老年医学update 2010-11

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
- B5判 208ページ 一部2色(特集部分)
- 2010年6月24日刊行
- ISBN978-4-7583-0482-5
序文
本書は,老年医学の進歩を基礎,臨床の両面から俯瞰することを目的に,前年度に日本老年医学会雑誌に掲載された「総説」と「展望」および新たな原稿による「特集」から構成されています.「特集」は,毎年読んでいただくことにより,高齢者診療に必要な最新の知識が得られるように考えてあります.
今回の特集では,「生活習慣病−新薬と高齢者医療」,「脳卒中治療ガイドラインに基づく高齢者診療」を取り上げました.新しいエビデンスの集積,生活習慣や医療水準の変化,新たな医薬品や医療技術の開発により,高齢者の生活習慣病に対する考え方は急速に変化しています.
このような早い流れの中で,日常診療においては個々の患者さんのQOLを改善し,健康寿命を延ばす,それでいて医療経済学的にもバランスのとれた予防・治療法を選択していく必要があります.本書が高齢者診療に携わる先生方の診療の質の維持・改善に役立つことを願っています.
最後に本書は,日本老年医学会の活動の一部として雑誌編集委員会が担当して編集したものであることを記し,関係各位に謝意を表したいと思います.
2010年6月
日本老年医学会雑誌編集委員長
下門顕太郎
今回の特集では,「生活習慣病−新薬と高齢者医療」,「脳卒中治療ガイドラインに基づく高齢者診療」を取り上げました.新しいエビデンスの集積,生活習慣や医療水準の変化,新たな医薬品や医療技術の開発により,高齢者の生活習慣病に対する考え方は急速に変化しています.
このような早い流れの中で,日常診療においては個々の患者さんのQOLを改善し,健康寿命を延ばす,それでいて医療経済学的にもバランスのとれた予防・治療法を選択していく必要があります.本書が高齢者診療に携わる先生方の診療の質の維持・改善に役立つことを願っています.
最後に本書は,日本老年医学会の活動の一部として雑誌編集委員会が担当して編集したものであることを記し,関係各位に謝意を表したいと思います.
2010年6月
日本老年医学会雑誌編集委員長
下門顕太郎
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目次
I 特集1 生活習慣病−新薬と高齢者医療(企画:下門顕太郎)
高血圧:レニン阻害薬 楽木宏実
RA系とアリスキレン
レニン活性の加齢に伴う変化
RA系阻害薬におけるレニン阻害薬の臨床的位置づけ
高齢者高血圧におけるアリスキレンの降圧効果
AGELESSとアリスキレンへの期待
アリスキレンの臓器保護作用
糖尿病:DPP-4阻害薬 中野博司,大庭建三
インクレチンの概念
DPP-4阻害薬の特徴
高齢者での有用性と留意点
脂質異常症:コレステロールトランスポーター阻害薬 江頭正人
高齢者における高LDLコレステロール血症の臨床的意義
小腸コレステロールトランスポーターNPC1L1とエゼチミブ
後期高齢者におけるエビデンスの構築とEWTOPIA75試験
I 特集2 脳卒中治療ガイドラインに基づく高齢者診療(企画:岩本俊彦)
脳卒中一般の危険因子の管理 岩本俊彦
高血圧
糖尿病
脂質異常症
心房細動
慢性腎臓病
脳梗塞急性期の抗血栓療法 赫 洋美,内山真一郎
急性期抗血小板療法
オザグレルナトリウム
アスピリン
血栓溶解療法
急性期抗凝固療法
TIAの急性期治療
ABCD2スコア
TIAに対する早期対応の効果
抗血小板薬の二剤併用療法
