SKILL 
一流の外科医が実践する修練の法則

SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則

■著 クリストファー・S・アーマッド

■訳 宮田 真

定価 2,750円(税込) (本体2,500円+税)
  • A5判  180ページ  
  • 2023年3月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-0471-9

発売たちまち重版!! 世界トップクラスの実績をもつ外科医が解き明かす“SKILLを獲得するための極意”

一流はなぜ一流となりえたのか?
どのように修練を積んできたのか?
どのような思考が成功へとつながっているのか?
極限状態のプレッシャーに耐えうる精神はどのように培われたのか?

一流には一流たりうる理由が必ず存在する。

タイガー・ウッズ、マイケル・ジョーダン、ペレ、フランツ・ベッケンバウアー、デレク・ジーター、カルロス・アルベルトなどのスポーツ選手から、サム・ウォルトン、スティーブ・ジョブズ、ウォルト・ディズニー、アーノルド・シュワルツェネッガーまで、世界のトップパフォーマーを取り上げ、ニューヨーク・ヤンキース チームドクター長であり、コロンビア大学整形外科教授である著者が、一流の外科医になるための思考法や戦略、鍛錬の方法を導き出している。

米国では「外科医を目指すなら必ず読んでおきたい」と評される名著を、日本人で唯一の米国小児外科医が翻訳。「抜きんでた何者かになりたい」と願う、すべての外科医のためのバイブルである。

松井 秀喜 氏(元 ニューヨーク・ヤンキース)
ヤンキースにとって彼の経験と知識とスキルは大きなアドバンテージです。
私が両膝の手術後に安心してプレーできたのも彼の存在があったからです。

北原大翔 氏(チームWADA代表/本物の外科医YouTuber/シカゴ大学心臓外科)
誰よりも優れた外科医になりたい。そんな漠然とした理想を現実化させうる本。
これを読んで胸を熱くしない外科医はいない。 

田尻達郎 氏(九州大学大学院医学研究院 発達医学講座小児外科学分野教授) 
プロフェッショナルの外科医になるための心得と方法は、全ての職種で一流になるためのそれと、驚くほど共通のものである。 

菅谷啓之 氏(東京スポーツ&整形外科クリニック院長/医療法人社団TSOC理事長)
自らの経験に照らし合わせても、ひとつひとつが納得できる至高の書。
グリットとレジリエンス:一番大切です。 

町淳二 氏(ハワイ大学医学部外科教授・国際医療医学オフィス部長)
システマティックにサステイナブルに効率よくSKILLを自分のものにする方法が望まれますが、本書「SKILL」はその答えと信じます。
SKILL修得と向上のためのコツ・パールが分かりやすくまとめられ、今日からでも実践可能です。 

原著者
Christopher S. Ahmad
ニューヨーク・ヤンキース チームドクター長。
メジャーリーグ野球チーム医師協会メンバー。
コロンビア大学整形外科教授。
肘、膝、スポーツ医学に関する100以上の論文や原稿を執筆し、国内外で100以上の講演を行う。
スポーツ医学の分野における優れた研究で多くの賞を受賞。
トミー・ジョン手術が必要となる肘外傷の多発に対処する、メジャーリーグの研究委員会にも参加。
松井秀喜氏をはじめ、多くの日本人メジャーリーガーの診療にも携わる。

翻訳
宮田 真
米国ミズーリ州セントルイス大学・カーディナル・グレノン小児病院小児外科医。
同院 小児外科フェローシッププログラムディレクター。
米国一般外科・外科集中治療・小児外科専門医。
2003年岡山大学医学部卒。日本で5年の研修を経て2008年に渡米。


序文

訳者の言葉

 クリストファー・アーマッド先生はニューヨーク在住の整形外科医で、ニューヨーク・ヤンキース、ニューヨーク・フットボールクラブのチームドクター長です。僕が彼の著書“SKILL”に出会ったのは、カナダ・モントリオールで小児外科フェローをしていた2018年のことでした。日本で5年、アメリカで10年外科研修医・外科医として働いたのちに、日本語でも英語でもないフランス語で、多忙な小児外科の臨床をするというのは、いかに語学学習が大好きといってもなかなか無茶な挑戦でした。初めのうちは、1日の勤務の最後には頭がフランス語でパンクしそうになり、手術記録を電話で録音するディクテーションでは、「このたどたどしいフランス語を辛抱強く聞きながら文字に起こすはめになるトランスクリプショニストの人がいる」と、その人の顔を想像すると(申し訳ないという気持ちと同時に)どうにも笑いが止まらなくなってしまっていたのを覚えています。結局、録音の一時停止ボタンを押しては深呼吸をして笑いを抑えたところでまた録音するという作業を何度か繰り返し、一つの手術記録を録音し終えたのでした。

