ロボット支援前立腺全摘除術 A to Z

解剖から理解する

ロボット支援前立腺全摘除術 A to Z

■編 鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センター

定価 12,100円(税込) (本体11,000円+税)
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  • B5変型判  240ページ  オールカラー,イラスト100点,写真190点,Web動画視聴権付き(74本/計125分)
  • 2016年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1264-6

安全・確実な手術のために。エキスパートが解説するロボット支援前立腺全摘除術のすべて!

わが国のロボット手術をリードしてきた鳥取大学医学部附属低侵襲外科センターのエキスパートによる“ロボット支援前立腺癌摘除術”のすべて。手術解剖の観点から,安全・確実に手術を完遂するためのセンターのノウ・ハウを余すところなく解説している。
これからロボット手術を開始する初心者から経験を積んだ術者まで,泌尿器科医必携の手術書である。Web動画視聴権付き。


序文

 2010年,鳥取大学医学部附属病院では,ロボット支援手術を開始するに当たり,豊島良太院長(当時),北野博也副院長(当時)の強力なリーダーシップの下,低侵襲外科センターが設立された。本センターは,泌尿器科,胸部外科,消化器外科,女性診療科,頭頸部外科,心臓血管外科の執刀診療科に,麻酔科,手術部看護師,臨床工学技士,医療サービス課の中央部門を加えた横断的組織の中で,「先進的かつ安全な低侵襲外科手術を提供し患者の早期回復に貢献すること」および「低侵襲外科手術全般に関わる機器整備と開発支援を行うこと」をミッションとして活動を開始した。初代センター長には,原田省女性診療科長が就任され,センター長のガバナンスの下,ロボット支援手術に関する各種の院内規定が策定された。昨今,特定機能病院承認要件として,高難度新規医療技術の導入に対し施設全体としての審議機関設置が求められているが,当センターの取組みはまさにその方向性を先取りしたものであった。これらの規定は,ロボット支援手術導入時モデルとして全国で活用された。また,2012年4月には,「鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センター編 ロボット手術マニュアル(メジカルビュー社)」が発刊された。本書は,当センターにおけるロボット手術導入に関する活動をまとめたもので,本邦初のロボット手術書として好評を得た。2013年4月からは,小職が2代目センター長を拝命し,2016年8月までに約600件のロボット支援手術を行ってきた。この成熟した横断的組織により,Clavien-Dindo分類 3b以上の合併症は2.2%,機器不良による手術中止0%と,優れた初期成績を残すことができた。

 さて,ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)は2012年4月の保険適用以後,本邦でも急速に普及し,現在では前立腺全摘除術の半数以上を占めるようになった。また,今や泌尿器科major surgeryの中では,最も症例数の多い術式の一つとなっている。一方,他診療科ではロボット支援手術の普及は必ずしも順調とはいえない。RARPの普及により,「ロボット支援手術といえば泌尿器科」という図式が広く周知され,内視鏡外科関連診療科における泌尿器科のプレゼンス向上につながったことは万人が認めるところである。RARPをさらに安全に普及させ,腫瘍制御,術後排尿機能,性機能をより向上させることは,本邦におけるロボット手術全体の発展にも大変意味のあることである。以上より,鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センターでは,「ロボット手術マニュアル」に次いで,RARPの手術書を発刊することとした。

 本書は,すべての項目が鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センターの構成員によって執筆された。RARPに関するわれわれの経験を,Tottori experienceとして余すところなく記載したつもりである。本書の特徴は以下の4点である。

1.手術手技のみならずチーム医療のマニュアル本とした。
 特に基礎編では,低侵襲外科センターの麻酔科医,手術部看護師,臨床工学技士にも執筆を依頼した。術前準備から術中管理まで手術チームとして行うべき事項が記載されている。
2.基本的事項を確認する目的で,チェックポイントと鉄則を明示した。
 初心者がこの一冊を読破すれば手術が完結できるよう,チェックポイントを疑問文形式で箇条書きにし,それに対する回答を「鉄則」という形でシンプルに提示した。その上で各項目について解説を加えた。
3.外科解剖学に基づく標準術式を動画とともに提示した。経験に基づいた解説だけでなく,可能な限り外科解剖知見に基づいた手技を記載した。その上で,当科の行っている標準的操作について動画を用いて説明した。
4.応用編として,症例ごとのテクニックやトラブルシューティングを盛り込んだ。チャレンジングな症例で応用できる手技や,成績向上のためのコツやトラブルシューティングなど,アドバンステクニックについても解説した。

