臨床工学技士のための呼吸治療ガイドブック

臨床工学技士のための呼吸治療ガイドブック

■監修 山口 修

■編集 相嶋 一登

定価 4,950円(税込) (本体4,500円+税)
  • B5判  272ページ  オールカラー,イラスト80点,写真150点
  • 2014年3月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-1480-0

臨床工学技士が行う呼吸治療について,基礎から応用まで徹底解説!

本書は臨床工学技士(CE)に向けた「呼吸治療」の解説書である。
全4章で構成し,第1章で「臨床工学技士が行う呼吸治療業務」の内容について記した後,第2章で「人工呼吸療法の基礎知識」として呼吸生理・解剖や換気モード,モニタの見方を解説。第3章では「呼吸治療業務の実践」としてCEが行う業務内容を具体的に解説し,第4章では「人工呼吸器に関連する安全管理手法」について記載している。
CEの基本業務とされる人工呼吸器の保守点検だけでなく,患者管理まで含めた内容も網羅しており,これからのCEに必要な呼吸治療の知識をトータルに解説した1冊である。


序文

監修の序

 我が国で,重症患者を一カ所にまとめて治療する集中治療室が整備されだしたのは,昭和40年代だった。当時,人工呼吸器に興味ある医師は,セミナーに参加して人工呼吸器の“組み立て方”を学んだ。それだけ,構造も機能も単純だったのである。集中治療や人工呼吸管理にかかわる和文の教科書もなく,洋書を参考に手探りで呼吸管理を学んだ。
 しかし,近年は集学的医療が進み,主治医に生命維持装置の知識,技術がなくても患者の治療ができる時代である。集中治療室に専属医がいない,いわゆるオープンシステムのICUでも人工呼吸管理や血液浄化療法,補助循環装置の運転ができる。それを可能にしているのが,臨床工学技士の存在である。
 専属の集中治療医がいるICUにおいても,臨床工学技士抜きのICUはありえない。また,看護師はもちろん若手医師にとっても,臨床工学技士に学ぶ領域が非常に大きい。なかでも,呼吸管理にかかわる事項は,人工心肺装置や血液浄化療法ほど専門性が高くない分,ほとんどの患者管理上必修項目といえる。臨床工学技士は,重症患者に良質な医療を提供する上でコアとなる存在であり,その活動領域は集中治療室や手術室などの急性期医療に加えて慢性期の在宅医療にまで及ぶ。
 本書の編者,相嶋一登先生は,集中治療室や院内の呼吸治療に精通していることはもちろん,呼吸サポートチームの中核としても活動している。さらに,病院内外で臨床工学技士,看護師,若手医師を対象とした幾多の研修も担当されてきた。本書は,その相嶋一登先生が選りすぐった,第一線で活躍中の臨床工学技士による“呼吸治療のガイドブック”である。呼吸治療の基礎的事項として呼吸生理や,新旧の酸素療法,人工呼吸器,加温加湿はもちろん教育方法にまで言及している。臨床工学技士が医療職相手に呼吸治療の教育を行うことも重要な業務である現在,実務上求められる多様な知識を収めた本書は読者を十分に“ガイド”できる一冊になると期待している。
 一方,本書は,“臨床工学技士のための…”とうたっているが,内容を読んでいただくと,呼吸治療に携わる若手医師や,看護師など他職種にも利用価値が高いことが理解いただけると思う。
 日進月歩のこの領域である。本書も年を経れば,陳腐化するのは明らかである。読者諸兄の貴重なご意見を参考に,版を改めて,さらに成長できたら望外の喜びである。

2014年1月
横浜市立大学附属病院 集中治療部
山口 修
----------------------------------------
編集の序

 臨床工学技士法が制定されてから四半世紀が経ち,取り巻く医療環境とともに変化を続ける臨床工学技士の業務内容は,当時と比べて大きく変わったといえる。そのような中で平成22年10月には「臨床工学技士基本業務指針2010」が公表され,翌月には従来の「臨床工学技士業務指針」の廃止が厚生労働省から通知された。
 今回の業務指針改定ではいくつもの修正・追加事項があったが,「呼吸治療業務」においても大きな変更点があった。それは,「喀痰等の吸引および動脈留置カテーテルからの採血」および「人工呼吸装置の機能維持および治療効果の評価」が業務内容に新しく加わったことである。
 従来の呼吸治療業務は,患者への関わり方などが特に不明確であり,医療機器である人工呼吸器の保守管理が中心となっていた。今回の改定では医療機器と患者双方の状態を把握する必要性が明記されており,業務の立ち位置がより患者側にシフトしたことになる。すなわち,これからの臨床工学技士は人工呼吸器を装着している患者および装着前後の患者を診る事ができなければならない。
 そこで,指針に示された新しい呼吸治療業務を臨床工学技士の方達が実践するにあたり,新たなガイドブックが必要ではないかと考えた。そしてせっかく作るのであれば,これまでにない呼吸治療の書籍を作りたいと思った。
 本書の執筆は呼吸治療業務を専門とし,現在臨床の場で活躍する臨床工学技士にお願いした。内容は初歩的な解説から始まり,臨床現場で活用して頂けるよう呼吸治療における実践的なアプローチまで掲載している。また,臨床工学技士に不可欠となっている他職種に対する研修業務に関する解説や,病院設備や災害対策なども取り上げた。呼吸治療業務に携わる臨床工学技士の皆さんに
とって必要となる知識は全て網羅されていると考えている。
 本書が新時代の臨床工学技士業務を担う皆様の役に立てれば幸いである。刊行にあたり監修の労を頂いた横浜市立大学附属病院集中治療部の山口修先生,メジカルビュー社の小松氏に心より感謝申し上げる。

