補助循環マスターポイント102

改訂2版

補助循環マスターポイント102

■編集 許 俊鋭

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • i_dvd.jpg
  • B5判  270ページ  2色(一部カラー)
  • 2009年1月21日刊行
  • ISBN978-4-7583-0187-9

補助循環に必要な基礎的な知識と実務的なポイントを抑えた最適の一冊

初版刊行時には据置き型補助人工心臓が中心となっていたが,開発より年月を経てきているため,種々マイナーチェンジが施されており,徐々に新しい機種への移行が始まっている。また,近年では患者の動きが制限されるこれら据置き型の機種と違い,小型・軽量で患者の負担にならず,患者自身の足で移動が可能な埋込み型人工心臓の開発により,ドナー不足が叫ばれているわが国においては,従来の心機能の回復に重点をおいた使用から,治療の完結とする方向へと進みはじめている状況である。
本改訂版では,補助循環の基本的な知識等については初版を活かしながら,前版より執筆者を大幅に変更し,世代交替の始まった新しいデバイスの知識を盛り込み,より万全な内容として改訂した。本書収載の各種装置の埋め込み手術についてもDVDにおさめ,付録としている。また,Check it!,Caution,Point,Memoなど種々の囲みを設け,より読者が読みやすいようにした。


序文

改訂2版刊行にあたって

 わが国の補助人工心臓の開発は1958年の東京大学木本外科渥美和彦らの研究に始まる。東大型VASは1980年にはヤギにおいて288日の世界最長生存記録を達成し,同年5月,筆者らは三井記念病院においてヒトにおける最初の臨床応用を実施した。
 爾来28年,現時点で本邦唯一の保険償還可能な補助人工心臓は国立循環器病センター型VAS(東洋紡社製)と短期使用を目的としたBVS5000(AbioMed社製)の体外設置型VASのみである。残念ながら,東洋紡VASとともに保険償還された東大型VAS(日本ゼオン社製)は平成17年に本邦市場から撤退し,平成16年に保険償還された植込型Novacor LVAS(World Heart社製)も,極端な保険償還条件の制限により平成18年8月に本邦市場からの撤退を余儀なくされた。
 平成9年に臓器移植法が成立し心臓移植が再開されて11年経たが,極端なドナー心不足により,本邦では平成20年10月の時点でようやく60例の心臓移植手術が実施されたにすぎない。しかもその85%がVASによるブリッジ症例であり,平均補助期間は優に2年を超えている。また,大半の症例が東洋紡VASからのブリッジであり,患者さんは長期の在院治療を強いられている。より高性能の植込型補助人工心臓の本邦早期導入が強く要請されてきた。
 2008年はわが国における補助人工心臓(VAS:ventricular assist system)治療の第二幕の幕開けといっても過言ではない。時代は植込型VASへと大きく飛躍しつつある。平成13年に治験を開始したHeartMate XVEは製造販売承認待ちであり,本邦開発のEVAHEART(サンメデイカル社製)はほぼ治験の完結期を向かえている。また,DuraHeart(テルモ社製)は欧州で製造販売承認(CE Mark)を得て,平成20年10月6日に開始された本邦治験はわずか18日で全登録症例の植込手術が完了し,Jarvik 2000も10月末で全登録症例の植込が完了した。遅々として進まなかった植込型LVASの本邦導入が一気に加速されたのである。小型ロータリーポンプの登場で,小柄な体格の日本人にも容易に埋め込み手術が可能となるとともに長期耐久性が獲得された。何よりも植込後1〜2ヵ月で退院でき,在宅治療・社会復帰・職場復帰が可能となったことである。
 また,重症心不全治療にかかわる循環器内科医の補助人工心臓に対する考え方も大きく転換しつつある。「心臓移植のチャンスが殆どないからVASを植え込んでも仕方がない」という意見が少数派となり,「移植まで長期待機が必要だから植込型VASを用いて在宅治療を可能とし,よりQOLの高い治療を患者さんに提供すべきだ」という意見が多数派を占めるようになってきた。さらに,医療経済面の検討により,体外設置型VASの在院管理とポンプ交換に要する費用は膨大なものがあり植込型LVASに移行することで補助期間が長期になればなるほど経済的メリットが大きいことが明らかになった。在院治療が必要な体外設置型VASは移植に至るまで数年間の病院ベッド占有を要し,ベッドの有効利用を大きく阻害していることなども明らかになってきた。さらに,植込型LVASによる在宅治療は,LVAS治療の遠隔期の最大のリスクである院内感染を回避し,長期成績向上に貢献する可能性もある。
 2005年に出版した「補助循環マスターポイント100」は日本の心臓移植治療の進行とともに好評をはくし,増刷を重ねた。2006年12月に関連学会は「ニーズの高い医療機器(植込型VAS)の本邦臨床導入の促進」を厚生労働省に要請し,厚生労働省・経済産業省の支援の下に急速な新しい植込型LVASの本邦導入作業が進んでいる。今回,メジカルビュー社吉田富生氏の提案により,これらの新しいすべての本邦導入予定の植込型LVASを含めた「改訂版補助循環マスターポイント102」を出版できることになった。この一年間のデバイスの開発速度は極めて速く,新しい知見も含めて出版したいとする著者の希望により原稿作成が遅れがちになり吉田氏に多大なる負担をおかけしたことを陳謝するとともに,最後まで編集努力を重ねていただいた吉田氏の熱意に心より敬意を表したい。
 最後に,本書が何よりも重症心不全に苦しまれている患者さんの治療に少しでもお役に立つことができれば改定にかかわった著者全員の喜びである。心より患者さんの快癒を願って序文とさせていただきたい。

