理学療法マネジメントシリーズ

脳卒中理学療法マネジメント

基本動作のパフォーマンス改善に向けた臨床思考を紐解く

脳卒中理学療法マネジメント

■編集 杉本 諭
藤野 雄次

定価 5,940円(税込) (本体5,400円+税)
  • B5判  240ページ  2色,イラスト60点,写真200点
  • 2022年3月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-2053-5

脳卒中の基本動作に対する理学療法のクリニカルリーズニングを身に付けよう!

脳卒中理学療法において評価・治療の対象となる基本動作(座位・立ち上がり・立位・歩行)を切り口とし,臨床でよく観察される現象をいくつかのパターンに分類して解説。
第1章では,脳卒中患者に生じる現象の原因を特定して適切な治療プログラムを立案するまでの思考過程(クリニカルリーズニング)と高次脳機能障害を抱える患者への接し方,第2章では脳卒中の病態と機能改善につながるリハビリテーションの要点をそれぞれまとめ,第3章では脳卒中患者の基本動作で観察される現象を,仮説とその詳細の解説→検証(評価)→治療というクリニカルニーズニングに則した流れで解説。さらに第4章では,第3章で解説した考え方に基づいたケーススタディを掲載し,具体的な実践例を提示しており,読者が臨床で活用しやすい構成となっている。


序文

編集の序

 近年わが国では,医療技術の進歩や健康寿命の延伸に対する国の施策などにより,脳卒中の発症数,死亡者数は減少してきました。一方,わが国の総人口は2010 年をピークに減少していますが,高齢者数,高齢化率はいずれも上昇しています。さらに要介護認定を受ける高齢者の割合も増加し,脳卒中は要介護認定の原因疾患の約15 %を占めています。脳卒中は,急性期から回復期,生活期にわたり理学療法が携わる頻度の高い疾患であり,時期に応じた適切なアプローチが必要であると考えられます。
 これまでにも脳卒中理学療法に関する書籍が数多く出版され,病巣部位,損傷側,運動麻痺の重症度など,身体的特徴を踏まえた評価や治療アプローチについて解説されてきました。このような脳卒中の一般的な知識や技術を理解することが,理学療法を行ううえで重要であることはいうまでもありませんが,臨床では典型的な反応を示さない症例に遭遇することが多く,治療を進めるうえで特に難渋します。その理由として,同じ病巣部位であっても病巣の大きさや広がり方,年齢などにより改善の可能性が異なり,機能予後の予測には限界があること,動作は身体機能にかかわるたくさんの要素によって行われていることなどが挙げられます。例えば一般的には運動麻痺が重症なほど,歩行自立度は低くなると予測されますが,重症であっても屋外歩行が自立することもあり,逆に軽症な運動麻痺例でも自立歩行に至らない場合もあります。
 臨床においては,ある動作がうまくできない場合,その理由について仮説を立て,関連要因を評価し,その結果で対象者の反応を説明できるか検証します。そして説明できなければ,別の仮説を立て,別の要因を評価し,その結果で説明できるかを再び検証します。この仮説と検証を繰り返し,動作を阻害している要因を突き止めることで,治療アプローチの考案が可能となります。このクリニカルリーズニングとよばれる過程をより適切に行うためには,対象者の反応を多角的な視点で考えることが重要であり,そのための引き出しが必要となります。
 座位,立ち上がり,立位,歩行は,臨床において,脳卒中患者に対して評価・治療が行われることが多い基本動作であり,これらの動作の可否を機能予後予測や治療目標設定としてしばしば用いています。そこで本書では,病巣部位や重症度別などに基づいた典型例に対する理学療法の解説ではなく,基本動作を切り口とし,動作がうまくできない症例に対し,仮説・検証を繰り返し,動作の獲得を導くことができるようになるための基本が学べるように構成しました。
 第1 章の前半では脳卒中理学療法の考え方,後半では高次脳機能障害を有する脳卒中患者への接し方,配慮の方法について解説しました。第2 章では,脳卒中リハビリテーションにおいて先進的な取り組みをされている井上勲先生より,理学療法を行ううえで押さえておくべき脳卒中の特徴と医学的治療について,最新のニューロリハビリテーションの応用を含めて解説していただきました。第3 章では座位,立ち上がり,立位,歩行練習を行う際に,どのような視点で仮説・検証を行い,治療に結び付つけるのかを解説していただき,第4 章では実際に行った基本動作獲得のための理学療法についての具体的な仮説・検証,治療についてケーススタディとして解説していただきました。
 本書で執筆された先生方は,数多くの脳卒中症例に対する臨床経験のなかで仮説・検証を繰り返し,試行錯誤しながら理学療法の技術を磨いてこられた方達ですので,基本動作練習の具体的な評価・治療を考えるための実践書として,幅広く使っていただける1 冊に仕上がったと思います。担当の患者さんが笑顔で退院されていく姿を見るたびに,理学療法士としてかかわれたことを嬉しく思い,さらなる研鑽の励みになります。本書がたくさんの患者さんに笑顔で退院してもらえるような理学療法を提供するための参考になれば幸いです。

2022年2 月
編集を代表して
杉本 諭
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目次

Ⅰ章 脳卒中理学療法の概要
 1 脳卒中理学療法の考え方  [杉本 諭]
 2 高次脳機能に配慮した接し方  [杉本 諭]

Ⅱ章 脳卒中の病態の理解
 1 脳卒中の病態と治療  [井上 勲]
 2 身体機能障害と改善の可能性  [井上 勲]

Ⅲ章 仮説の立案と検証
 座位
 1 座位保持は安定しているか  [井上真秀]
 2 動的座位能力は良好か  [井上真秀,志田航平]
 立ち上がり
 3 非麻痺側上肢の支持があれば自力で立てるか  [深田和浩]
 4 非麻痺側上肢の支持がなくても自力で立てるか  [井上真秀]
 立位
 5 立位保持は安定しているか  [藤野雄次]
 6 動的立位能力は良好か  [藤野雄次]
 歩行
 7 平行棒内を自力で歩行できるか  [杉本 諭]
 8 杖歩行を自力で行えるか  [杉本 諭]
 9 杖を使用せずに自力歩行ができるか  [杉本 諭]

Ⅳ章 機能障害別ケーススタディ
 座位
 1 座位保持困難例に対するアプローチ  [大川信介]
 2 動的座位バランス不良例に対するアプローチ  [福富利之]
 立ち上がり
 3 立ち上がり困難例に対するアプローチ  [鈴木翔太]
 立位
 4 立位保持困難例に対するアプローチ  [小林陽平]
 5 動的立位バランス不良例に対するアプローチ  [最上谷拓磨]
 歩行
 6 平行棒内歩行獲得のためのアプローチ  [古山つや子]
 7 杖歩行獲得のためのアプローチ  [中谷知生]
 8 独歩獲得のためのアプローチ  [中村 学]
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