症状・症候からアプローチする

救急撮影 コツとポイント

救急撮影 コツとポイント

■監修 中尾 彰太

■編集 坂下 惠治
西池 成章
藤村 一郎

定価 5,720円(税込) (本体5,200円+税)
  • B5変型判  272ページ  2色(一部カラー),写真480点
  • 2019年9月2日刊行
  • ISBN978-4-7583-1940-9

救急現場で求められる撮影のコツとポイントが一目でわかる!

救急現場での画像検査に必要な撮影のコツとポイントが一目でわかる書籍。
①救急現場で求められる適切な画像を撮影・作成するためのコツをまとめた。
②救急画像の撮影例を掲載し,そのポイントを示した。
③各項目は実際の撮影プロセスに即して展開しているため参照しやすい。
④症状・症候別に構成され,外傷と内因性疾患が1冊にまとまっている。
⑤臨床家の経験に基づくコラムから現場を学ぶことができる。


序文

監修の序

 近年,画像診断機器の性能のみならず,診療放射線技師の撮影技術は飛躍的に進歩しており,日常診療において,診断や治療のために有用な画像情報が供給されることが,あたかも当然の状況になりつつある。これらは,科学的根拠に基づいて整理された各専門分野の撮影技術に関する理論や,診療放射線技師がこれまで培ってきた経験をもとに,綿密に立てられた撮影計画に裏付けられたものである。
 しかしながら,救急医療における撮影は,このような定型的なアプローチが時として通用しない世界である。例えば,患者の全身状態がわるく,撮影の迅速性が求められるかもしれない。さらには想定される疾患群の不明確さが加わり,部位別の撮影技術に関する各論的な知識が役に立たないかもしれない。疼痛コントロールがままならず,患者のポジショニングが困難かもしれない。このような過酷な環境下においても,最適な画像を安定して供給するためには,日常診療における撮影とは異なるアプローチが必要である。
 なかでも特に重要なのは,医師をはじめとするスタッフとの間で共通認識を醸成し,チームワークを発揮することである。すなわち,各傷病の急性期における病態を把握したうえで,どのような画像が,どのようなタイミングで必要とされているのか,また安全に撮影を実施するためにはどのように対応すべきかなど,撮影に関する戦略・戦術について,チーム内で情報を共有するとともに,撮影の専門家の立場から,必要があればチームにフィードバックしつつ,迅速かつ的確に撮影を実施する役割を果たすことが求められる。
 以上のことを背景に,今回メジカルビュー社の協力を得て本書が出版されることとなった。本書は救急医療において頻度や重症度・緊急度が高い疾患群に焦点を絞り,症状・症候から想定される疾患群やその病態,さらには病態に合わせた撮影のコツやポイント,代表的な画像所見がシンプルに整理され,診療放射線技師の視点でわかりやすく記載されている。本書を読んでいただき,救急医療における撮影技術にとどまらず,そこで求められる診療放射線技師の役割についてより理解を深め,ここで得た知識を現場で活用いただければ幸いである。

2019年8月
中尾彰太

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編集の序

 わが国における救急放射線技術は,放射線撮影技術の体系化に向けた取り組みとその普及経路について,独自の体制が構築されている。2010(平成22)年に発足した日本救急撮影技師認定機構は,その認定制度と救急撮影ガイドラインの発刊,講習会の開催,調査・研究活動に対する研究助成などにより,救急放射線技術の高度化および技術の普及に尽力してきた。加えて,救急診療に携わる診療放射線技師を中心とするSNSのグループやメーリングリストを構成し,リアルタイムな討論や情報発信により,多くの情報を地域を問わず提供している。また,各地域において発足した救急放射線技術にかかわる研究会は,着実に地域におけるコミュニティーを形成し,目に見える同士として放射線技術者間の強固な連帯を達成している。
 世界的にみて,救急放射線医学領域における広範囲の研究結果とそのデータによる知識の蓄積はあるが,救急領域における純然たる放射線技術の研究成果は乏しい状況である。一方,日本独自の社会的・医学的背景により,ハイブリッドER の普及や高度なCT 画像処理技術の研究と適応の検討など,今日では世界に類をみない日本独自の救急診療のあり方や救急放射線技術にかかわる情報発信がなされている。救急診療における画像情報の共有の在り方についても,本年(2019年)日本医療安全調査機構の再発防止に向けた提言が発刊されている。診療放射線技師による読影の補助推進については,2010(平成22)年の厚生労働省医政局長通知により進められてきているが,診療放射線技師から,依頼医および放射線科医への異常所見の報告については,臨床において十分に達成されておらず,診療放射線技師が異常所見を認識する能力を備え,時間を問わず情報を共有可能とする良好な関係および体制の構築が必要であると提言されている。
 本書は,日本救急撮影技師認定機構による救急撮影認定技師制度が発足して10 周年を迎えようとするこの時期に,これまでの各種の活動により創出した技術や蓄積された知識を臨床の現場で生かすことを目標に,各執筆者の協力のもと発刊に至った実践書である。世界には類をみない,救急撮影認定技師の生み出した救急診療における放射線技術,安全管理にかかわる情報を網羅した情報の集大成ともいえる本書を活用し,急性期の病状により苦痛を抱える多くの方々の診療に役立てていただきたいと願っている。