2008年11月
東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座教授
許 俊鋭
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目次

I. 補助循環の基礎
 1.自然心臓の働き
 2.心不全とは
 3.補助循環の定義
 4.心不全治療と補助循環の適用
 5.補助循環の種類と選択
   1 補助循環の種類
   2 補助循環の選択
 6. 重症心不全の治療のなかでの補助循環の位置付け
 7.心移植へのブリッジ使用としての人工心臓
 8.自己心回復へのブリッジ
 9.長期在宅療法(LVAS destination therapy:DT)

II. 補助循環に用いられる血液ポンプ
 10. 血液ポンプの種類(総論)
 11. 血液ポンプの基礎理論
 12. 拍動流ポンプ
 13. ローラー型ポンプ
 14. 遠心ポンプ
 15. 軸流ポンプ

III. IABP
 16. IABPの原理と適応
 17. IABPのバルーンと駆動装置
 18. IABPを適用する際の準備
 19. IABPの挿入方法
 20. IABPの駆動と至適タイミング
 21. IABPよりの離脱と抜去法
 22. IABPの合併症と対策

IV. PCPS
 23. PCPSの概要
 24. PCPSシステムの基本構成
 25. PCPSの駆動方法
 26. PCPSの機器管理
 27. PCPS適応中の患者管理および全身管理
 28. PCPSよりの離脱

V. Impella
 29. Impellaの概要とシステムの基本構成
 30. Impellaのセットアップ
 31. Impella pumpの挿入方法から駆動開始まで
 32. Impella離脱プロトコール
 33. Impellaに不適当な併存病態と合併症

VI. 補助人工心臓
補助人工心臓総論:補助人工心臓の基礎
 34. 補助人工心臓の概要と基本事項
 35. 補助人工心臓の分類
 36. 適応基準および適応除外基準
 37. 施設基準ならびに補助人工心臓チーム
補助人工心臓総論:補助人工心臓装着手術
 38. 手術の準備
 39. 基本的な植え込み手技
 40. 手術の要点
 41. 同時手術の問題
 42. 右心補助・両心補助を必要とする場合(RVAS,RVAS-ECMO)
補助人工心臓総論:補助人工心臓装着手術周術期管理
 43. 補助人工心臓装着手術麻酔
 44. 術中モニタ(特に経食道心エコー)
 45. ICUにおける管理体制
 46. 急性期循環管理の基本
 47. 感染症対策
 48. 抗凝固療法とモニタ
 49. 術後出血に対する対策
 50. 多臓器不全対策
 51. 補助人工心臓適用患者の看護
 52. リハビリテーション
補助人工心臓各論:TOYOBO VAS装着手術
 53. システムの概念と駆動原理
 54. 駆動装置
 55. 基本的な操作方法
 56. 植え込み手術の準備
 57. ポンプセットの準備と装着準備
 58. TOYOBOポンプの装着方法1 :心尖脱血による装着
 59. TOYOBOポンプの装着方法2 :経左房装着方法
 60. TOYOBOポンプの装着方法3 :その他のアプローチ
 61. 駆動方法
 62. 急性循環不全時の離脱(weaning)手順
 63. ポンプ内血栓チェック,ポンプ交換手技
補助人工心臓各論:TOYOBO VAS離脱手術(慢性心不全)
 64. 自己心機能回復を目的とした補助人工心臓治療(BTR)
 65. BTRの補助療法:薬物
 66. BTRの補助療法:非薬物
 67. 長期適用時の日常管理指針
 68. 離脱基準
補助人工心臓各論:HeartMate
 69. 装置の概要
 70. 植え込み手術手技1 -1:腹腔内装着
 71. 植え込み手術手技1 -2:腹腔内装着(開胸から体外循環まで)
 72. 植え込み手術手技1 -3:腹腔内装着(流入コンジット挿入)
 73. 植え込み手術手技1 -4:腹腔内装着(流出側コンジット装着,閉胸)
 74. 植え込み手術手技2 :腹腔外装着
 75. 術後管理と合併症対策
補助人工心臓各論:Novacor (R)
 76. 装置の概要
 77. Novacor LVAS植込み手技
 78. 術後管理と合併症対策
補助人工心臓各論:BVS5000
 79. 装置の概要
 80. 植込み手術手技
 81. 術後管理と合併症対策
補助人工心臓各論:AB5000
 82. 装置の概要
 83. 植込み手術手技
 84. 術後管理と合併症対策
補助人工心臓各論:Jarvik2000
 85. 装置の概要
 86. 植え込み手術手技
 87. 術後管理と合併症対策
補助人工心臓各論:EVAHEART
 88. 装置の概要
 89. システム構成と植込み手術手技
 90. 術後管理・合併症対策
補助人工心臓各論:DuraHeart
 91. 装置の概要
 92. 植え込み手術手技
 93. 術後の抗凝固療法

VII.その他の人工心臓
 94.完全置換型人工心臓の現況
 95.その他の拍動流補助人工心臓
 96.その他の定常流補助人工心臓

VIII.人工心臓治療の今後の課題
 97. 小児症例の補助人工心臓治療
 98. Bridge to Recovery,自己心回復のメカニズム
 99. 補助人工心臓と再生医療
100. 補助循環装着患者の遠距離搬送
101. 補助人工心臓在宅プログラム
102. 補助人工心臓と医療経済

索引

附録:手術手技DVD
1 TOYOBO 補助人工心臓植え込み手術
2 TOYOBO 補助人工心臓離脱手術
3 TOYOBO 補助人工心臓装着症例の心臓移植手術
4 BVS5000
5 Jarvik2000
6 EVAHEART
7 DuraHeart
8 術後創部管理
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