NS NOW No.12
初歩から学ぶ脳血管内手術
エキスパートからのアドバイス

定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
- A4判 218ページ 2色(一部カラー),イラスト60点,写真100点
- 2010年10月15日刊行
- ISBN978-4-7583-0919-6
序文
NS NOW No.12「初歩から学ぶ脳血管内手術」は,脳血管内手術について,解剖や画像,機材,薬剤などその土台とも言うべき基本領域と,さまざまな知識やノウハウを駆使して各疾患ごとの手技をまとめた応用編からなる二部構成となっています。
2010年は,本邦における血管内治療が更に進化を遂げる年ということができるかもしれません。従来の血管内治療は主として動脈瘤や硬膜動静脈瘻の塞栓術に代表される病的血管の閉塞が主たる治療手技でした。頚動脈ステントの認可は,閉塞性病変へのアプローチの広がりを期待させる一歩でしたが,これからは,血栓除去デバイスや頭蓋内ステントが,ようやく本邦でも臨床応用されようとしています。このトレンドは,単に新しい器具が使えるようになったという次元のものではありません。日本の脳神経外科は,基本診療科としての幅の広さと,専門領域の外科治療をきわめるという「二面性」を診療科の特色として打ち出していますが,脳血管内手術もこれからは高度な専門性を求められる領域と,一般の脳梗塞急性期治療の両者に関与することを意味しています。このように脳血管内手術が新しい局面を迎えつつある現時点で,適応,周術期管理,基本手技などをまとめ直す意義は大変大きいものがあると思います。
本書は,脳血管内手術を専門とはしていない編者が,いわば外から脳血管内手術を俯瞰して構成を立案しました。これからの脳血管内手術には,先に述べたような背景から一般脳神経外科医でも少なくとも理解し,可能であれば遂行が求められていく基本的な手技があるはずで,本書はその理論的背景と一般的な周術期管理,安全確実な治療手技を念頭においた記述をそれぞれの分野におけるエキスパートの先生方にお願いしました。門外漢が編集を担当しましたので,編者が初稿をみて理解しにくいと思われる箇所は,図や写真を駆使した視覚に訴える記述としていただくよう注文をつけさせていただいております。本書が,これから脳血管内手術を学ぼうとする若手はもとより,ひととおりの脳血管外科のことはわかっているとお考えのベテランの方々にも役立つ,実用的な脳血管内手術の入門書となっているとすれば,編者としてこれにすぐる喜びはありません。
2010年9月
塩川芳昭
2010年は,本邦における血管内治療が更に進化を遂げる年ということができるかもしれません。従来の血管内治療は主として動脈瘤や硬膜動静脈瘻の塞栓術に代表される病的血管の閉塞が主たる治療手技でした。頚動脈ステントの認可は,閉塞性病変へのアプローチの広がりを期待させる一歩でしたが,これからは,血栓除去デバイスや頭蓋内ステントが,ようやく本邦でも臨床応用されようとしています。このトレンドは,単に新しい器具が使えるようになったという次元のものではありません。日本の脳神経外科は,基本診療科としての幅の広さと,専門領域の外科治療をきわめるという「二面性」を診療科の特色として打ち出していますが,脳血管内手術もこれからは高度な専門性を求められる領域と,一般の脳梗塞急性期治療の両者に関与することを意味しています。このように脳血管内手術が新しい局面を迎えつつある現時点で,適応,周術期管理,基本手技などをまとめ直す意義は大変大きいものがあると思います。
本書は,脳血管内手術を専門とはしていない編者が,いわば外から脳血管内手術を俯瞰して構成を立案しました。これからの脳血管内手術には,先に述べたような背景から一般脳神経外科医でも少なくとも理解し,可能であれば遂行が求められていく基本的な手技があるはずで,本書はその理論的背景と一般的な周術期管理,安全確実な治療手技を念頭においた記述をそれぞれの分野におけるエキスパートの先生方にお願いしました。門外漢が編集を担当しましたので,編者が初稿をみて理解しにくいと思われる箇所は,図や写真を駆使した視覚に訴える記述としていただくよう注文をつけさせていただいております。本書が,これから脳血管内手術を学ぼうとする若手はもとより,ひととおりの脳血管外科のことはわかっているとお考えのベテランの方々にも役立つ,実用的な脳血管内手術の入門書となっているとすれば,編者としてこれにすぐる喜びはありません。
2010年9月
塩川芳昭
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目次
I セットアップのすべて
治療に必要な脳血管解剖 田中美千裕
■12脳神経からみる動脈系機能解剖
第I神経:嗅神経(olfactory N.)