2014年1月
横浜市立市民病院 臨床工学部
相嶋一登
全文表示する

目次

Ⅰ 呼吸治療業務の概要
 1 臨床工学技士が行う呼吸治療業務
  臨床工学技士と呼吸治療業務の歴史
  新業務指針の概要とこれからの業務のあり方
  人工呼吸器の保守点検
  医師,看護師らとの情報共有,討議
  患者アセスメント
  気管吸引
  安全管理
Ⅱ 人工呼吸療法の基礎知識〜これからはじめる人のために〜
 1 呼吸生理,解剖
  呼吸コントロールのメカニズム
  化学受容体による呼吸のコントロール
  呼吸器の解剖
  上気道の解剖・生理
  気管から肺胞の解剖・生理
  肺胞の解剖・生理
  呼吸器系の骨格の解剖・生理
  呼吸器系の筋の解剖・生理
  新生児・小児の呼吸のポイント
 2 血液ガスと酸塩基
  動脈血液ガス分析の目的
  測定されたパラメータの意味
  血液ガス
  温度補正
  酸塩基平衡
  アシドーシスとアルカローシス
  電解質
  代謝項目
  オキシメトリ
  血液ガス分析結果の解釈の方法
  静脈血の血液ガス分析の意義
  採血および測定の方法
  感染管理
  最後に
 3 人工呼吸器の基本構成
  人工呼吸器とは?
  人工呼吸器の駆動源と構成
  人工呼吸器による呼吸の仕組み
  定常流と断続流
  トリガとは?
  吸気が何によって制限されるのか? 換気制御方式
  吸気が何によって呼気に切り替わるのか?
 4 気道加温加湿
  気道加温加湿の必要性
  気体における温度・相対湿度・絶対湿度の関連性
  臨床で用いられる加温加湿器とチャンバ
  人工呼吸器に用いられる回路
  その他の回路
  気道加温加湿を行う環境
  NPPV における加温加湿
  呼気側フィルタと超音波ネブライザの併用について
  人工鼻の性能と適応
  在宅人工呼吸治療と人工鼻
  人工鼻の死腔・呼吸抵抗
 5 換気モードとグラフィックモニタ
  強制換気を送る2つの換気様式(PCVとVCV)
  換気モード
  グラフィックモニタ
  まとめ
 6 呼吸管理に必要な各種モニタの知識
  パルスオキシメータの使用目的
  動脈血酸素飽和度とは?
  動脈血酸素含量とは?(CaO2)
  酸素解離曲線
  パルスオキシメータの測定原理
  プローブ装着
  パルスオキシメータの種類
  装着部位
  パルスオキシメータのレスポンス時間の限界
  パルスオキシメータの測定値に影響を及ぼす要因
  灌流指標(PI)
  カプノメータの使用目的
  正常換気
  PaCO2とPETCO2の解離
  測定原理
  カプノグラム
  まとめ
Ⅲ 呼吸治療業務の実践〜臨床工学技士の視点からのアプローチ〜
 1 人工呼吸器装着中の患者アセスメント
  臨床工学技士に求められるアセスメントとは
  患者アセスメントのポイント
  患者アセスメントの流れ
  グラフィックモニタ
  人工呼吸中に起こりうる合併症の所見と発見方法,対処法
  トラブル対応
 2 呼吸管理中の鎮静と鎮痛
  人工呼吸中の鎮静・鎮痛の目的
  鎮静・鎮痛ガイドライン
  鎮静・鎮痛に用いる薬剤
  鎮静・鎮痛およびせん妄などの評価に必要な尺度
  鎮痛・鎮静管理の実際
 3 気管吸引(成人で人工気道を有する患者のための)
  なぜガイドラインができたのか
  ガイドラインで強調されていること
  アセスメント以外でおさえておきたいこと
  気管吸引実施の流れ
  まとめ
  気管吸引ガイドライン2013
 4 人工呼吸器からの離脱
  はじめに
  人工呼吸器離脱のための観察項目:WEANS NOW
  プロトコールに基づく人工呼吸器からの離脱
  離脱後のデバイス
  離脱困難例
 5 非侵襲的陽圧換気(NPPV)
  NPPVの定義
  NPPVのエビデンス
  NPPVに用いる機器とその選択
  NPPVのマスク選択
  NPPVの導入
  導入後の評価
  マスクフィッティング
  心不全患者の睡眠呼吸障害
  睡眠呼吸障害
  閉塞性睡眠時無呼吸
  中枢性睡眠時無呼吸
  中枢性無呼吸が心不全に与える影響
  ASVの働き
 6 酸素療法
  酸素療法とは
  呼吸不全の定義(一部)
  酸素療法に用いる代表的な器具
  従来の酸素療法の考え方
  新しい酸素療法器具
  たくさんある酸素療法の器具,どう使いこなす?
