新 癌の外科 -手術手技シリーズ 3

胃癌

胃癌

■編集 笹子 三津留

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • A4判  160ページ  2色,イラスト350点
  • 2002年2月13日刊行
  • ISBN978-4-89553-957-9

胃癌手術は,さまざまな癌の手術療法の中でも,きわめて頻度の高い治療法の1つといえる。国立がんセンター中央病院では,年間約500例の胃癌手術が行われているが,15年前に比べると,手術手技は著しく多様化し,進行癌に対する安全な拡大手術もわかってきた。本書は,旧シリーズでは刊行できなかった「胃癌」について,国立がんセンター中央病院の手術手技を,イラストを駆使して解説した外科医必読の書である。

■シリーズ監修
垣添忠生


序文

 胃癌の手術は15年前に比べると著しく多様化しました。進行癌に対する安全な拡大手術の方法もわかってきました。われわれの施設では,スキルス胃癌に対して一律に左上腹部内臓全摘術を行ってはいませんが,年に数例は左上腹部内臓全摘術でないと切除できない症例があります。以前は時にリークした結腸結腸吻合も,器械吻合の導入で安全になりました。また,このような症例は可能な限り術前化学療法を行っていますが,Appleby手術を行わないととりきれない症例があります。そのような状況ですから,これらの手技を過去に諸先輩から教わったことは決して無駄にはなっていません。今後Neoadjuvant chemotherapyにより,局所高度進展胃癌の手術適応が増えるとこれらの手術はますます必要になるかもしれません。一方で,幽門保存胃切除はすでに300症例を経験し,今やルーチンとなっています。この手術ばかりでなく,噴門近傍の早期胃癌に対しても,自律神経温存噴門側胃切除を行うようになり,迷走神経の解剖を熟知するようになってきました。
 多くの手術に共通部分がありますので,可能な範囲では重複を避けましたが,あえて重複させた方がわかりやすいと判断した場合には,重複している部分もそのまま掲載しました。どこの施設でもそうであるように,佐野,片井,笹子の3人のスタッフ間でもちょっとした好みや癖による手技の相違はあります。しかし,大筋はほとんど同じ手術をしており,この3人ですべてを執筆すれば,「国立がんセンターの手術」といっても差し障りがないと考えました。また,一部の章はチーフレジデントとして3人と数100の手術をともにし,3人の手術の違いも熟知し,術後管理の責任を一手に引き受けていた阪先生に書いてもらいました。最もいいものを書いてくれたように思います。
 メジカルビュー社からの手術手技シリーズは“銀本”という愛称をいただき,広く全国の外科医に愛読されてきたと聞いています。しかし,皆様もご存知のように胃癌に関する銀本は今日まで存在しませんでした。今回各臓器において新版を出すに際し,われわれもやるしかない状況に追い込まれました。3人で年間ほぼ500例の手術症例を担当するという激務の合間を縫って,夜間に筆を執り,ようやく刊行にこぎ着けました。もっと時間があれば,もっとよく書けるのに,という思いがあるのですが,出版までに時間がかかっては中身が腐ってきます。足りない分は,次回の改訂にビデオのシリーズとして出したいくらいです。
 最近腹腔鏡補助下の胃癌手術をみる機会が増え,今の開腹手術における標準があまりにもなくなってきているのではないか,と痛感しています。「腹腔鏡で手術するようになって初めて,きちっと解剖を意識した正確な手術をするようになった」という話を聞くにつけ,開腹手術の基本を示す本やビデオが必要なことを改めて感じています。その意味では,腹腔鏡手術をおやりになる方にもぜひお読みいただきたいと思っています。

