癌の手術手技の習得に闘志を燃やす若い先生をレジデントとして迎え,一緒に学び成長することができた。今回の改訂に際しては,この10年間の国立がんセンター中央病院泌尿器科の進歩を記す目的とレジデント教育の目的で,レジデントあるいはチーフレジデントの先生方にも多くの部分を執筆していただいた。このため,内容が未熟,不十分という点もあるが,逆にこれから手術を習得していこう,あるいは久しぶりに手術を行おうとする先生方にはよいワンポイントアドバイスになるのではないかと思っている。
 近年,泌尿器科を取り巻く状況としては,若い先生方がますます基本的な手術手技を習得しにくい状況にあるのではないかと思われる。もともと泌尿器科癌はそれほど頻度の多い疾患ではなく,さらに開放手術の術者として修練する機会は格段に少ないのが現状ではないかと思われる。また近年では,前立腺癌に対する放射線治療や膀胱温存療法などの外科的治療法以外が花盛りである。これらの治療法を否定するつもりはないが,手術手技が未熟なためにこれらの治療法が選択されているとすると,将来的には泌尿器科医は,ますます外科手術の不得手な集団になってしまうのではないと危惧してしまう。このことは最終的に本当に技術力が要求される手術が必要となったとき,重大な問題を引き起こすことになるのではないかと思われる。最近,進行精巣腫瘍に対する抗癌剤治療後の後腹膜リンパ節郭清の適応に関するセカンドオピニオンを求められることが多い。その多くは「手術が危険であまり進められない。このまま経過観察しよう」といわれたが,どうかという内容である。進行非セミノーマ症例に対する化学療法後のsalvage surgeryは,少なくとも現在では治療法の選択の王道であり,いくら手術侵襲が大きくても基本的にこれを回避することはできない。そのための技術を習得することは,悪性腫瘍の治療のあたる者の義務ではないかと思っている。
 若い先生方が開放手術で,より技術を高められるよう,本書が少しでもお役に立てれば幸いである。
 最後に現在,国立がんセンター中央病院泌尿器科では年間200例以上の悪性腫瘍に対する開放手術を行っている。手術は基本的に担当レジデントとスタッフで行われ,担当レジデントは術者か第1助手として手術に入る。時にはもう嫌というほどの手術症例を割り当てられている。国立がんセンター中央病院は任意研修制度(最大6カ月間),卒後3年目以降から応募可能なレジデント制度(3年間),卒後6年目以降から応募可能ながん専門修練医(チーフレジデント,2年間)制度をとっている。悪性腫瘍に対する外科手術の手技や治療の習得に闘志を燃やしている先生なら,誰でもわれわれはウェルカムである。チャンスがある先生はどしどし応募していただきたい。

2001年9月
藤元博行
全文表示する

目次

泌尿器癌手術の現状と動向  垣添忠生
基本手技  藤元博行
 結紮
 剥離操作
 脈管の処理
 運針
泌尿器科手術に必要な解剖学 松岡直樹
 膜構造
 自律神経
 臓器の血管支配
副腎摘除術  北村 寛/藤元博行
 適応
 術前準備
 麻酔,体位
 術式の選択と手術の組み立て
 皮膚切開,開腹
 開腹後の具体的手術手技
 下大静脈内腫瘍栓の摘出
 ドレナージ,閉創
 術後管理
腎細胞癌に対する手術  佐藤仁彦/藤元博行/北村 寛
 手術療法の適応と考え方
 腎摘除術
 腎部分切除術
 下大静脈内腫瘍栓の摘除術
 拡大切除・合併切除
腎尿管全摘除術と尿管部分切除術  込山元清/藤元博行
 適応
 体位,術前準備
 手術の実際
 部分切除後の尿路再建
 閉腹と術後管理
経尿道的膀胱腫瘍切除術  込山元清
 適応
 麻酔
 体位,機材の準備
 尿道〜膀胱の観察
 cold punch biopsy
 TURBTの実際
 術後管理
 合併症
膀胱前立腺全摘除術および尿道摘除術  北村 寛/庭川 要/藤元博行
 適応と術前準備 
 男性の膀胱前立腺全摘除術 
 男性の勃起神経温存膀胱全摘除術 
 女性の膀胱子宮全摘除術 
尿路変向術   庭川 要
 回腸導管造設術 
 自然排尿型回腸新膀胱 
 導尿型回腸新膀胱 
前立腺全摘除術   中川 徹/鳶巣賢一/藤元博之
 適応と術前準備 
 麻酔と体位,消毒 
 恥骨後式逆行性前立腺全摘除術 
 神経温存前立腺全摘除術 
 神経温存を意図しない前立腺広汎切除術 
 術後管理
陰茎切断術  松岡直樹
 治療方針
 陰茎切断術
 鼠径リンパ節郭清術
後腹膜リンパ節郭清術  松岡直樹
 適応と郭清範囲
 手術手技
 術後管理と合併症
高位除睾術  込山元清
 術前管理
 麻酔と体位
 手術手技
全文表示する