日常診療に活かす老年病ガイドブック 7

高齢者への包括的アプローチとリハビリテーション

高齢者への包括的アプローチとリハビリテーション

■担当編集委員 鳥羽 研二

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • B5判  272ページ  2色
  • 2006年3月6日刊行
  • ISBN978-4-7583-0282-1

超高齢社会を迎えるわが国の医師必携シリーズ

本巻では,高齢者の身体状態把握のために行う各種機能評価の詳細,また機能を維持するために欠かせないリハビリテーションについて詳説。

■シリーズ監修
大内尉義

■シリーズ編集
大内尉義/井藤英喜/三木哲郎/鳥羽研二


序文

高齢者の機能評価の意義

 高齢者においては,疾患(Disease)は臓器や運動器(筋肉,腱,骨関節)の障害(impairment)を引き起こすが,これらは移動(起立,歩行)排泄などの能力の低下(Disability)をもたらす。この能力低下は,職場復帰などの妨げになるなどの不利益(Handicap)につながることもまれではない。
 こうした一連の流れを把握する上で,機能評価方法の理解は医療介護にかかわるすべての職種に必須の知識である。ADLはリハビリテーションの有効性判定の中で,機能評価が洗練され,確立していった歴史的経緯がある。包括的アプローチには,評価と介入があるが,その実践こそがリハビリテーションの日常であり,整形外科疾患から始まったリハビリテーションが,脳血管障害ばかりでなく,機能低下を来す急性慢性疾患である,虚血性心疾患やCOPDまで幅広く応用されて,虚弱者の福音となっている今日である。 
 近年,核家族化によって,高齢者を取り巻く環境は西洋化し,独居,閉じこもりなど,社会的要因や,精神的不活発が問題となっている。
 前述した機能低下のベクトルで注意すべきは,この流れは逆の方向にも存在することである。
 例えば,妻に先立たれた夫がうつ傾向になることはありふれたことであるが,高齢者の場合はこうしたことから床に伏しがちになり,嚥下性の肺炎を起こしていることが少なくない。このように,機能評価はある断面を測定するものであるが,患者さんのおかれた状況をよく把握し,最近の機能の変化を知ることによって,どのような機能向上プログラムを行うのがよいかを判断できる。精神医学では,心身の面を十分把握するが,これによって起きうる生活状況の理解は十分でなく,内科的疾患,老年症候群との関連の把握は,きわめて不十分である。理学療法,心理療法,精神療法はこのプログラムの中核でかつ有効性が確立した領域であるが,機能評価の臨床応用は十分とはいえない。
 高齢者の包括的アプローチに用いられる総合的機能評価の構成成分と意味は,疾患評価(普遍的評価)だけでなく,
1.日常生活活動度(ADL):最低限の生活の自立
2.手段的日常生活活動度(IADL):家庭での生活手段の自立
3.認知機能:物忘れ,痴呆の程度
4.行動異常:いわゆる問題行動,痴呆の周辺症状の評価
5.気分:抑鬱,不安,意欲
6.人的環境:家族・介護者の介護能力,介護負担,
7.介護環境:家庭の物理的,経済的環境,介護サービスの利用
 以上を総合的に検査,評価し,個人の生活,個別性を重視した医療とケアを選択する方法である。
 本シリーズでは,評価(総合的機能評価)と介入(リハビリテーション)を一貫した流れで編集した。多くの専門医家が生活機能低下の程度と今後の見通しといった,重要な事項に対して,家族へ満足な説明への手がかりとなるはずである。

鳥羽研二
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目次

I 高齢者の総合的機能評価   
 総合機能評価の意味  小澤利男
 高齢者総合的機能評価の現状  鳥羽研二
 障害高齢者の生活機能評価に関するガイドライン  鳥羽研二
 健康増進とQOLの評価  奥宮清人,松林公蔵
 虚弱の評価  
  日常生活動作,手段的日常生活動作  高橋龍太郎
  老研式活動能力指標  古谷野 亘
  活力度指標  神崎恒一,鳥羽研二
 認知機能の評価  
  MMSE  武地 一
  HDS-R  武地 一
  柄澤式,CDR  臼井樹子,本間 昭
  大阪大学方式  福永知子,西村 健
 認知コミュニケーションの評価  
   (ミニコミュニケーションテスト)  町田綾子
 認知機能の評価(三つ編みテスト)  守口恭子
 MCIにおける認知機能の評価  武地 一
 問題行動の評価  飯島 節
 抑うつの評価  
  SDS, HRS  福永知子,武田雅俊
  GDS-15, GDS-5  町田綾子
 意欲/無気力の評価  
  Vitality Index(意欲の指標)  鳥羽研二
  高齢者の日常診療における意欲低下/無感動(apathy)の評価  岡田和悟,小林祥泰
 ソーシャルネットワークの評価  中居龍平
 閉じこもりの評価  河野あゆみ
 介護負担の評価  荒井由美子
 介護の質の評価  高橋龍太郎
 高齢者虐待の評価  大國美智子
II リハビリテーション   
 廃用症候群とは  早乙女貴子,江藤文夫
 早期リハビリテーションの考え方  岡島康友
 障害の評価  木村彰男
 障害の帰結予測  園田 茂,鈴木 亨,岡崎英人
 リハビリテーションにおける事故予防  武原 格,宮野左年
 脳血管障害のリハビリテーション  長屋政博
 認知リハビリテーション  遠藤英俊
 言語障害  前野 崇,江藤文夫
 心筋梗塞,心不全のリハビリテーション  西永正典
 嚥下障害のリハビリテーション  須藤英一
 呼吸不全のリハビリテーション  玉木 彰,陳 和夫,三嶋理晃
 在宅介護とリハビリテーション  澁谷健一郎
 支援福祉機器  鈴木大雅
コラム   
 介護保険の改訂  三浦公嗣
 カナダの寝たきり予防  大河内二郎
 米国のCGA研究機関での留学経験  河野あゆみ
 ケアマネジメント  遠藤英俊
 光脳機能イメージング  宮井一郎
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