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医学英語論文読み方のコツ

医学英語論文読み方のコツ

■編集 大井 静雄

定価 3,080円(税込) (本体2,800円+税)
  • A5判  144ページ  2色
  • 2010年11月15日刊行
  • ISBN978-4-7583-0427-6

忙しい時間の中でも,早く,確実に医学英語論文を読みたい! そのためのコツをお教えします

医学英語論文の「書き方」を解説した本はこれまで多数刊行されているが,「読み方」を解説した本は少ない。しかし実際には,医師としてのキャリアの中では自分で論文を書く前でも多数の論文を読む必要があり,また自分で論文を書かなくても,診療の参考などで原著論文を読む機会は数多い。
忙しい時間の中で,多数の医学英語論文を早く確実に読みこなすためには,どうすればよいか? そのポイントを,実例を挙げながら具体的に解説する。


序文

刊行にあたって

 20世紀から21世紀,特に最近の四半世紀には,日本が先進諸国のリーダーとなって世界を先駆した領域は,多岐にわたります。しかしながら,先人たちが築いてきた日本の世界一の業績も,最近になって次々と諸国に抜き去られ,もはや“Japan as No. 1”の時代は過去のものとなりつつあります。
 その原因は,それぞれの領域で異なったものがあるでしょうが,現代の日本には国民の一人ひとりが意識し改善していかねばならない社会の風潮があります。それは,今の日本には“本物”が少なくなってきたことです。本当に政治を知り尽くした“政治家”や世界の経済に精通した“事業家”,さらには医学の一領域において世界から認識された実績のある“医学者”など,“本物”といえるリーダーたちが,最近はどの領域にも少なくなってきたと感じられます。
 そのリーダーたる資格には重要な課題があります。今日の日本においては,“本物”でない,いわば“似非(えせ)”の権威者が続々と登場してきます。マスコミの影響や電子媒体の普及もあって,あまりにも自由な自己宣伝や自己主張がまかり通る,この現象は,決して当人の自己認識や世界情勢の認識欠如の問題に留まりません。趣味や娯楽の世界なら“洒落”ですまされますが,一国の政治を任せるべき人物,世界に君臨する企業を背負う人たち,さらには人類の健康を担う医学界のリーダーたちは,すくなくとも“本物”であってほしいのです。
 リーダーたる資格には,もう一つの重要な課題があります。“国際オンチ”といわれる日本人の貧弱な英語力です。発達脳の言語能力獲得適齢期の観点から考えると,従来の中学校から始まる日本の英語教育の根本的問題点が明確に見えてきます。日本の医学英語教育は,このハンディを背負ってきわめて難しい医学教育の課題でもあるのです。しかし,日本の医学界が世界に君臨するためには,これを乗り越えねばなりません。リーダーたちは当然のこと,広く医療人,医学研究者の医学英語能力の向上が急務でありましょう。
 日本の医学界にもグローバリズムの意識改革は進んではいます。大学の壁を取り払い,“本物”の優れた人材が大学交流のなかで育成され始めたことは喜ばしいことです。一部には,世界を代表する日本の研究者のもとに,第3国のみならず広く先進諸国からも専門医や研究フェローが留学してくるようになってきました。
 世界の医学界に共通する普遍的な見方をすれば,学問の業績に裏打ちされた“本物”のみが勝ち得るリーダーたる資格が評価され,“学術の業績”がより重視されてくれば,その学会は間違いなく世界をリードしていく実力をもつことになります。その日のために,若き研究者や医療者は,辛いときにこそ,論文を友に“本物”を目指してほしいものです(大井静雄・著:医師のための英語論文執筆のすすめ.メジカルビュー社,2001,p. 60)。
 その先には,グローバルセンスと医学英語力が絶対に必要です。リーダーとなることだけがゴールであれば,そこが本人のみならずその集団にとっても最後の姿となってしまいます。リーダーとなったら抄読会では先頭に立って最新の医学英語論文を読み,多忙な臨床や教育に追われようとも研究成果をまとめ,世界のトップジャーナルに自らの論文でもって新たな学術の進歩に足跡を残すことを常に心がけねばなりません。学問には王道も政治もありません。
 そして若き研究者や医療者には,臨床に携わるなら疾患・病態・診断・治療において最先端の知識をもって患者さんを診よ! また医学研究に携わるなら,その研究に関わる知識は常に最先端のものに磨きをかけておけ! と自らが身をもって示さねばなりません。
 本書は,その“本物”のリーダーたちがこのような思いをもって書き上げた,これまでには例のない“医学英語論文の読み方”に関する初めてともいえる本格的な教本です。本書が,今日の日本の医学研究や医療を普遍的に国際レベルに発展させることに貢献することがあれば,執筆陣一同の大きな歓びです。