無症候性脳梗塞の管理 新堂晃大,冨本秀和
無症候性脳梗塞の頻度,経過と危険因子
無症候性脳梗塞の頻度
無症候性脳梗塞の経過
無症候性脳梗塞の危険因子
無症候性脳梗塞の管理
頸動脈病変とステント留置術(CAS) 鈴木謙介,兵頭明夫
内頸動脈狭窄症の治療適応
内頸動脈狭窄症の診断・内科的治療
内頸動脈内膜剥離術(CEA)
内頸動脈ステント留置術(CAS)
歴史
適応と方法
展望
II 総説
骨粗鬆症治療の新たな展開−遺伝子情報を活用した骨粗鬆症診療システム− 森 聖二郎
オーダーメイド医療実現化プロジェクト
ゲノムワイド相関解析
BMDを連続する量的形質としたQTL解析
TGF-β1遺伝子多型と骨粗鬆症
エントリー症例の初期データ
ビタミンDとの関わり
今後の展望
高齢者の間質性肺疾患 桑野和善ほか
間質性肺疾患の概念
間質性肺疾患の診断
病歴
身体所見
呼吸機能検査
血液検査
胸部X線写真
高分解能CT
気管支鏡
間質性肺疾患各論
特発性間質性肺炎(IIPs)
薬剤性肺炎
膠原病合併間質性肺炎
過敏性肺炎
放射線肺臓炎
喫煙関連間質性肺炎
喫煙者における肺気腫と間質性肺炎の合併
間質性肺炎と酸化ストレス
Werner症候群における軟部組織石灰化について 本城 聡,横手幸太郎
異所性石灰化と臨床症状との関係について
異所性石灰化のメカニズムについて
高齢者に有益な漢方治療 岩崎 鋼,加藤士郎
高齢者医療における漢方
誤嚥性肺炎に対する漢方治療
臨床的エビデンスと薬理機序
伝統医学的背景と応用
認知症に対する漢方療法
臨床的エビデンスと薬理機序
伝統医学的背景と応用
老年期症候群と漢方
養生
老年医学におけるsarcopenia&frailtyの重要性 葛谷雅文
sarcopeniaとは
sarcopeniaのメカニズム
問題点
frailtyとは
frailtyの原因とsarcopeniaとの関連
骨粗鬆症の医療経済学−骨粗鬆症の疾病負担研究 森脇健介,鎌江伊三夫
骨粗鬆症の疾病負担
疫学
骨粗鬆症の経済的負担
骨粗鬆症患者のQOL
骨粗鬆症治療の経済評価
日本における研究例
複数の治療法の比較例
アルツハイマー病の根本治療とJ-ADNI 岩坪 威
アルツハイマー病とβアミロイド
アルツハイマー病根本治療法としての抗βアミロイド療法
アルツハイマー病根本治療法開発の問題点
Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)
高齢者の冠動脈疾患治療の現状 原田和昌
高齢者の冠動脈疾患の特徴
高齢者の冠動脈疾患治療の原則
狭心症の薬物治療
狭心症のPCI治療
狭心症に対する冠動脈バイパス術
急性冠症候群のPCI治療
急性冠症候群の初期治療の実際
急性冠症候群の合併症の治療
冠動脈疾患の二次予防とリモデリング予防の薬物治療
心臓リハビリテーション
動脈硬化性プラーク形成のメカニズムと冠危険因子の管理
III 老年医学の展望
老化因子制御による心血管治療の開発 南野 徹
テロメア依存性細胞老化と血管機能障害
ストレス誘導性細胞老化と動脈硬化
早老症候群と心血管老化
Huchinson-Gilford早老症候群(HGPS)
Werner症候群
細胞老化と心不全
神経筋接合部の異常と筋萎縮 重本和宏ほか
高齢社会と重症筋無力症
MuSK抗体の発見と病原性の証明
MuSKとは何か?
MuSK抗体陽性MG患者の臨床的特徴
MuSK抗体陽性MGの疫学
MuSK抗体陽性MGの臨床症状と診断
MuSK抗体陽性MGの治療
MuSK抗体とAChR抗体の両陽性MGについて
Seronegative(AChR抗体,MuSK抗体陰性)のMGとは?
