理学療法マネジメント

膝関節理学療法マネジメント

機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く

膝関節理学療法マネジメント

■監修 石井 慎一郎

■編集 森口 晃一

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  336ページ  2色(一部カラー),イラスト120点,写真400点
  • 2018年2月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1911-9

膝関節の機能障害に対する評価・解釈・治療アプローチを詳細に解説!

機能障害別に評価法・理学療法を解説する『理学療法マネジメント』シリーズ。
本書では膝関節における機能障害として,可動性障害,関節不安定性,筋機能不全などを取り上げ,評価法や評価結果の解釈の仕方,理学療法アプローチについてエビデンスを交えながら詳細に解説。また,中間関節である「膝」は他部位からの影響を受けやすいことから,足部・足関節や股関節,腰部・骨盤帯,胸郭からの影響の評価と理学療法もそれぞれ掲載。
機能障害を的確に見つめ理解することで,限られた期間でも効果的で計画的なリハビリテーションを実施する「理学療法マネジメント能力」を身に付けられる1冊となっている。


序文

監修の序

 理学療法の臨床では,患者の有する機能障害を的確に評価し,原因と結果との因果関係を分析することが重要である。因果関係の分析は,検査結果から自動的に導き出されるものではない。関節可動域検査や筋力検査,動作観察などから導き出されるのは「現象」であり,「なぜ,そのような現象が引き起こされているのか」という答えはわからない。原因と結果の因果関係は,「分析」によって導き出されものである。分析をするためには,推論を形成する必要がある。いくつかの現象を基に,患者の主訴を引き起こす原因として考えられる推論を全て列挙し,その中から,最適解を見つけ出すための検証作業が「分析」,すなわち「評価」である。的確な評価を行うためには,推論の形成が必要不可欠であり,推論が形成できなければ評価を行うことは不可能だと言ってもよい。
 原因が特定できたら,予後予測に基づき現実的な目標設定を行い,理学療法計画を立案する。理学療法の目標設定は現実的,かつ具体的なものでなくてはならない。漠然とした目標設定からは理学療法計画を立案できない。予後を可能な限り正確に予測し,目標を設定することが重要となるが,予後予測は患者の個別性が存在するため一般化しにくい。どうしても理学療法士の経験則による部分が出てくる。ここが経験の浅い若い理学療法士には難しい部分となる。
 最適な理学療法プログラムは,科学的根拠と予後予測を基に立案されるが,理学療法プログラムの実践では,患者の個別性を加味し,最も効果的な介入方法を創造することが重要であり,画一的な理学療法プログラムを漫然と繰り返していても
理学療法の効果は上がらない。ここにも,理学療法士の能力が色濃く反映される。 このような一連の臨床意思決定過程を最適化するためのマネジメント能力は,個々の理学療法士のもつ知識,技術,経験によって左右される。そのため,それらが不足する若い理学療法士は,臨床意思決定が難しく,ともすれば疾患名や主訴だけに基づいた,画一的な理学療法を繰り返すだけの臨床になりがちである。
 本書は,機能障害の評価とその結果の解釈,そして理学療法プログラムの立案に至る意思決定のプロセスを解説した実践書である。国内外で信頼性の高いエビデンスを多く紹介し,経験則だけではなく科学的根拠に基づいて客観的に解説することに重点を置いている。
 また,執筆者は編集の森口氏をはじめ,臨床現場に従事する実務者を中心に構成されている。いずれの執筆者も,現在進行形の実務経験の中から理学療法マネジメントの在り方を模索している臨床家であり,現場で悩む若い理学療法士の目標値となるような中堅の理学療法士が名を連ねている。臨床現場から書き上げられた実践書とよぶに相応しい内容であり,臨床で悩んでいる理学療法士にとって大いに役立つことだろう。