  まとめ
 各種病態に対する呼吸管理の考え方
 7 ARDSと肺保護換気
  ARDSとは
  ARDSの病態生理
  ARDSの新診断基準
  ARDSの予後
  ARDSに対する肺保護換気の目標
  VALIの種類とその原因
  BIPAP®(二相性CPAP)
  APRV
  APRVからの離脱
  肺保護換気のために
  ARDSと肺保護換気のまとめ
 8 術後呼吸管理
  はじめに
  心臓血管手術後患者の特徴
  人工呼吸器管理へ影響を及ぼす術中要素
  人工心肺・人工心肺補助の有無による区分
  健常肺かつ人工心肺を使用していない術後患者
  健常肺かつ人工心肺使用術式の術後患者
  肺疾患既往のある術後呼吸管理
  腎不全患者の術後呼吸管理
  術後無気肺への対応
  循環動態が不安定な場合の注意点
  疼痛管理,疼痛の呼吸への影響
  術後体外循環(PCPS)下での呼吸管理
  人工肺と自己肺との配分をどのように考えるか?
  ミックスゾーンの考え方(3 パターンに大別すると・・・)
  ミックスゾーンを考慮した人工呼吸器設定
  肺保護と循環動態
  補助循環とIRVもしくはAPRV
  補助循環からの離脱と人工呼吸器設定
  まとめ
 9 慢性閉塞性肺疾患の急性増悪
  COPD患者の病態
  COPD患者の身体的特徴
  COPD 急性増悪とは
  酸素療法
  人工呼吸療法
  なぜCOPD 急性増悪にはNPPV なのか?
  COPD患者の人工呼吸治療法(NPPV導入)
  NPPVが根付く風土作りのコツ
  急性増悪後の慢性期に対する管理手法を知る
 10 筋萎縮性側索硬化症に対する在宅人工呼吸の導入
  告知
  導入時指導
  自宅調査
  地域との連携
  災害時対策
  導入例紹介
 11 慢性肺疾患に対する在宅人工呼吸器の導入
  在宅人工呼吸療法の定義
  在宅人工呼吸療法の適応
  在宅人工呼吸の施行状況・患者の内訳
  COPD
  肺結核後遺症
  慢性期のNPPV導入例
  患者・家族への指導
  感染の徴候
  高二酸化炭素血症の症状
  人工呼吸器機種選択
  自己管理の実際
Ⅳ 人工呼吸器に関連する安全管理手法
 1 呼吸療法サポートチーム(RST)の活動
  人工呼吸療法を取り巻く環境とRST
  当院におけるRST の変遷
  RSTメンバー
  RSTの活動内容
  今後の課題
 2 人工呼吸器の保守点検
  改正医療法
  添付文書
  人工呼吸器の管理体制
  人工呼吸器の保守点検
  使用前点検
  使用中点検
  使用後点検
  定期点検
  病院機能評価
 3 病院設備の安全管理
  電気設備
  医用接地方式
  非接地配線方式
  医療ガス
 4 災害対策
  人工呼吸器および関連機器・施設の被災事例
  人工呼吸器の災害対策を行うために
  人工呼吸器の災害対策
  医療ガス設備の災害対策
  発災時の行動
  災害対策マニュアルと訓練について
  在宅人工呼吸療法の被災事例について
  在宅人工呼吸療法の特殊性
  在宅人工呼吸器の災害対策
  各種非常電源について
  これからの予備電源
  関係職種による災害時支援
 5 人工呼吸器に関連するインシデント・アクシデント事例の紹介と解説
  人工呼吸器に関する事故事例の概要
  人工呼吸器回路の接続はずれ事故事例
  事故(自己)抜管の事例
  回路接続間違えの事例
  人工呼吸器のスタンバイ機能に関連した事例
  電源・医療ガスに関する事例
  業務の習慣に関する事例
  人工呼吸器使用中ラウンド ケーススタディ
  人工呼吸器のヒューマンエラーを防止するために
  参考
 6 安全管理研修の目的と開催方法,効果的な成人教育,各施設における研修の取り組み
  はじめに
  改正医療法のなかで示された「研修」の重要性
  研修の問題点〜こんな研修会になっていないだろうか?〜
  大人の学びとは
  研修の開催方法-インストラクショナルデザインの視点から-
  研修設計のまとめ
  研修の取り組み
Ⅴ 付録
 1 人工呼吸器安全管理のための指針(第2版)
  医療機関における人工呼吸器安全管理体制
  人工呼吸療法を施行する部署
 2 臨床工学技士基本業務指針2010(呼吸治療業務)
全文表示する

関連する
オススメ書籍