第II神経:視神経(optic N.)
第III神経:動眼神経(oculomotor N.)
第IV神経:滑車神経(trochlear N.)
第V神経:三叉神経(trigeminal N.)
第VI神経:外転神経(abducence N.)
第VII神経:顔面神経(facial N.)
第VIII神経:聴神経(cochlear N.)
第IX神経:舌咽神経(glossopharyngeal N.)
第X神経:迷走神経(vagus N.)
第XI神経:副神経(accessory N.)
第XII神経:舌下神経(hypogrossal N.)
治療に必要な画像診断 小林英一
■アウトライン
■脳血管内治療に必要な画像情報
■脳動脈瘤コイル塞栓術
頭部CTとMRI
動脈瘤形態の評価
瘤内塞栓術に向かない動脈瘤
ガイディングカテーテルの留置
ワーキングアングル
マイクロカテーテルの誘導
塞栓術後のフォローアップ
■頚動脈ステント留置術(CAS)
スクリーニング検査
狭窄率
アクセスルート
経頭蓋ドップラー超音波検査(TCD)
プラーク画像
脳血流検査
拡散強調画像(DWI)
■脳動静脈奇形(AVM)および硬膜動静脈瘻(d-AVF)
手術室内レイアウトの工夫 伊藤 靖
■アウトライン
■手術室内レイアウトの工夫
血管撮影室の設置場所
血管撮影室の広さ
血管撮影装置の設置方向
医療ガス配管
インジェクターの設置位置
心電図等モニターの設置位置
血管撮影室の照明
IVR用テーブル
音楽,壁紙
■まとめ
血管撮影装置に求められる条件 野中 雅
■アウトライン
■DSA装置に求められる基本性能
高画質の透視と撮影
バイプレーン(biplane)システム
Road map機能
モニター画面
■脳血管内治療に有用なアプリケ−ション
3D-RA(three dimentional rotation angiography)
3D-road map
Cone-beam CT機能
親カテーテルの選択と穿刺,留置,止血 大石英則
■穿刺部位とシースの選択
穿刺部位
■穿刺とシースの挿入
穿刺
シースの留置
シース抜去後の止血法
■ガイディングカテーテルの選択と留置
ガイディングカテーテルとは
ガイディングカテーテルの選択
■ガイディングカテーテル挿入
ガイディングカテーテルの挿入法:同軸法
ガイディングカテーテルの挿入法:交換法
周術期薬物療法の実際 藤中俊之
■アウトライン
■術前検査
■術前準備
抗血小板薬の開始
輸液
前投薬
抗血小板療法
■術中管理
術中抗血栓療法
■術後管理
術後抗血栓療法
血管内手術トレーニングの方法 山根文孝,石原正一郎
■アウトライン
■脳血管内手術の現状について
■日本脳血管内治療学会専門医制度
■各施設におけるトレーニングの現状
各大学のトレーニングコース
当院でのトレーニングコース
■各種シミュレータを用いた脳血管内治療トレーニングについて
主にシリコンモデルで構築されているもの
血管インターベンション・シミュレーショントレーナー:VIST
脳血管内手術トレーニングの実際
■各種の新しいデバイスにおけるトレーニングプログラムについて
インフォームドコンセント 桑山直也
■インフォームドコンセントの概念
■インフォームドコンセントの前提
■インフォームドコンセントの対象
■インフォームドコンセントの内容
■インフォームドコンセントを実行するうえで必要な情報
II 脳血管内手術の実際
脳動脈瘤−コイル選択の基本と手技の実際 松丸祐司
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
■おわりに
脳動脈瘤−adjunctive technique 佐藤 徹
■本術式の特徴
■手術手技
Balloon assist technique
Double catheter technique
Stent assist technique
■最後に
脳動静脈奇形 −血管内治療の基本 村尾健一,中澤和智
■本術式の特徴
■脳動静脈奇形の自然歴(出血率)
■集学的治療(multimodality treatment)とそのリスク
■集学的治療における塞栓術の適応
■術前準備
塞栓術前および術中画像診断
塞栓術に使用する塞栓物質
塞栓術の目的
塞栓術の実際
■術後管理
■術後合併症
脳動静脈奇形−最新の塞栓術の実際:Onyx 新見康成
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
Onyxの使用法
術後管理とフォローアップ