2010年10月20日
東京慈恵会医科大学 脳神経外科 教授
大井 静雄
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目次

緒言 医学英語論文を賢く読むための心得10ヵ条  

第1章 どのような論文を読むべきか   
 1.読むべき論文を探そう  
  論文検索の目的
  インターネットでの論文検索
  雑誌の選択
 2.論文の種類は何か 
  Original Article(原著論文)
  Case Report(症例報告)
  Review Article(総説)
  Letter to the Editors(編集者への手紙)
 3.論文から研究方法を読み取る 

第2章 Titleの読み方  
 1.医学英語論文の種類とTitleの表現 
 2. Titleから読み取る論文の良し悪し 
  原著論文のTitle
  症例報告のTitle
  総説のTitle
 3.Titleの賢い読み方トレーニング 
  新たな疾患分類法の提唱と臨床上の諸問題に挑む研究論文のTitle
  新たな学術的見解を述べる場合にTitleに新用語として掲げる方法
  長年続いている論議に対する一つの方向付けを意図した論文Title
  新たな手術機器と手術手技の開発をアピールする論文Title
  開発や発明のダイレクトな表現法を用いた論文Title
  基礎医学新知見を示す論文Title
  症例報告
 4.Running TitleとKeywordの捉え方 

第3章 Abstractの読み方  
 1.Abstractとは? 
  英語のAbstract
  Structured Abstract
  なぜ抄録が必要なのか?
 2.Abstractのサンプル 
 3.Informative AbstractとIndicative Abstract 
 4.AbstractとSummary 
  症例報告のSummary
  総説のSummary

第4章 Introductionの読み方  
 1.Introductionはその論文のレベルを示す 
  原著論文
  症例報告
  総説
 2.トレーニング 
  基礎医学新知見を示す論文のIntroduction
  新学説や仮説,新たな臨床概念を提唱する論文のIntroduction(1)
  新学説や仮説,新たな臨床概念を提唱する論文のIntroduction(2)
  病態解明や診断学の進歩を示す論文のIntroduction
  治療学の新知見や新たな手術手技を表した論文のIntroduction
  開発や発明の論文のIntroduction
  世界で報告例のない所見を呈した症例の報告のIntroduction

第5章 Materials and MethodsとResultsの読み方  
 総論  
 1.Materials and Methodsを読む上での注意点 
 2.Materials and Methodsから何を読み取るか 
  Materials(対象)
  Methods(方法)
 3.Resultsを読む上での注意点 
 4.Resultsから何を読み取るか 
  Resultsの構成
  データの表示
  統計解析結果について
 5.Materials and MethodsおよびResultsの読み方 
 各論  
1.細胞生物学的論文  
 1.概説 
 2.実例文での解説 
  Materials and Methods(対象および方法)
  Results(結果)
  Materials and Methodsの実例
  Resultsの実例
 3. 本論文のMaterials and MethodsおよびResultsから学ぶこと 
2.臨床化学的論文  
 1. Materials and Methods(対象および方法) 
  まず構成を確認する
  最初の小見出し:“研究材料”
  2番目の小見出し:“血液粘度とヘマトクリットの測定”
  3番目の小見出し:“線溶パラメータの測定”
  4番目の小見出し:“統計解析”
 2.Results(結果) 
  まず構成をみる
  次に図表をみる
  最初の小見出し:“血液粘度の変化”
  2番目の小見出し:“線溶パラメータの変化”
3.症例報告  
 1.Introduction(緒言) 
 2.年齢,性別,主訴 
 3.経過の説明 
 4.診察所見 
 5.検査所見 
 6.診断名 
 7.治療経過 
 8.その後の予後 
 9.考察,一般論とその症例の特異的な部分 
 10.結語 
4.臨床研究論文  
 1.概説 
  Study Design(研究設定)
  Patients(対象)
  Methods (方法)
  Results (結果)
 2.実際の論文から 
  Methods
  Results
5.薬剤の臨床試験論文  
 1.総論 
 2.開発初期の臨床試験 
  Materials and Methods
  Results
 3.開発中〜後期の臨床試験 
 4.薬剤の臨床試験の論文の実例 
  Materials and Methodsの実例
  Resultsの実例

第6章 Discussionの読み方  
 1.Discussionとは? 
 2.Discussionのサンプル 
  Discussionでの論理展開
  英文でのParagraphについて

第7章 References,Acknowledgementの読み方  
 1.Referencesとは? 
 2.Referencesのサンプル 
 3.Acknowledgementとは? 

Column:  
 “速読”による“読むべき論文”の見分け方【大井式・医学英語論文速読STEP】
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