 当センターではRARPを2010年10月から開始したが,この時,私がCornell大学でD. Tewar(現 Maunt Sainai Hospital)から手術指導を受けてからすでに約5年の月日が経っていた。日本でロボット支援手術を開始できるようになった感動を今でも鮮明に記憶している。個人的には,ライフワークとする骨盤内外科解剖に可能な限り準拠した論理的な手術を心がけてきたつもりである。私はいつも,手術に対するコンセプトを車の運転に例えて説明をしている。つまり,安全に目的地に到達するには,基本的運転技術と道路地図の準備の両者が必要である。手術も同様で,道路地図に相当するのが外科解剖学である。手術支援ロボットを手にしても,外科解剖学の理解が深まらなくては先進的機器の長所は発揮できない。運転技術を駆使しスピード運転をするのもよいが,高機能ナビゲーション機能の下,万人が安全にかつ一定時間内に目的地に到達するシステムを構築することも大変意味のあることである。手術においても,高価な機器を手にした現在,手術時間短縮のみを目的とするのではなく,基本に忠実に外科解剖学に即した手術を行いたい。そして,手術支援ロボットの機能がより高く発揮できるような術式を心がけたいものである。本書が,その一助となれば望外の喜びである。
 メジカルビュー社の鈴木吉広氏には,遅れがちになる編集業務を多方面からサポートしていただいた。心からお礼を申し上げます。

(現在,当院ではダビンチSiを使用しており,本書はダビンチSiによるRARPについて解説をするものである。)

2016年 残暑
鳥取大学医学部器官制御外科学講座腎泌尿器学分野 教授
鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センター センター長
武中 篤
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目次

