改訂版 健康長寿診療ハンドブック

実地医家のための老年医学のエッセンス

第2版

改訂版 健康長寿診療ハンドブック

■編集 日本老年医学会

定価 1,100円(税込) (本体1,000円+税)
  • B5判  224ページ  2色(一部4色),イラスト50点
  • 2019年6月17日刊行
  • ISBN978-4-7583-0495-5

高齢者の診療に携わる医師のためのハンドブック

現行の医療・介護・福祉制度のなかで,より良い高齢者医療を提供するために,全ての医師が理解すべき高齢者医療の必須項目を解説。
実地医家が,日常診療で対象としている高齢者について,特に老年医学的アプローチが必要な対象をスクリーニングし,担当医師が介入する病態,専門医への紹介が必要な病態,他職種との連携が必要な病態を大きく分類し,さらに,老年医学的アプローチによる診療を行うためのミニマムエッセンスを提供することを目指した実践的ハンドブック。


序文

『改訂版 健康長寿診療ハンドブック』の発刊に寄せて

 『健康長寿診療ハンドブック-実地医家のための老年医学のエッセンス』の初版を発行したのは2011年6月で,今回は8年ぶりの改訂である。初版は,2010年に当時の大内尉義理事長の発案で立ち上げられた日本老年医学会あり方ワーキンググループが中心になって編集したが,その代表を務めた者として今回の改訂はことさらに感慨深い。ワーキンググループとして,わが国における高齢者医療の発展に貢献すべく種々の活動を進める中で,老年医学の研究や臨床の方向性について関係者の間でも十分な共通認識が形成されていないこと,非専門の先生方の多くに老年医学の専門性を認識頂けていないことを痛感した。本ハンドブックは,単に高齢者を医療者の専門性に基づいて診療することにとどまらず,老年医学が目指す高齢者医療とは何かを明確に示し,ひいては国民の健康長寿に貢献することを目指した。その時点での高齢者医療のエッセンスとして,実践的で質の高いハンドブックになり,5万6千部余りを様々な方々にお届けできた。
 この8年余りの間に,サルコペニアやフレイルといった老年医学の特殊性を示す病態が多くの研究者,実地医家,さらには行政の方々にも注目されるようになった。認知症対策の重要性の認識の拡大,地域包括ケア体制構築の推進なども大きく進んでいる。日本老年医学会と連携して,高齢者医療に対応しようとする学術団体も多数現れている。日本糖尿病学会との合同委員会が設置され,高齢者糖尿病診療ガイドライン発行などにつながったことや,日本在宅医学会と合同でのガイドライン発行などはその例である。日本老年医学会独自の活動としても,高血圧,脂質異常症,肥満症に関する診療ガイドライン発行,ポリファーマシー対策を見据えた高齢者の安全な薬物療法ガイドライン発行,エンドオブライフに関する各種の指針の発表や提言,などを行ってきた。今回の『改訂版 健康長寿診療ハンドブック』はその集大成でもある。
 高齢者では複数の疾病を抱える人が著しく増加すること,日常生活に関連した機能が低下するため,個々の疾病に対する診断と治療とともに,全身の臓器機能,ADLに代表される身体機能,心のケア,さらに社会環境の整備にまで及ぶ広い視点が必要であることなど,理解しておくべき事項は多い。この8年間の高齢者医療の変容と,医学・医療・介護の進歩,我々の種々の活動を反映して,本改訂版は初版と比較しても格段の充実がなされている。比較的若手の学会員に企画編集をお願いし,葛谷雅文理事に取りまとめて頂いたことで,新しい現場の視点が多数盛り込まれたものと衷心より感謝申し上げる。多くの執筆委員,査読委員の皆様にも深謝申し上げる。
 この8年間で,わが国の高齢化率は約23%から28%にまで上昇した。いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて,本ハンドブックの果たす役割は極めて大きいと考える。本書がわが国の高齢者医療のさらなるレベルアップに役立つことを祈念している。

令和元年5月吉日
一般社団法人 日本老年医学会
理事長 楽木宏実
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目次

第1章 高齢者の診かた
 1.1 高齢者の問診における心構え
 1.2 問診と診療録の記載
 1.3 身体所見の取り方
 1.4 老年症候群

第2章 高齢者の総合機能評価
 2.1  患者記載による生活機能低下のスクリーニング
 2.2  診察時の生活機能低下のスクリーニング
 2.3  スクリーニング後の詳細な総合
 機能評価
 【コラム】総合評価加算

第3章 認知行動障害と気分障害
 3.1  もの忘れなどを主訴にして来院した患者の鑑別診断
 3.2  もの忘れ以外に、認知症、せん妄、うつの鑑別が必要な状況
 3.3  認知症
 3.4  認知症の早期発見
 3.5  治療方針と専門医紹介
 【コラム】 認知機能検査の診療報酬
 【コラム】 総合機能評価を生かした認知症ケアチームの活動
 3.6  うつ
 3.7  せん妄