2017年12月
石井慎一郎

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編集の序

 理学療法の位置づけは,術後や疾病から生じる機能障害に対する後療法から,現在では治療医学あるいは予防医学の分野にまで広がってきた。そのため,取り扱う身体の機能も多岐に渡るようになり,機能障害を有する患者への対応に包括的な視野が求められるようになってきている。身体の機能は普遍的ではないため,患者の機能障害への対応は,セラピストの着眼点,判断によって異なるのが現状である。当然,臨床の結果もセラピストによって異なることが多いのは否めない。このように個々のセラピストの知識・経験,ときには感覚によって,提供内容にバリエーションが生じる理学療法を「アート」と捉えることもできる。
 一方で,理学療法士は国家資格を有する医療従事者であり,体系化した理学療法を提供する責務がある。そのベースとなるのが「エビデンス」である。医学あるいは医療に携わるならば,エビデンスを無視することはできない。むしろ,エビデンスを基にどのように展開するかが問われる。エビデンスは理学療法計画のベースであり,生物学的には正しい情報である。しかし,身体運動機能は,さまざまな影響を受け変化をするものであり,生物学的に正しいことでも,決して良好な結果を生むとは限らない。理学療法が,日々刻々と変化する身体の機能を対象とするため,エビデンスに基づくだけでは対応し難い特性をもつゆえの課題である。個々の患者で異なる症状・障害の問題解決を図るには,理学療法の指針となるエビデンスをどのような形で,どのようなタイミングで提供するかが問われる。そして問題解決の具体的方法がアートにあたる。すなわち,理学療法において指針となるエビデンスをベースとして,具体的方法にあたるアートを提供できるかが重要である。臨床現場では,この「アート」の部分と「エビデンス」を融合することの難しさが,現状の運動器疾患・障害に対する理学療法の課題であると感じている。
 本書は,膝関節障害に対してエビデンスを基に,いかに臨床意思決定を行うかをテーマとしてまとめられたものである。執筆者の方達には,膝関節に代表的な障害や,膝関節以外の部位からのアプローチを行う際のポイントや判断,さらには実際の理学療法について詳細に述べて頂いた。また,ケーススタディも含まれており,臨床家にとって至極の一冊であると感じている。このような書籍が完成できたのも,日々の臨床や研究など多忙な中にも関わらず,丁寧にご執筆頂いた各先生方のご尽力があってこそであり,本当に感謝を申し上げたい。また,本書の刊行までに,私の不慣れな編集作業に対して,細かなご助言や様々な調整など多大なるご尽力を頂いたメジカルビュー社の小松朋寛氏にも心から感謝を申し上げたい。

2017年12月
森口晃一
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目次

Ⅰ章膝関節理学療法の概要
 1. 膝関節障害に対する理学療法の考え方  森口晃一
  はじめに
  医学的情報の重要性
  機能解剖
  膝関節の疼痛
  力学的視点
 2. 膝関節の機能解剖とバイオメカニクス  阿南雅也
  はじめに
  学術的背景
  臨床で必要となる機能解剖およびバイオメカニクスの基礎知識
  臨床での活用方法

Ⅱ章リスク管理と病期別マネジメント
 1. 病態を知る  井原秀俊
  はじめに
  変形性膝関節症
  前十字靱帯損傷
  半月損傷
  膝伸展機構障害
  大腿骨内側顆特発性骨壊死
 2. 手術特性を知る  仲村俊介,  秋山武徳
  はじめに
  膝前十字靱帯(ACL)損傷
  変形性膝関節症(膝OA)
 3. 病期別マネジメント  森口晃一
  病態評価と機能評価
  関節における病期別の理学療法の方針
  おわりに