硬膜動静脈瘻 佐藤浩一
■本術式の特徴
■硬膜動静脈瘻とは
治療(経静脈的塞栓術)とstage分類の関係
■手術手技
海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の経静脈的塞栓術
シャントポイントの閉塞
顔面静脈からのアプローチ
横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻の経静脈的塞栓術
頚動脈狭窄−CAS基本テクニック 鈴木謙介,兵頭明夫
■本術式の特徴
■手術手技:術前準備
■手術手技:フィルタープロテクションによるCAS
手術手技
術後管理
■新しいフィルタープロテクションデバイスとステント
FilterWire EZ(r)
頚動脈狭窄−ハイリスク症例,合併症回避 卯田 健,竹本光一郎
■本術式の特徴
■手術手技
アクセス困難またはハイリスク例
Lesion cross困難またはハイリスク症例
血管拡張困難またはハイリスク例
血栓溶解 松本博之,寺田友昭
■本術式の特徴
■再開通療法の現状と適応
国外の現状
わが国の現状
血栓再開通療法の適応
■手術手技
局所線溶療法
血栓吸引
血栓回収デバイス(Merci retriever)
■今後の展望と課題
頭蓋内動脈狭窄症 中原一郎
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後管理
■合併症
腫瘍 徳永浩司
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
使用器具
手術手技:基礎編 円蓋部髄膜腫栄養血管塞栓術
手術手技:応用編 比較的難度の高い栄養血管塞栓術
眼動脈からの栄養血管の塞栓術
髄膜腫以外の腫瘍に対する塞栓術
術後管理
治療に必要な脳血管解剖 田中美千裕
■12脳神経からみる動脈系機能解剖
第I神経:嗅神経(olfactory N.)
第II神経:視神経(optic N.)
第III神経:動眼神経(oculomotor N.)
第IV神経:滑車神経(trochlear N.)
第V神経:三叉神経(trigeminal N.)
第VI神経:外転神経(abducence N.)
第VII神経:顔面神経(facial N.)
第VIII神経:聴神経(cochlear N.)
第IX神経:舌咽神経(glossopharyngeal N.)
第X神経:迷走神経(vagus N.)
第XI神経:副神経(accessory N.)
第XII神経:舌下神経(hypogrossal N.)
治療に必要な画像診断 小林英一
■アウトライン
■脳血管内治療に必要な画像情報
■脳動脈瘤コイル塞栓術
頭部CTとMRI
動脈瘤形態の評価
瘤内塞栓術に向かない動脈瘤
ガイディングカテーテルの留置
ワーキングアングル
マイクロカテーテルの誘導
塞栓術後のフォローアップ
■頚動脈ステント留置術(CAS)
スクリーニング検査
狭窄率
アクセスルート
経頭蓋ドップラー超音波検査(TCD)
プラーク画像
脳血流検査
拡散強調画像(DWI)
■脳動静脈奇形(AVM)および硬膜動静脈瘻(d-AVF)
手術室内レイアウトの工夫 伊藤 靖
■アウトライン
■手術室内レイアウトの工夫
血管撮影室の設置場所
血管撮影室の広さ
血管撮影装置の設置方向
医療ガス配管
インジェクターの設置位置
心電図等モニターの設置位置
血管撮影室の照明
IVR用テーブル
音楽,壁紙
■まとめ
血管撮影装置に求められる条件 野中 雅
■アウトライン
■DSA装置に求められる基本性能
高画質の透視と撮影
バイプレーン(biplane)システム
Road map機能
モニター画面
■脳血管内治療に有用なアプリケ−ション
3D-RA(three dimentional rotation angiography)
3D-road map
Cone-beam CT機能
親カテーテルの選択と穿刺,留置,止血 大石英則
■穿刺部位とシースの選択
穿刺部位
■穿刺とシースの挿入
穿刺
シースの留置
シース抜去後の止血法
■ガイディングカテーテルの選択と留置
ガイディングカテーテルとは
ガイディングカテーテルの選択
■ガイディングカテーテル挿入
ガイディングカテーテルの挿入法:同軸法
ガイディングカテーテルの挿入法:交換法
周術期薬物療法の実際 藤中俊之
■アウトライン
■術前検査
■術前準備
抗血小板薬の開始
輸液
前投薬
抗血小板療法
■術中管理
術中抗血栓療法
■術後管理
術後抗血栓療法