2019年8月
編者を代表して
坂下惠治
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目次

■1 外傷
胸部外傷  藤村一郎
 致死的胸部外傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   フレイルチェスト/開放性気胸/緊張性気胸/大量血胸/心タンポナーデ
  ・再撮影を防ぐpoint
 血管損傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線,胸部(~骨盤)単純・造影CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   胸部大動脈損傷/鎖骨下動脈損傷/肋間動脈損傷/内胸動脈損傷/肺動静脈損傷/奇静脈損傷/臓器損傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影,胸部(~骨盤)単純CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   肺挫傷/肺裂傷/気管・気管支損傷/鈍的心損傷/横隔膜損傷/食道損傷
 骨折
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影,胸部(~骨盤)単純CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   肋骨(肋軟骨)骨折/胸骨骨折/胸椎骨折/肩甲骨骨折/胸鎖関節脱臼/肩鎖関節脱臼
腹部外傷  宇内大祐
 実質臓器損傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「腹部単純・造影CT(胸腹部単純・造影CT)」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   実質臓器損傷に共通すること/肝損傷/脾損傷/腎損傷/膵損傷
  ・再撮影を防ぐpoint
骨盤外傷  大保 勇
 骨盤骨折
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「骨盤単純X線撮影」
  ・撮影のコツ
  ・order 「骨盤単純・造影CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   後腹膜出血/尿管損傷/膀胱損傷/尿道損傷/性器損傷/(骨盤内)管腔臓器損傷
  ・再撮影を防ぐpoint
頭部・顔面外傷  稲垣直之
 頭蓋内損傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「頭部単純CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   急性硬膜外血腫/急性硬膜下血腫/脳挫傷・外傷性脳内血腫/外傷性くも膜下出血/びまん性軸索損傷/びまん性脳腫脹
  ・再撮影を防ぐpoint
 血管損傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「頭頸部造影CT(CTA)」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   内頸動脈損傷(閉塞)/中大脳動脈損傷(出血)/内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)
  ・再撮影を防ぐpoint
  骨折
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「頭部・顔面単純CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   線状骨折 円蓋部/陥没骨折 円蓋部/頭蓋底骨折/前頭骨(および前頭蓋)底骨折/眼窩壁骨折(吹き抜け骨折)/頬骨骨折(体部・頬骨弓)/側頭骨骨折/上顎骨骨折(Le Fort型骨折)/下顎骨骨折(体部・角部・顎関節突起)
  ・再撮影を防ぐpoint
頸椎( 椎体)外傷 相良健司
 頸椎(椎体)外傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「頸部単純CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   上位頸椎損傷(環椎後頭関節脱臼)/上位頸椎損傷(環椎骨折)/上位頸椎損傷(軸椎歯突起骨折)/上位頸椎損傷(軸椎関節突起間骨折)/中下位頸椎損傷/血管損傷
  ・再撮影を防ぐpoint
四肢外傷   米田 靖, 井川 健, 蛸 佳代子
 四肢外傷
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・基礎知識
  ・order 「四肢単純X線撮影」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   骨折・脱臼/コンパートメント症候群/血管損傷/デグロービング損傷
  ・再撮影を防ぐpoint
Appendix 特殊な救急撮影①  西池成章
 外傷全身CT
  ・基礎知識
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   鈍的脳血管損傷/体幹部損傷
  ・再撮影を防ぐpoint