第4章 歩行障害と動作緩慢
 4.1  歩行障害と動作緩慢の評価
 4.2  歩行障害と動作緩慢の原因と対策

第5章 転倒と骨折
 5.1  転倒リスクの評価
 5.2  原因に基づく転倒予防の実際
 5.3  骨粗鬆症の診断と骨折リスクの評価
 5.4  骨粗鬆症の治療と骨折予防
 5.5  主要な骨折への対応

第6章 栄養
 6.1  低栄養とは
 6.2  低栄養のスクリーニングと診断
 6.3  栄養アセスメント
 6.4  低栄養状態の高齢者の栄養管理

第7章 口腔機能・嚥下機能障害
 7.1  口腔機能と口腔ケア、歯科との連携
 7.2  嚥下機能障害の評価と対策

第8章 排尿・排便の障害
 8.1  排尿障害(頻尿・尿失禁)
 8.2  排便障害

第9章 サルコペニア
 9.1  サルコペニアの定義と診断
 9.2  サルコペニアの対策

第10章 フレイルと介護予防
 10.1  フレイルの定義と診断・介入
 10.2  介護予防とは何か:疾病予防とは異なる概念
 10.3  介護予防の実際

第11章 睡眠障害、慢性疼痛、褥瘡
 11.1  睡眠障害の原因と対策、注意点
 11.2  慢性疼痛の原因と対策
 11.3  褥瘡の発生要因および予防法
 11.4  褥瘡の評価・治療

第12章 高齢者で重視すべき慢性疾患管理の要点
 12.1  高齢者の高血圧
 12.2  高齢者の糖尿病
 12.3  高齢者の脂質異常
 12.4  高齢者の肥満
 12.5  高齢者の慢性腎臓病
 12.6  心房細動
 12.7  慢性心不全
 12.8  慢性閉塞性肺疾患

第13章 高齢者の急性疾患
 13.1  高齢者の急性疾患対応のポイント

第14章 高齢者の感染症
 14.1  高齢者感染症の特徴
 14.2  高齢者の肺炎
 14.3  高齢者の尿路感染症
 14.4  ワクチン
 14.5  施設での感染防御対策、結核対策

第15章 高齢者の悪性腫瘍
 15.1  悪性腫瘍の診断と予後推定
 15.2  悪性腫瘍の治療戦略

第16章 高齢者の侵襲的検査と治療
 16.1  侵襲的検査における注意点
 16.2  尿道留置カテーテルの適応と管理
 16.3  高齢者における手術の適否
 16.4  高齢者の外科手術における患者説明
 16.5  手術と麻酔のリスク
 16.6  高齢者手術の術前評価に必要な情報
 16.7  身体抑制・薬物による鎮静

第17章 高齢者の薬物療法
 17.1  薬物動態と薬力学からのアプローチ
 17.2  薬物有害事象とポリファーマシーを回避するための注意点
 17.3  高齢者の服薬管理(薬剤師との連携)
 【コラム】 薬剤総合評価調整加算の運用

第18章 リハビリテーション
 18.1  高齢者のリハビリテーションでの留意点
 18.2  急性期および回復期のリハビリテーション
 18.3  地域でのリハビリテーション

第19章 多職種による地域包括ケア
 19.1  高齢者の医療・介護にかかわる職種
 19.2  病院での多職種連携
 19.3  地域包括ケアでの多職種連携
 19.4  病診・診診連携
 【コラム】 病診連携で運用される診療報酬制度
 19.5  高齢者虐待への対応
 【コラム】 認知症サポート医、認知症初期集中支援チームの活動

第20章 高齢者の在宅医療
 20.1  在宅医療のシステム
 20.2  在宅医療の実践
 20.3  高齢者施設における医療

第21章 エンドオブライフ・ケア
 21.1  人生の最終段階の概念と日本老年医学会の「立場表明」
 21.2  エンドオブライフ・ケアにおける治療方針の決定
 21.3  アドバンス・ケア・プランニング
 21.4  緩和ケアの適応と手法
 21.5  看取り

第22章 高齢者医療に関係する制度の概要
 22.1  介護保険の仕組みと申請法
 22.2  介護保険主治医意見書記載における注意点
 22.3  成年後見制度
 22.4  高齢者の運転免許

巻末資料
 1 スクリーニングや評価に用いるチェックシート
 2 介護保険申請のための主治医意見書
 3  高齢者の処方適正化スクリーニングツール
 4  人工的水分・栄養補給の導入に関する意思決定プロセスのフローチャート
 5  運転免許更新の際の認知症の診断書(公安委員会の見本)
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