Ⅲ章機能障害別マネジメント
A 局所を中心とした評価と理学療法
  −障害の主要因をどのように評価し,どのような理学療法を行うか−
 1. 膝関節の疼痛  田中 創
  はじめに
  膝関節の疼痛因子の理解(学術的背景)
  評価方法の実際
  解釈
  理学療法
 2. 膝関節の可動性障害  德田一貫
  はじめに
  関節可動域の制限因子
  膝関節の関節可動域制限に対する評価
 3. 膝関節の不安定性  福田 航  
  はじめに
  膝関節の不安定性が疑われる場合の評価
  膝関節不安定性がある場合の理学療法
 4. 膝関節の筋機能不全  深井健司
  はじめに
  膝関節に生じる運動連鎖と筋機能不全
  EMG  および運動学・運動力学の視点からとらえた膝OA  の筋機能特性
  歩行動作におけるIC  の衝撃吸収機構の特性
  術後における膝関節の筋機能不全
  膝関節の筋機能不全に対する評価の実際
  膝関節の筋機能不全に対する理学療法
  
B  他部位からの影響の評価と理学療法
  −影響発生源をどのように特定するか−
 1. 足部・足関節機能からの影響の評価と理学療法  溝田丈士
  はじめに
  足部・足関節機能が膝関節へ及ぼす影響
  臨床判断の実際と評価のポイント
  おわりに
 2. 股関節機能からの影響の評価と理学療法  羽田清貴
  はじめに
  股関節機能と膝関節の関連性
  研究報告の紹介
  評価方法の実際と解釈
  理学療法評価
  理学療法
 3. 腰椎・骨盤帯機能からの影響の評価と理学療法  多々良大輔
  はじめに
  膝痛と腰痛の疫学
  加齢によるアライメント変化
  knee-spine  syndrome
  脊柱・骨盤帯における代償機構
  膝OAと  spinopelvic  parameters
  腰椎・骨盤帯・股関節複合体における筋活動
  各種検査に基づいた問題点の抽出
  徒手療法
  運動療法・セルフトレーニング
  おわりに
 4. 胸郭からの影響の評価と理学療法  城内若菜
  はじめに
  胸郭と膝関節の関係性
  胸郭の解剖と運動
  研究報告の紹介
  胸郭からの影響を確認する評価
  胸郭の影響に対する理学療法
  
Ⅳ章機能障害別ケーススタディ
A  局所を中心とした評価と理学療法
 1. 膝関節の疼痛  田中 創  
  症例紹介
  評価の流れと解釈
  理学療法の内容と結果
  まとめ
 2. 膝関節の可動性障害  德田一貫  
  症例紹介
  初期評価
  評価の解釈
  理学療法
  結果(1カ月後)
  理学療法の結果の解釈
  まとめ
 3. 膝関節の不安定性  福田 航  
  症例紹介
  理学療法評価の流れおよび解釈
  理学療法の内容と結果
  まとめ
 4. 膝関節の筋機能不全  深井健司
  症例紹介
  理学療法評価の流れと解釈
  術後の理学療法
  結果
  まとめ
  
B  他部位からの影響の評価と理学療法
 1. 足部・足関節機能からの影響の評価と理学療法  溝田丈士
  症例紹介
  理学療法評価
  症状の統合・解釈
  理学療法アプローチ
  再評価の焦点
  おわりに
 2. 股関節機能からの影響の評価と理学療法  羽田清貴
  症例紹介
  評価の流れと解釈を提示
  理学療法
  結果
  まとめ
 3. 腰椎・骨盤帯機能からの影響の評価と理学療法  多々良大輔
  症例紹介
  評価の流れと解釈
  各種検査の統合
  理学療法プログラム・セルフエクササイズ
  まとめ
 4. 胸郭からの影響の評価と理学療法  城内若菜
  症例紹介
  評価の流れと解釈
  理学療法の内容と結果
  まとめ
  
Ⅴ章患者教育(セルフマネジメント)
 1. ホームエクササイズ指導のポイントと実際  森口晃一,花岡 樹
  はじめに
  ホームエクササイズの導入
  ホームエクササイズ指導における注意事項
  ホームエクササイズの実際
  おわりに
 2. 多角的要因を踏まえて行動変容を促すポイントと実際  嵩下敏文
  はじめに
  膝関節における力学的ストレス
  原因追及のための考え方と手法
  D-ダイアグラム実践例(両変形性膝関節症)
  脊柱弯曲と生活習慣の関わり
  おわりに
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