日本医師会生涯教育シリーズ

脳血管障害の臨床

日本医師会編

脳血管障害の臨床

■編集 福内 靖男
島津 邦男
片山 泰朗
田村 晃
千野 直一

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  352ページ  2色(一部カラー)
  • 2001年7月23日刊行
  • ISBN978-4-89553-968-5

社会保険指導者講習会「脳血管障害の臨床」テキストの単行本化。脳血管障害(脳卒中)はわが国の死因の第3位,患者数は約170万人で第3位であり,65歳以上の国民医療費の約40%が費やされ,要介護者の約3割を占め,寝たきり患者の約4割が脳卒中患者である。こうした国民病ともいえる脳血管障害の疫学・診断・治療などについて,専門医により最新の情報をわかりやすく解説されている。


序文

 現在,高齢者の医療をめぐる問題が大きな社会的問題になっている.日本人の平均寿命が世界一になり,2010年には65歳以上の高齢者が全人口の25%を超えると予想されているが,国民が安心して老後を迎えることができるかどうかは大問題である.
 急速な人口の高齢化の進行とともに,寝たきりの高齢者が増加している.必然的に高齢者にかかる医療費も急速に増高している.日本医師会は「医療構造改革構想」のなかで,75歳以上の後期高齢者を対象に,保険よりも保障の性格を強くもつ独立した高齢者医療制度の創設を主張しているが,寝たきり,痴呆などが75歳以上の年齢層で,全体の80%以上を占めることが分かっているからである.その寝たきりや老年期痴呆の最大の原因となっているのが,本書で取り上げた脳血管障害である.
 昭和26年以来,長くわが国における死因の第1位を占めていた脳血管障害は,その後,癌や心疾患に取って替わられ 現在では第3位に位置している.脳血管障害による死亡の減少の理由としては,高血圧の治療,管理の普及,栄養状態の改善,生活環境の向上などが考えられている.しかし,その一方,高齢者の有病率は減っていないこと,食生活の欧米化とともに動脈硬化による脳梗塞が多くなっていること,70代,80代での発症が少なくないことなど,依然として国民生活を脅かす疾患であり,これからの高齢者医療の行方を左右する疾患であるといえよう.
 脳卒中は発症後短時間内に適切な治療が開始されれば,決して治らない病気ではなく,また,後遺症も軽減できる.しかし実際には,治療が開始されるまでに長時間を費やしてしまっている場合が多い.この問題を解決するためには,かかりつけ医と専門医との連携,搬送システムの確立,専門医の育成,専門施設の充実など,多くの課題が残されている.
 本書刊行に際して,ご多忙の中を監修・編集にあたっていただいた福内靖男慶應義塾大学教授,島津邦男埼玉医科大学教授,片山泰朗日本医科大学教授,田村晃帝京大学教授,千野直一慶應義塾大学教授をはじめ,執筆にご協力いただいた諸先生に感謝申し上げたい.

平成13年6月
日本医師会長
坪井 栄孝
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目次

カラー口絵
 脳血管の解剖(主要動脈を中心に)  宜保浩彦,小林茂昭
 血栓形成のメカニズム  内山真一郎
 脳循環・代謝障害  篠原幸人
 脳血管障害の画像と病理  厚東篤生
  高血圧性脳出血
  動脈瘤とくも膜下出血
  脳梗塞1 アテローム血栓性脳梗塞
  脳梗塞2 ラクナ梗塞
  脳梗塞3 心原性脳塞栓症
  血管内悪性リンパ腫症
I 脳血管障害の最近の動向
 脳血管障害の最近の動向  藤島正敏
II 脳血管障害の診断 
 脳血管障害の分類  福内靖男
 緊急時の診断と管理(急性期患者へのアプローチ) 
  緊急時の問診のポイント  荒木信夫
  緊急時の診察のポイント  荒木信夫
  緊急時の処置  師井淳太,安井信之
 主要症候とそのとらえ方
  頭痛  岩田 誠
  めまい  岩田 誠
  意識障害  岩田 誠
  失神  田村直俊
  痙攣  田村直俊
  感覚障害  井林雪郎,北園孝成
  運動麻痺  井林雪郎,大星博明
  視野障害  井林雪郎,高田潤一
  言語障害  入野誠郎,久保浩一
  知的機能障害  入野誠郎,久保浩一
  異常行動  入野誠郎,久保浩一
  失行,失認  入野誠郎,久保浩一
 病型診断の手順  高木 誠
 脳血管障害と鑑別が必要な疾患  廣瀬源二郎
III 脳血管障害の検査法
 CT,3D-CTA  湧川佳幸,峰松一夫
 MRI,MRA  松本典子,峰松一夫
 脳血管造影  奥寺利男
 脳循環の測定- SPECT  坂井文彦
 脳循環の測定-PET  北村 伸,三品雅洋
 脳循環の測定-ゼノンCT, 造影CTなど  天野隆弘
 超音波検査  寺崎修司,橋本洋一郎,内野 誠
 血液検査  内山真一郎
 脳波検査  廣瀬源二郎
 自律神経機能検査  田村直俊
 神経心理学的検査  岩田 誠
IV 主な脳血管障害の治療
 急性期の治療
  早期治療のポイント
   血圧管理  島津邦男
   抗脳浮腫療法  島津邦男
  脳血栓症の治療  島津邦男
  脳塞栓症の治療  森 悦朗
  脳出血の治療  中込忠好,田村 晃
  くも膜下出血の治療  中込忠好,田村 晃
  リハビリテーション  千野直一
 慢性期の治療 
  慢性期治療のポイント
   脳循環代謝改善薬の使い方  有井孝子,片山泰朗
   抗血小板療法の開始時期と投与期間  神谷達司,片山泰朗
   抗凝固療法の開始時期と投与期間  内山真一郎 
   精神症状に対する薬物療法  平井俊策
  脳血栓・脳塞栓症の治療  棚橋紀夫
  脳出血の治療  中込忠好,田村 晃
  くも膜下出血の治療  中込忠好,田村 晃
V その他の脳血管障害の診断と治療
 一過性脳虚血発作(TIA)/RIND  桂 研一郎,片山泰朗
 無症候性脳血管障害  斎藤 勇
 脳静脈洞・脳静脈閉塞症  佐藤周三
 脳動静脈奇形・血管腫  佐々木富男,根岸正敏
 解離性脳動脈瘤  山浦 晶,小林英一
 巨大脳動脈瘤  端 和夫
 もやもや病  高橋 淳,永田 泉
 小児の脳血管障害  西本 博
 頸動脈病変  小笠原邦昭,小川 彰
 脳血管性痴呆  東儀英夫,高橋 智
 脳アミロイドアンギオパチー  小林祥泰,長井 篤
 易血栓形成性疾患  小林祥泰
VI 脳血管障害患者のリハビリテーション
 急性期のリハビリテーション-離床までの評価と訓練  出江紳一,石田 暉
 回復期のリハビリテーション  長谷公隆,千野直一
 維持期のリハビリテーション  高岡 徹,伊藤利之
VII 脳血管障害患者の介護
 脳血管障害患者の介護  里宇明元
VIII 脳血管障害発生前の危険因子とその対策
 高血圧  松本昌泰,堀 正二
 糖尿病  松本昌泰,堀 正二
 高脂血症  松本昌泰,堀 正二
 飲酒,喫煙  山本康正,秋口一郎
 肥満  山本康正,秋口一郎
 不整脈  山本康正,秋口一郎
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