血管内手術トレーニングの方法 山根文孝,石原正一郎
■アウトライン
■脳血管内手術の現状について
■日本脳血管内治療学会専門医制度
■各施設におけるトレーニングの現状
各大学のトレーニングコース
当院でのトレーニングコース
■各種シミュレータを用いた脳血管内治療トレーニングについて
主にシリコンモデルで構築されているもの
血管インターベンション・シミュレーショントレーナー:VIST
脳血管内手術トレーニングの実際
■各種の新しいデバイスにおけるトレーニングプログラムについて
インフォームドコンセント 桑山直也
■インフォームドコンセントの概念
■インフォームドコンセントの前提
■インフォームドコンセントの対象
■インフォームドコンセントの内容
■インフォームドコンセントを実行するうえで必要な情報
II 脳血管内手術の実際
脳動脈瘤−コイル選択の基本と手技の実際 松丸祐司
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
■おわりに
脳動脈瘤−adjunctive technique 佐藤 徹
■本術式の特徴
■手術手技
Balloon assist technique
Double catheter technique
Stent assist technique
■最後に
脳動静脈奇形 −血管内治療の基本 村尾健一,中澤和智
■本術式の特徴
■脳動静脈奇形の自然歴(出血率)
■集学的治療(multimodality treatment)とそのリスク
■集学的治療における塞栓術の適応
■術前準備
塞栓術前および術中画像診断
塞栓術に使用する塞栓物質
塞栓術の目的
塞栓術の実際
■術後管理
■術後合併症
脳動静脈奇形−最新の塞栓術の実際:Onyx 新見康成
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
Onyxの使用法
術後管理とフォローアップ
硬膜動静脈瘻 佐藤浩一
■本術式の特徴
■硬膜動静脈瘻とは
治療(経静脈的塞栓術)とstage分類の関係
■手術手技
海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の経静脈的塞栓術
シャントポイントの閉塞
顔面静脈からのアプローチ
横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻の経静脈的塞栓術
頚動脈狭窄−CAS基本テクニック 鈴木謙介,兵頭明夫
■本術式の特徴
■手術手技:術前準備
■手術手技:フィルタープロテクションによるCAS
手術手技
術後管理
■新しいフィルタープロテクションデバイスとステント
FilterWire EZ(r)
頚動脈狭窄−ハイリスク症例,合併症回避 卯田 健,竹本光一郎
■本術式の特徴
■手術手技
アクセス困難またはハイリスク例
Lesion cross困難またはハイリスク症例
血管拡張困難またはハイリスク例
血栓溶解 松本博之,寺田友昭
■本術式の特徴
■再開通療法の現状と適応
国外の現状
わが国の現状
血栓再開通療法の適応
■手術手技
局所線溶療法
血栓吸引
血栓回収デバイス(Merci retriever)
■今後の展望と課題
頭蓋内動脈狭窄症 中原一郎
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
手術手技
術後管理
■合併症
腫瘍 徳永浩司
■本術式の特徴
■手術手技
術前準備
使用器具
手術手技:基礎編 円蓋部髄膜腫栄養血管塞栓術
手術手技:応用編 比較的難度の高い栄養血管塞栓術
眼動脈からの栄養血管の塞栓術
髄膜腫以外の腫瘍に対する塞栓術
術後管理
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脳血管内手術の入門書。初歩からしっかり学んでステップアップしよう
今回のNS NOWは「脳血管内手術」をテーマとし,セットアップから治療の実際までをエキスパートたちによって詳述されている。本書では“初歩から学ぶ”ことをコンセプトとして,ビギナーでも理解しやすいように写真や表を多く用いている。また画像の基礎的な読み方やカテーテルの順序,コイルの挿入法などをシェーマを用いて解説。最近認可された器具や最新血栓溶解法,最新のトレーニング方法,最適な手術室レイアウトなども図示されており,脳血管内手術の背景とともに治療の実際もしっかり学ぶことができ,これから脳血管内手術を学ぼうという脳外科医に最適な解説書である。