■2. 内因性疾患
胸痛  高尾由範
 胸痛(胸背部痛)
  ・基礎知識
  ・診療の流れ
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   胸痛
  ・再撮影を防ぐpoint
Appendix 特殊な救急撮影②  高尾由範
 胸痛を伴う致死的疾患のトリプルルールアウト
  ・基礎知識
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   トリプルルールアウトを目的としたX線CT撮影
  ・再撮影を防ぐpoint
 急性心筋梗塞
  ・基礎知識
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影」
   「心臓超音波検査」「経動脈的冠動脈造影検査+経皮的冠動脈インターベンション(PCI)」
  ・撮影のコツ
  ・order 「頭部単純CT」
  ・撮影のコツ
  ・order 「心臓CT(冠動脈CT)」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   急性心筋梗塞
  ・再撮影を防ぐpoint
 急性大動脈解離
  ・基礎知識
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影,心臓超音波検査,胸部単純CT+造影CT,胸部ステントグラフト内挿術」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
  急性大動脈解離
  ・再撮影を防ぐpoint
 急性肺血栓塞栓症
  ・基礎知識
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影,心臓超音波検査,造影CT(肺動脈+下肢静脈),経カテーテル肺動脈血栓破砕術,下大静脈フィルタ留置術」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
  急性肺血栓塞栓症
  ・再撮影を防ぐpoint
Appendix 特殊な救急撮影③  高尾由範
 経皮的心肺補助装置導入下のX線CT撮影(造影)
  ・基礎知識
  ・症状・症候
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   体外補助循環導入下X線CT撮影
  ・再撮影を防ぐpoint
腹痛  前田啓明
 上腹部痛
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「上腹部単純・造影CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   急性胆嚢炎/肝細胞癌/上腸間膜動脈症候群/腎盂腎炎/急性膵炎
  ・再撮影を防ぐpoint
 下腹部痛
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「下腹部単純・造影CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   虫垂炎/尿管結/腸閉塞/大腸憩室出血
  ・再撮影を防ぐpoint
 腹部全体
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「全腹部単純・造影CT」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   腹部大動脈瘤破裂/上腸間膜動脈閉塞症/腸重積症/消化器穿孔
  ・再撮影を防ぐpoint
意識障害  高橋大樹
 意識障害
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 意識障害の精査を目的とした「頭部CT・頭部MRI」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   脳卒中(脳梗塞,くも膜下出血,脳実質内出血)/頭部外傷(脳挫傷,急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,脳ヘルニア)/脳腫瘍
  ・再撮影を防ぐpoint

3. 小児
小児  丸山智之,木村恭彦
 外傷(四肢外傷)
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「外傷部左右X線撮影(2方向)」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   若木骨折/よちよち歩き骨折(toddler's fracture)/上腕骨顆上骨折/上腕骨外顆骨折/上腕骨内顆骨折
  ・再撮影を防ぐpoint
 虐待
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「外傷部左右単純X線撮影(2方向)」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   骨幹端骨折/らせん骨折
  ・order 「全身骨撮影」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   多発肋骨骨折
  ・再撮影を防ぐpoint
 疾病(呼吸器)
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   下気道感染症/気管支喘息/クループ症候群
  ・再撮影を防ぐpoint
 誤嚥・異物誤飲
  ・想定される疾患
  ・症状・症候
  ・order 「胸部単純X線撮影(」吸気・呼気撮影)/「異物誤飲のため胸腹部臥位
  単純X線撮影」
  ・撮影のコツ
  ・救急撮影example
   気管支異物/異物誤飲
  ・再撮影を防ぐpoint

4. その他
造影剤  三好利治
  ・造影剤について
  ・造影剤の特性
  ・事前準備
  ・造影剤の投与手法
  ・造影検査に関する撮影手法
  ・造影剤の投与経路
  ・造影検査の安全性
  ・造影剤との併用注意薬
  ・造影剤副作用発生時の対応
  ・副作用対策の前処置
  ・ヨード造影剤による臓器への影響
  ・ガドリニウム造影剤による臓器への影響
危機管理・安全管理  坂下惠治
 危機管理
  ・患者急変時の対応(心肺蘇生法)
  ・感染対策
 安全管理
  ・放射線診療の安全管理
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