基本編
1. 手術適応
 1 RARP の対象症例
  チェックポイント
  ・開放前立腺全摘除術(ORP)と適応が異なるか?
  ・適応禁忌症例は?
 2 初期症例の手術適応
  チェックポイント
  ・初心者にとって手術困難が予想される症例は?
  ・適応症例の制限は何例程度まで行うべきか?
2. 術前準備
 1 医師からの術前インフォームドコンセント
  チェックポイント
  ・起こりうる合併症は説明されているか?
  ・医師からの説明のみで十分か?
  ・医療機器関連企業の立ち合いについて説明は必要か?
 2 手術前日までの看護師の役割
  チェックポイント
  ・情報収集のポイントは?
  ・観察項目のポイントは?
 3 麻酔科医の術前準備
  チェックポイント
  ・麻酔科医が術前診察時に注意することは?
  ・麻酔準備で注意することは?
  ・経験の少ない手術での準備の要点は?
 4 臨床工学技士の術前準備
  チェックポイント
  ・ダヴィンチシステムの配置・配線の際,注意するポイントは?
  ・システムチェックの方法は?
  ・どのような周辺機器の準備が必要か?
 5 手術関連機器の知識と準備
  チェックポイント
  ・最適な鉗子は?
  ・必要な準備物品は?
 6 体位と機器配置
  チェックポイント
  ・看護師からみた術前の手術体位への介入のポイントは?
  ・円滑な手術を行うための機器配置法は?
 7 肺塞栓予防法
  チェックポイント
  ・術前のリスク評価方法は?
  ・術中の静脈血栓の予防は?
  ・術後の観察項目は?
3. 術中基本操作
 1 ドッキング
  チェックポイント
  ・一般的なドッキング法は?
  ・パラレルドッキング法のメリッットは?
 2 鉗子挿入,交換における注意事項
  チェックポイント
  ・安全なエンドリストの挿入方法は?
  ・エンドリストの交換時に術者と助手が注意すべき点は?
  ・緊急時の対処方法は?
 3 触覚・力覚欠如に対する注意点
  チェックポイント
  ・触覚・力覚の欠如に対する注意点は?
  ・触覚・力覚の欠如をどう補完するか?
 4 クラッチ,カメラ機能の基本テクニック
  チェックポイント
  ・安定した手術操作に必要なことは?
  ・理想的なクラッチおよびカメラの使用方法は?
 5 3rdアームの活用
  チェックポイント
  ・RARPにおいて3rdアームは必要か?
  ・どのような場面で3rdアームは有効か?
 6 バッティングの回避
  チェックポイント
  ・体腔内での術者エンドリスト同士のバッティングを回避するには?
  ・体腔内での術者エンドリストと助手鉗子のバッティングを回避するには?
  ・体腔外での術者エンドリスト同士のバッティングを回避するには?
  ・体腔外での術者エンドリストと助手鉗子のバッティングを回避するには?
 7 気腹圧の調整
  チェックポイント・コンソール操作時の設定は?
  ・出血時の設定は?
 8 カメラの使い分け
  チェックポイント
  ・カメラレンズ0度が望ましいパートは?
  ・カメラレンズ30度が望ましいパートは?
 9 止血確認
  チェックポイント
  ・止血時の気腹圧は?
  ・止血確認はどのタイミングで施行するか?
  ・神経血管束からの出血に対する止血は?
 10 電気メスの設定
  チェックポイント
  ・どのような電気メスのモードが適しているか?
  ・どのような場面で電気メスの出力調整が必要か?
 11 助手の一般的心得
  チェックポイント
  ・助手の配置とその役割は?
  ・第1助手に求められる基本的操作は?
  ・大事故につながりかねない助手の失態とは?
 12 術中合併症の種類と回避法
  チェックポイント
  ・血管損傷を回避するには?
  ・閉鎖神経損傷を回避するには?
  ・膀胱頸部・三角部損傷を回避するには?
  ・直腸損傷を回避するには?
4. 術中管理
 1 看護師が行う術中管理
  チェックポイント
  ・器械出し看護師の術中の役割は?
  ・外回り看護師の術中の役割は?
 2 臨床工学技士が行う術中管理
  チェックポイント
  ・機器トラブルの頻度は?
  ・インストゥルメント関連エラーの対処法は?
  ・アーム関連エラーの対処法は?
  ・ドッキング時エラーの対処法は?
  ・カメラ・映像関連エラーの対処法は?
  ・システムエラーの対処法は?
 3 麻酔科医が行う術中管理
  チェックポイント
  ・麻酔法は?
  ・筋弛緩薬の投与法は?
  ・輸液管理は?
  ・呼吸器設定は?
  ・その他頭低位での注意点は?
 4 手術チーム間のコミュニケーション
  チェックポイント
  ・手術症例についてチーム間で意識共有できているか?
  ・ロボット支援手術から開腹手術への移行基準は周知されているか?
  ・術中のコミュニケーションはとれているか?
 5 手術チームで行う緊急時対応
  チェックポイント
  ・緊急時に安全かつ迅速に対応するには?
5. 術後管理
 1 術中・術後合併症
  チェックポイント
  ・術中合併症にはどのようなものがあるか?
  ・術後合併症にはどのようなものがあるか?
 2 クリニカルパスと注意点
  チェックポイント
  ・周術期の管理はどのように行うか?
  ・術後何日目に退院可能か?