MuSK抗体によるMG発症の機序
MGからサルコペニア研究への展開
幹細胞における老化とがんの制御機構 仁田英里子,須田年生
幹細胞の老化−造血幹細胞におけるモデル
老化を制御する因子1 −DNA損傷
老化を制御する因子2 −活性酸素種ROS
老化を制御する因子3 −テロメア短縮
幹細胞の老化とがん抑制機構の関係
静止期にいることのパラドックスとがん幹細胞獲得の仮説
cAMP系と長期記憶の分子機構 遠藤昌吾
記憶の分類
陳述記憶と非陳述記憶
短期記憶と長期記憶
健忘症と陳述記憶
小脳と非陳述記憶
神経可塑性の分子機構
長期記憶の分子機構
ICERと長期記憶
ICERとキンドリング
ICER改変マウスと遺伝子カスケード
肺の再生 久保裕司
肺胞の構造
肺の発生
肺の幹細胞
クララ細胞
肺胞II型上皮細胞
bronchioalveolar stem cells(BASCs)
肺組織内間葉系幹細胞
SP細胞
骨髄由来幹細胞
肺の成長(再成長)
肺の再生医療の展望
米国における高齢者医療の現場から 大蔵 暢
米国社会の高齢化
米国の高齢者医療の歴史
医療政策による厳格な機能分化
老年医学と包括的チーム医療
わが国の高齢者医療の問題点
高血圧:レニン阻害薬 楽木宏実
RA系とアリスキレン
レニン活性の加齢に伴う変化
RA系阻害薬におけるレニン阻害薬の臨床的位置づけ
高齢者高血圧におけるアリスキレンの降圧効果
AGELESSとアリスキレンへの期待
アリスキレンの臓器保護作用
糖尿病:DPP-4阻害薬 中野博司,大庭建三
インクレチンの概念
DPP-4阻害薬の特徴
高齢者での有用性と留意点
脂質異常症:コレステロールトランスポーター阻害薬 江頭正人
高齢者における高LDLコレステロール血症の臨床的意義
小腸コレステロールトランスポーターNPC1L1とエゼチミブ
後期高齢者におけるエビデンスの構築とEWTOPIA75試験
I 特集2 脳卒中治療ガイドラインに基づく高齢者診療(企画:岩本俊彦)
脳卒中一般の危険因子の管理 岩本俊彦
高血圧
糖尿病
脂質異常症
心房細動
慢性腎臓病
脳梗塞急性期の抗血栓療法 赫 洋美,内山真一郎
急性期抗血小板療法
オザグレルナトリウム
アスピリン
血栓溶解療法
急性期抗凝固療法
TIAの急性期治療
ABCD2スコア
TIAに対する早期対応の効果
抗血小板薬の二剤併用療法
無症候性脳梗塞の管理 新堂晃大,冨本秀和
無症候性脳梗塞の頻度,経過と危険因子
無症候性脳梗塞の頻度
無症候性脳梗塞の経過
無症候性脳梗塞の危険因子
無症候性脳梗塞の管理
頸動脈病変とステント留置術(CAS) 鈴木謙介,兵頭明夫
内頸動脈狭窄症の治療適応
内頸動脈狭窄症の診断・内科的治療
内頸動脈内膜剥離術(CEA)
内頸動脈ステント留置術(CAS)
歴史
適応と方法
展望
II 総説
骨粗鬆症治療の新たな展開−遺伝子情報を活用した骨粗鬆症診療システム− 森 聖二郎
オーダーメイド医療実現化プロジェクト
ゲノムワイド相関解析
BMDを連続する量的形質としたQTL解析
TGF-β1遺伝子多型と骨粗鬆症
エントリー症例の初期データ
ビタミンDとの関わり
今後の展望
高齢者の間質性肺疾患 桑野和善ほか
間質性肺疾患の概念
間質性肺疾患の診断
病歴
身体所見
呼吸機能検査
血液検査
胸部X線写真
高分解能CT
気管支鏡
間質性肺疾患各論
特発性間質性肺炎(IIPs)
薬剤性肺炎
膠原病合併間質性肺炎
過敏性肺炎
放射線肺臓炎
喫煙関連間質性肺炎
喫煙者における肺気腫と間質性肺炎の合併
間質性肺炎と酸化ストレス
Werner症候群における軟部組織石灰化について 本城 聡,横手幸太郎
異所性石灰化と臨床症状との関係について
異所性石灰化のメカニズムについて
高齢者に有益な漢方治療 岩崎 鋼,加藤士郎
高齢者医療における漢方
誤嚥性肺炎に対する漢方治療
臨床的エビデンスと薬理機序
伝統医学的背景と応用
認知症に対する漢方療法
臨床的エビデンスと薬理機序
伝統医学的背景と応用