 僕がそこまでして小児外科に挑戦しようと思ったのも、快適な日本を出てアメリカで外科をしようと思ったのも、自分が凡人の域を抜きんでた「何者か」になりたかったということが根底にあったはずです。“SKILL”を初めて手に取り読んだときは、これまで自分が日米で出会ってきた「抜きんでた人たち」の哲学が見事に言語化され、散りばめられているように思いました。アーマッド先生はアメリカ人ですが、そのメンタリティは日本で言う「匠」を思わせるものであり、アメリカ人でかくも職人気質な外科医もいるものかと驚きました。同時に、逆に言えば彼のような考え方は間違いなく日本人にも受け入れやすいものだと確信もしました。「抜きんでた人たち」になるエッセンスを読みやすい形でまとめたこの本を、同じような志をもつ多くの日本人医師・研修医・医学生、ひいては一芸に秀でようとするあらゆる分野の人たちに広めたいと、翻訳を決意した次第です。

 本書の内容は、人によっては目新しく、目からうろこが落ちるようなものもあるかもしれません(あってほしいと思います)。一方、ある程度その道を極めつつある人であれば、すでに日常やっていることで「当たり前」と思うことも多いでしょう。その場合でも、これまでの考え方・取り組み方が間違っていなかったという確認作業を通じて、本書が役立ってくれることを信じています。僕自身も、“SKILL”を読みながら「そう言えば自分これやってたわ」と、「これまで誰に教えられたわけでもなかったけどなんとなく良さそうだからやっていた」という箇所にいくつも気付きました。なんとなくやっていたことも改めて言語化されたことで、これからも続けていこうと思えました。

 例えば、僕は中学生のころから毎日NHKのラジオ英語を聞いていました。これだけであれば多くの人がやっていると思うのですが、僕はその日の放送が終わった後に、その日のキーフレーズや特に言いにくい一節を選んで、「1回も詰まることなく10回続けて言えるまで言い続けるチャレンジ」という遊びを自分に課していました。10回言えたら20回、ときには100回を超えることもありました。そして家族にうるさがられたのは良い思い出です。このチャレンジは、誰に教わったものでも誰かにやれと言われてやったものでもありませんが、本書に何度も登場する「スイートスポット」、「背伸びする(リーチする)」という概念そのものなのです。自分が言いにくいと感じる一節を探す行為はまさに「スイートスポット」を探す行為であり、1回も詰まらずに10回続けて言う行為は、スイートスポットのなかで「背伸びする」という、理にかなった練習法だったのです。

 我々が日々行う手術や手術の練習にも、まったく同じ原理を当てはめることができます。この本はそういった原理の宝庫です。当セントルイス大学小児外科に回ってくる外科シニアレジデントには必ずこの“SKILL”をプレゼントしていますし、自分もこの本を何度も読み返しています。本書を手に取っていただいた皆さんも、一読と言わず定期的に繰り返し読んでいただきたいです。そして一緒に、よりよいパフォーマー(外科医)、よりよい教育者・コーチ、よりよい人間を目指していきましょう。きっとその先には、凡人の域を出た「何者か」になった自分が待っていることでしょう。

 本書の執筆・制作にあたり、全面的なサポートをくださったメジカルビュー社加賀智子さん、整形外科用語・アメフト用語の校正に力を貸してくれた須賀紀文先生、時々ハッとするようなアドバイスをくれた妻に感謝の意を表します。

2023 年2 月
セントルイス大学小児外科
宮田 真
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書評

■刊行たちまち重版! SNSで反響続々!

○山岸俊介新小岩心臓外科医 氏
外科医が外科医以外の一流の人々を参考にしている点が、まさに私と同じ発想で、
共感しかありません。トレーニングで追い込む、筋肉痛になる、神経すり減らす!そうすれば本番のオペでは、水を得た魚。ほんと言いたかった事をズバリ言ってくれて、是非若い先生方には読んで欲しい本です。

○小渡亮介 氏
外科医に限らず、なんなら医者に限らず
見ることをオススメします。いかに僕たちが「無意識のうちに通り過ぎてしまっている」シーンを「意識的に貴重な経験値に変えていく」のか…それを方法論に留まらず、メンタリティーまで具体的に言語化してくれている本です。