2001年10月
笹子三津留
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目次

手術に必要な局所解剖学     
 手術に必要な局所解剖学  笹子三津留
  胃の周辺臓器と位置関係,膜構造  
  胃の動脈  
  脾動脈から膵体部への主な分枝  
  胃の静脈  
  胃の神経,胃癌手術に関係する神経  
  胃周囲のリンパ節  
手術に必要な基本手技  
 手術に必要な基本手技  笹子三津留
  開腹(上腹部正中切開の基本)  
  層の剥離  
  リンパ節郭清  
  肉眼的転移陽性リンパ節の郭清  
進行胃癌に対する標準的手術  
 D2幽門側胃切除術  佐野 武
  適応  
  郭清範囲  
  開腹  
  Kocherの授動術  
  大網の切除(omentectomy)と盲嚢切除(bursectomy)
  幽門下部の郭清  
  幽門上部の郭清  
  膵上縁(No.8a,8p)と肝十二指腸靭帯左縁(No.12a)の剥離  
  腹腔動脈左側と脾動脈近位部リンパ節(No.11p)の郭清  
  左胃動脈の切離  
  胃上部小弯の郭清  
  胃の切離  
  吻合  
 D2胃全摘術  片井 均
  胃全摘術の適応  
  開腹  
  膵脾の脱転  
  十二指腸授動  
  大網,網嚢切除(結腸間膜前葉)  
  幽門下リンパ節の郭清  
  網嚢切除(膵前面)  
  小網側の処理と十二指腸の切断  
  膵上縁の郭清  
  脾動脈の切断  
  食道の切断  
  膵温存術式 
  再建 
  ドレーン 
拡大手術 
 膵脾合併切除術 
  手術手技 
 左上腹部内臓全摘術 
  左右結腸曲の授動 
  結腸切離線の決定 
  結腸間膜の処理と切除 
  膵体尾部の授動 
  右胃大網動静脈の切離 
  膵の切離 
 大動脈周囲リンパ節郭清術(D3郭清)  佐野 武
  適応 
  胃病変の局在と郭清部位  
  解剖上のポイント:Gerota筋膜  
  Kocherの授動術と郭清領域の露出  
  No.16b1領域の郭清  
  No.16a2-pre/intの郭清  
  No.16a2-latの郭清  
 食道浸潤胃癌に対する手術-左開胸開腹によるアプローチ  佐野 武
  手術体位  
  手術手技  
  術後管理  
 食道浸潤胃癌に対する手術-開腹横隔膜切開によるアプローチ  佐野 武
  体位,皮切  
  手術手技  
 Appleby 手術   笹子三津留
  手術手技  
 残胃進行癌の手術  笹子三津留
  残胃進行癌治療における考え方  
  手術手技  
早期胃癌に対する縮小手術  
 幽門保存胃切除術  阪 眞/笹子三津留
  神経および血流温存  
  リンパ節郭清  
  適応  
  手術手技  
  ドレーン  
 噴門側胃切除術  笹子三津留
  大網の処理と左胃大網リンパ節郭清手技  
  温存する迷走神経の遊離  
  小弯の郭清と胃の切離  
  2群リンパ節の郭清  
  左噴門リンパ節の郭清  
  再建法;空腸間膜の処理,食道空腸吻合,空腸胃吻合  
  ドレーンの挿入  
 局所切除術  片井 均
  胃局所切除術  
  腹腔鏡下胃局所切除術  
 膵脾温存胃全摘術  片井 均
  適応  
  手術手技  
胃癌切除後の消化管再建法  
 消化管吻合の基本手技-漿膜筋層連続1層吻合  阪 眞/佐野 武
  手術手技    
 消化管吻合の基本手技-Gambee変法1層吻合  阪 眞/笹子三津留
  手術手技  
 消化管吻合の基本手技-連続Albert-Lembert吻合  阪 眞/佐野 武
  手術手技  
 消化管吻合の基本手技-自動縫合・吻合器  
 (linear stapler,circular stapler)  片井 均
  linear stapler  
  circular stapler  
 幽門側胃切除後-Billroth I(B-I)法  片井 均
  手術手技  
 幽門側胃切除後-Billroth II(B-II)法  笹子三津留
  Hofmeister変法の結腸後吻合  
 幽門側胃切除後-Roux-en -Y法  佐野 武
  手術手技  
  術後管理  
 噴門側胃切除後-食道・胃吻合  片井 均
  手術手技  
 胃全摘術後-Roux-en -Y法  片井 均
  手術手技  
 胃全摘術後-空腸間置術  佐野 武
  適応  
  手術手技  
周術期管理  
 周術期管理  阪 眞
  術前管理  
  一般術後管理  
  術後ドレーン管理  
  術後合併症管理
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