2024年7月号 Vol.40 No.7

特集1:未来の病態を予測する読影法/特集2:遺伝子からとらえる腫瘍画像診断

臨床画像 2024年7月号
定価 2,970円(税込) (本体2,700円+税)
  • B5判  140ページ  
  • 2024年6月26日刊行


序説:未来を診る画像診断

 画像検査によって,患者の過去に何があったか,現在何が起こっているかを類推することができます。これに加えて,指摘しておくことで撮像時より未来に起こりうる重篤な病態を予測したり,治療の合併症を防いだりできる画像所見があり,読影の醍醐味の1つといえると思います。そして画像診断技術の発達によって,それまで把握できなかった病態をも可視化あるいは定量できることが示されてきました。画像診断は,単に病変を特定するだけでなく,治療効果や予後の予測へとその役割を広げ,放射線科医の仕事に新たな深みと可能性をもたらしています。
 そこで,各領域の一線で活躍する先生方の知見を共有できるような特集を企画致しました。読者の対象は,若手医師や各領域を専門外とする画像診断医です。それぞれの記事で,著者が画像診断において特に注目しているポイントが際立っており,学術的な深さと臨床への応用が融合した優れた内容となりました。この場を借りて,貴重な寄稿をしていただいた著者の皆さまに深く感謝いたします。
 本書には「○○サイン」に代表される画像所見用語が多数取り上げられています。特に初学者の方々には,それらが,①どんな所見で,②何を反映し,③どんな病的意義があるのかの3点をおさえ,人に説明できるように学んでいかれることをお勧めします。
 本特集を通じて,これまで積み重ねられてきた知見や研究成果,技術の進歩が読影に生かされ,患者さんの利益につなげられることを感じていただければ幸いです。

兵頭朋子
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序説(特集2:遺伝子からとらえる腫瘍画像診断)

 近年,学会や研究会は当然として,日々の臨床や読影時の依頼文にさえ多くの遺伝子名を目にされることと思う。放射線診断科の特性上数多の診療科をカバーしなくてはならず,基礎生物学の経験や素養の深浅を問わず踊る遺伝子名を前に戦意喪失することもしばしばではないかと思われる。
 実際のところ,遺伝子名はなじみがないとアルファベットのランダムな羅列に感じられ,無理もないことと思う。SMARCA4という遺伝子名などその好例であるが,親近感のない状態で耳学問として数回遭遇しても脳に浸透してこないと感じられるのではないだろうか(そもそも“SMARC”と“A4”の間に区切りがあることも初見では判別不能かもしれない)。
 今回,腫瘍画像について遺伝子変異から紐解く特集をご指名いただいたものの,当然ながら腫瘍にかかわる遺伝子群をすべてカバーするなど到底不可能であり,優先度をつけることにさせていただいた。まずは,多くの遺伝子群のなかでも画像と結び付けやすく,理解すれば知識体系として長期記憶にしやすい(と筆者が考える)「低酸素応答経路」を介した腫瘍発生について前半で取り上げることとした。後半には,最近多方面で耳にすることの増えた,上述の“SMARC”に代表されるクロマチンリモデリング経路をテーマとした。
 いずれも,「基礎,病理,画像」という三本柱で構成し,医学的好奇心から画像診断が有機的に連結する記事になるよう工夫を凝らしたつもりであるが,その立役者は構成段階から相談に乗ってくださった朋友の病理診断医の杉本曉彦先生であり,病理標本の美しい写真により,分子病態と画像の橋渡し役を果たしてくださった。前半の「低酸素応答経路」は,VHL–HIFの機能解明から2019年のノーベル生理学・医学賞に至ったテーマだが,2024年に発表された『フォン・ヒッペル・リンドウ病 診療の手引き』の研究分担者の中村英二郎先生,研究協力者である蓮見壽史先生に基礎篇として分子機構の同定の歴史を含めて執筆いただいた。画像篇では同じく,HIFに関連する基礎研究の経験を有し同診療の手引きの研究協力者として画像診断について統括させていただいた筆者が,VHL病センター(当施設は専門のセンターを有する)の画像診断担当の経験を基に執筆した。後半のクロマチンリモデリングについては,血液内科医師でクロマチンリモデリングを含むがん生物学研究をご専門とされる青木一成先生に学問的面白さを大変わかりやすくご解説いただいた。SMARCA4/B1欠損を中心とした腫瘍の実際の画像は黒川 遼先生がその処理能力と人脈を活かしてご提示くださった。
 本特集を通して,画像診断医が基礎医学に馴染む意義やその興味深さが少しでも伝われば望外の喜びである。

子安 翔
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目次

■特集1:未来の病態を予測する読影法  企画・編集:兵頭朋子
序説:未来を診る画像診断  兵頭朋子
神経変性疾患を診る−早期診断,発症予測に向けたイメージングバイオマーカー確立の試み−  髙橋洋人
大動脈疾患の未来を診る画像診断  岩越真一ほか
心臓CT,心臓MRIを用いた予後予測  多保康平ほか
急性腸管虚血の予後予測  首藤直大ほか
破裂や狭窄のリスクを予測する泌尿器領域の画像診断  江戸博美ほか
産婦人科領域で予測しておきたいこと  戎 直哉ほか
胎児の未来のための画像診断  青木亮二
よくある骨関節疾患の前駆病変  柏木伸夫ほか

■特集2:遺伝子からとらえる腫瘍画像診断  企画・編集:子安 翔
序説  子安 翔
低酸素応答経路と腫瘍化機構−基礎篇−  蓮見壽史ほか
低酸素応答経路と腫瘍−病理篇−  杉本曉彦ほか
低酸素応答経路と腫瘍−画像篇−  子安 翔ほか
クロマチンリモデリングと腫瘍−基礎篇−  青木一成
クロマチンリモデリングと腫瘍−病理篇−  杉本曉彦ほか
クロマチンリモデリングと腫瘍−画像篇−  黒川 遼

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フォトンカウンティングCTの特徴を概説した総説  樋渡昭雄

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