実践編
1. 標準術式における基本手技を学ぶ
 1 体位とポート挿入
  チェックポイント
  ・手術体位は?
  ・トロカーの位置は?
  ・ロボット3rdアームは左右どちらが有利か?
  ・トロカー挿入で特に注意すべき点は?
 2 腹腔内観察,S 状結腸剥離
  チェックポイント
  ・癒着を認める際の対応は?
  ・結腸の剥離はどの程度行うか?
 3 Retzius 腔の展開
  チェックポイント
  ・膀胱前面の剥離ラインは?
  ・前立腺前面の剥離ラインは?
 4 リンパ節郭清
  チェックポイント
  ・リンパ節郭清の範囲と適応は?
  ・拡大郭清の実際は?
 5 内骨盤筋膜の切開
  チェックポイント
  ・神経非温存術式の際の切開ラインは?
  ・神経温存術式の際の切開ラインは?
  ・副陰部動脈が出現したら?
 6 膀胱頸部離断
  チェックポイント
  ・膀胱頸部腹側離断の方法は?
  ・膀胱頸部背側離断の方法は?
 7 精嚢剥離
  チェックポイント
  ・精嚢剥離を上手く行うコツは?
 8 前立腺血管茎の処理
  チェックポイント
  ・前立腺血管茎の走行は?
  ・神経温存の際の血管茎の処理方法は?
  ・神経非温存の際の血管茎の処理方法は?
 9 前立腺後方の展開
  チェックポイント
  ・前立腺後方の展開の際,最も重要なコツは?
  ・神経温存の際の前立腺後方の展開のポイントは?
  ・神経非温存の際の前立腺後方の展開のポイントは?
 10 前立腺後外側面の処理
  チェックポイント
  ・陰茎海綿体神経の走行は?
  ・神経温存の種類による処理方法の違いは?
 11 尿道切断
  チェックポイント
  ・DVC(dorsal vein complex)の処理は?
  ・尿道切断時の注意点は?
 12 後方再建
  チェックポイント
  ・使用する糸と縫合方法は?
  ・縫合の際の注意点は?
 13 尿道吻合
  チェックポイント
  ・使用する糸と吻合方法は?
  ・吻合の際の注意点は?
 14 前方再建
  チェックポイント
  ・前方再建の有用性は?
  ・実際にどのように行うか?
 15 創外への前立腺摘出法とドレーン留置
  チェックポイント
  ・前立腺摘出に使用する組織回収バッグは?
  ・前立腺摘出とドレーン留置の標準的な手順は?
  ・使用するドレーンの種類と本数は?
2. 症例から学ぶアドバンスドテクニック
 1 腹部手術既往症例
  チェックポイント
  ・腹部手術既往と腹部癒着の相関は?
  ・ポート留置の際の工夫と注意点は?
  ・どのタイミングで,どの程度剥離するか?
  ・腹部手術既往のうち,RARPの適応禁忌となるものは?
 2 前立腺肥大症例
  チェックポイント
  ・膀胱頸部切断時の工夫と注意点は?
  ・前立腺背側展開の工夫と注意点は?
  ・尿道膀胱吻合時の工夫と注意点は?
 3 中葉肥大症例
  チェックポイント
  ・膀胱頸部切断時の工夫と注意点は?
  ・尿道膀胱吻合時の工夫と注意点は?
 4 TURP 既往例
  チェックポイント
  ・TURPの既往がある症例にロボット支援前立腺全摘除術は適応となるか?
  ・TURP後の患者に対するロボット支援前立腺全摘除術の適切な実施時期は?
  ・膀胱頸部が開大しているときに最も注意すべき点は?
 5 T3 症例
  チェックポイント
  ・臨床病期cT3の手術適応は?
  ・臨床病期cT3症例に対する前立腺切除ラインのポイントは?
 6 前立腺炎症例
  チェックポイント
  ・前立腺炎既往症例での癒着はどこに認められるか?
  ・癒着部分を安全に剥離するための注意点は?
3. 成績向上のためのコツとトラブルシューティング
 1 断端陽性の要因と回避するための手技
  チェックポイント
  ・断端陽性の要因は?
  ・断端陽性を回避するための注意点は?
 2 性機能回復の要因と手技
  チェックポイント
  ・精嚢周囲剥離で注意することは?
  ・pedicle処理で注意することは?
  ・前立腺後面の剥離で注意することは?
  ・前立腺筋膜の処理で注意することは?
  ・尿道・Denonvilliers筋膜離断で注意することは?
  ・前立腺摘出後のneurovascular plateでoozingを認めた場合の対処方法は?
 3 早期禁性獲得の要因と手技
  チェックポイント
  ・早期禁制獲得にかかわる要因は?
  ・早期禁制獲得に関与する手術操作におけるコンセプトは?
  ・早期禁制獲得のための解剖学的知見に基づいた各手術操作の工夫とは?
 4 神経温存後の止血法
  チェックポイント
  ・温存された神経を損傷しない止血法は?
 5 直腸損傷を回避する方法
  チェックポイント
  ・術前の画像検査は有効か?
  ・手技的な注意点は?
  ・直腸損傷が生じてしまった場合の対処法は?
 6 頸部縫縮法
  チェックポイント
  ・頸部縫縮の際の注意点は?
  ・膀胱頸部が大きく開いた際の縫縮法は?
 7 膀胱三角部を損傷した際の対処法
  チェックポイント
  ・三角部の欠損部が小さい場合の対処法は?
  ・三角部の欠損部が大きい場合の対処法は?
 8 肥満患者,S状結腸膨隆患者の対応
  チェックポイント
  ・肥満患者における手術操作困難な点とその対処法は?
  ・S状結腸膨隆患者での手術操作困難な点とその対処法は?
 9 後腹膜アプローチ
  チェックポイント
  ・後腹膜アプローチのメリットとデメリットは?
  ・ポート挿入法の手順は?
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