○松田祐典 Yusuke Mazda MD PhD 氏
すべての医師に捧げる。単に技術だけでなく、医師としてのメンタリティーが心に響く。この本を読んで、鼓舞されない医師はいないだろう。この素晴らしい書籍を翻訳してくださった宮田真先生に、心から感謝したい。歴史に残る名著に出会えました。

○Segu 氏
本書の中にはMindset や Grit なんかも
登場していて、上達するための考え方が、言語化されて分かりやすくまとめられていた。”スイートスポット”や”チョーキング”という用語は初めて見て、自分にとっては新しい発見だった。

○Tsutomu Fujita MD 氏
ハードスキル、ソフトスキルをいかに
チャンクするか?と、普通のことを、
しっかり言語化している。素晴らしい。
This book is bible for young dr to get skill.

○K.H.M.D. 氏
素晴らしい原著・和訳で、整形外科フェローとしての自分のマインドの反省と転換の良い機会に気づきとなった。Ahmad先生と宮田先生に感謝し、'SKILL'ful sports ortho surgeonになるため新天地でも更なる努力をしなければならない自覚が芽生えた。

○おぺなか 氏
Twitterで見かけて即購入しました。手術が上手くなるためのヒントが盛りだくさんです。 外科医はもちろん、何かを極めたいと思う全ての人にオススメできる一冊ではないでしょうか。

○Takeshi Mizuno 獣医心臓外科医 氏
超絶良書。自分がそうかなと感じたり思ったりしてたこともあり、真逆のことをしてしまっていたところもあり、大変勉強になりました。 獣医ではなかなか得られない知識なので、言語化してくださった原著者の先生と日本語訳してくださった宮田先生に感謝。

(Twitterアカウント名にて掲載)
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目次

推薦の言葉
訳者の言葉
日本語版特別対談 一流の外科医の「SKILL」とは?
ダニエル・コイルによる前書き
はじめに

Part 1 スキルの定義
 1 『天才神話』に騙されるな
 2 環境じゃない、あなたです
 3 メンターを「リバースエンジニアリング」する
 4 キーポイントを探し出し、盗め
 5 好きな手術を脳裏に刻み込む
 6 ノートを常に持ち歩く
 7 目標を書き出し、目標に到達するまでのプロセスに没頭する
 8 手術室の外ではリスクを冒せ
 9 ハードスキルとソフトスキルの違いを認識する
 10 マリアーノ・リベラのようにハードスキルをマスターする
 11 解剖に敬意を。視野展開に喜びを―手術におけるハードスキル
 12 ソフトスキルを身につけるには、滑降スキーをイメージして練習する
 
Part 2  スキルの向上
ディープトレーニング ースイートスポットを見つけ、「背伸び」し、繰り返す
 13 スキル習得の複利効果を利用する
 14 演奏会の準備をするように、一人で練習する
 15 ウッデン監督のように、基本的なディテールにこだわる
 16 真似しまくれ
 17 スイートスポットを特定する
 18 「深く」取り組み、悪戦苦闘は受け入れる
 19 自分は師匠より優れていると信じよ
 20 手術を細かく分解せよ
 21 ゆっくりやる
 22 うまくできたときは、その場所をマークする
 23 皮膚切開を小さくしてみる
 24 本から学ぶには、本を閉じよ
 25 手術記録は常に手術前に書け
 26 パフォーマンス直後に練習せよ
 27 R.E.P.S. テクニックを使って練習する
 
Part 3  マスターの域への到達
やる気、グリット(grit:やり抜く力)、分析的誠実さを身につける
 28 自分の手術を採点する
 29 エゴを捨てる
 30 間違いは、成長のために積み木を重ねていくようなもの
 31 (ミスや失敗に関して)ポジティブな考え方を身につける
 32 ブルーカラーな外科研修先を選ぶ
 33 研究室で引っぱがす? ―研究のススメ
 34 「チャンキング」は魔法のような即興性を発揮する
 35 目を閉じて、イメージする
 36 真の達人を目指すには、教えることだ
 37 より良いコーチになれ
 38 良い結果ではなく、質の良い練習を褒める
 39グリット(grit)を養う
 40 より良い手術手技を開発する

Part 4  そのほかの考察
 R1 そんなに優秀な外科医なら、なぜ手術ができないの???
 R2 チェスのレッスンを受ける
 R3 楽器を演奏するように、手術のパフォーマンスを高める
 R4 チョーキング(過度の緊張)を避ける
 R5 コーチング
 R6 患者は命と人生をあなたに委ねている

 おわりに
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