老年期症候群と漢方
養生
老年医学におけるsarcopenia&frailtyの重要性 葛谷雅文
sarcopeniaとは
sarcopeniaのメカニズム
問題点
frailtyとは
frailtyの原因とsarcopeniaとの関連
骨粗鬆症の医療経済学−骨粗鬆症の疾病負担研究 森脇健介,鎌江伊三夫
骨粗鬆症の疾病負担
疫学
骨粗鬆症の経済的負担
骨粗鬆症患者のQOL
骨粗鬆症治療の経済評価
日本における研究例
複数の治療法の比較例
アルツハイマー病の根本治療とJ-ADNI 岩坪 威
アルツハイマー病とβアミロイド
アルツハイマー病根本治療法としての抗βアミロイド療法
アルツハイマー病根本治療法開発の問題点
Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)
高齢者の冠動脈疾患治療の現状 原田和昌
高齢者の冠動脈疾患の特徴
高齢者の冠動脈疾患治療の原則
狭心症の薬物治療
狭心症のPCI治療
狭心症に対する冠動脈バイパス術
急性冠症候群のPCI治療
急性冠症候群の初期治療の実際
急性冠症候群の合併症の治療
冠動脈疾患の二次予防とリモデリング予防の薬物治療
心臓リハビリテーション
動脈硬化性プラーク形成のメカニズムと冠危険因子の管理
III 老年医学の展望
老化因子制御による心血管治療の開発 南野 徹
テロメア依存性細胞老化と血管機能障害
ストレス誘導性細胞老化と動脈硬化
早老症候群と心血管老化
Huchinson-Gilford早老症候群(HGPS)
Werner症候群
細胞老化と心不全
神経筋接合部の異常と筋萎縮 重本和宏ほか
高齢社会と重症筋無力症
MuSK抗体の発見と病原性の証明
MuSKとは何か?
MuSK抗体陽性MG患者の臨床的特徴
MuSK抗体陽性MGの疫学
MuSK抗体陽性MGの臨床症状と診断
MuSK抗体陽性MGの治療
MuSK抗体とAChR抗体の両陽性MGについて
Seronegative(AChR抗体,MuSK抗体陰性)のMGとは?
MuSK抗体によるMG発症の機序
MGからサルコペニア研究への展開
幹細胞における老化とがんの制御機構 仁田英里子,須田年生
幹細胞の老化−造血幹細胞におけるモデル
老化を制御する因子1 −DNA損傷
老化を制御する因子2 −活性酸素種ROS
老化を制御する因子3 −テロメア短縮
幹細胞の老化とがん抑制機構の関係
静止期にいることのパラドックスとがん幹細胞獲得の仮説
cAMP系と長期記憶の分子機構 遠藤昌吾
記憶の分類
陳述記憶と非陳述記憶
短期記憶と長期記憶
健忘症と陳述記憶
小脳と非陳述記憶
神経可塑性の分子機構
長期記憶の分子機構
ICERと長期記憶
ICERとキンドリング
ICER改変マウスと遺伝子カスケード
肺の再生 久保裕司
肺胞の構造
肺の発生
肺の幹細胞
クララ細胞
肺胞II型上皮細胞
bronchioalveolar stem cells(BASCs)
肺組織内間葉系幹細胞
SP細胞
骨髄由来幹細胞
肺の成長(再成長)
肺の再生医療の展望
米国における高齢者医療の現場から 大蔵 暢
米国社会の高齢化
米国の高齢者医療の歴史
医療政策による厳格な機能分化
老年医学と包括的チーム医療
わが国の高齢者医療の問題点
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老年医学とその関連領域の最新情報を盛り込んだyear book
日本老年医学会雑誌第46巻(2009年)に掲載された,老年医学に直結する話題「総説」と,老年医学の周辺領域の話題「老年医学の展望」をupdateしてまとめた。また,「生活習慣病−新薬と高齢者医療」,「脳卒中治療ガイドラインに基づく高齢者診療」の2本(8項目)の特集で構成。
特集の章は2色刷りとし,「総説」,「老年医学の展望」と区別した。
巻末に「専門医継続研修のための問題」を掲載し,一定の正解率に達した解答者には「専門医更新の単位」として5単位が与えられる。