セラピストのための

機能解剖学的ストレッチング 上肢

機能解剖学的ストレッチング 上肢

■監修 林 典雄

■編著 鵜飼 建志

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  260ページ  オールカラー,イラスト292点,写真601点
  • 2016年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1703-0

在庫僅少です。


関節機能解剖学に基づく筋のストレッチング手技を,多数のカラーイラストと写真で詳説

関節機能解剖学に基づき,筋それぞれの起始と停止,そして走行を確実にとらえ,伸ばすためのストレッチング手技を解説。セラピストが意識すべき指のあて方・ポジショニングまで,多数のカラーイラストと写真で詳説。
2分冊のうち,本書『上肢』編には肩から手指までの内容を収載している。


序文

 学生時代,勉強の嫌いだった私は,解剖学,生理学をはじめとする,膨大な量の医学を細かい所まで勉強する意味がわかりませんでした。勉強しなかったからその意味がわからなかったのかもしれません。
 ただ当時は,まだ理学療法の歴史も浅く,医学的知識を治療技術にどう活かすかが明確ではなかったように思います。勉強した事が何の役に立つのかわからず,勉強させられた事とはあまり関係のないような方法論(メソッド)ばかりが目立っていました。それを好んで学びたがる友人もいましたが,私は「こうやれば良くなる」のような,人の受け売りのメソッドだけを覚える気にはなりませんでした。

 人とのご縁で一般の総合病院からプロ野球チームのメディカルコーチ(トレーナー)になれた私は,チームのため・選手のため日々奮戦していましたが,最速で治すに足る十分な知識・技術に欠けていると感じていました。学生時代の不勉強がいまだに影響していると感じていたのです。
 そんな折,身近なところで活躍している,知識・技術を併せもつ若手リーダーの存在に気がつきました。それが私の理学療法士としての師であり本書監修もご担当いただいた林 典雄先生です。解剖学,生理学,運動学といった理学療法士養成校で習う知識を元に,たちどころに可動域を変え,痛みを取る技術は,理屈を伴った神業でした。深い知識と技術の融合を初めて感じた私は,進んで勉強する気になりました。勉強しなければ治せない,勉強すれば治せるようになる,とわかったからです。

 一流のアスリートを診るにふさわしいセラピストになる決意をした私は,4年間在籍したチームに別れを告げ,林先生が所属する専門学校の教員となり,学生を教えながら基礎から勉強し直すことにしました。林先生の講義を教室の1番後ろで学生と一緒に受講する機会もいただきました。
 専門学校では林先生の実技講義のアシスタントも複数務めましたが,その中に本書技術の基となる「セレクティブストレッチング」がありました。約20年前の話です。解剖学と運動学さえわかれば効果が出せるストレッチングの実技は大変面白く感じました。それまでストレッチングは本に習ってその通りにやるものだと思っていました。しかしこの講義のアシスタントに入ったことにより,筋の走行さえ理解していればストレッチングの手技は自分で創作できるということに気がつきました。
 解剖学が頭に入るたびに技術が増していき,固定の仕方,持ち方などを工夫することで不快感が減り,伸び方も格段に上がるようになりました。林先生と私では体格が違うので,私にあったやり方も編み出すようになり,さらに独自のアレンジも加えるようになりました。この講義で徐々に技術が洗練されたことで,それまでの力任せの治療技術から,力を封印した優しいタッチの治療技術に手つきが変わってきました。
 しばらくして林先生からこの講義を引き継ぎました。講義形式を少し変え,まずは学生に考えさせるようにしました。自分がそうだったように,教えてもらうだけよりも,自分でストレッチング法を創り出すほうが楽しいと感じたからです。この頃の学生は概ね向上心が高く,この講義スタイルを楽しみ,友人たちとディスカッションしながらいいストレッチング方法を見つけようと試行錯誤してくれました。外来講師になってからもこの講義はその専門学校で人気ナンバーワンを続けました。講演でストレッチングを取り扱う場合にも,自分で考えるスタイルを取り入れています。
 このストレッチング技術は,林先生が生み出し,私が育てたものに,歴代の学生や現役理学療法士のアイデアも少しずつ含まれた集大成といえます。

 本書の立ち位置は,メジカルビュー社刊行の『改訂第2版 運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢,下肢・体幹(林 典雄 著)』(以下,触診技術)と,『改訂第2版 関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹,下肢(整形外科リハビリテーション学会 編)』(以下,ナビゲーション)の間に位置する,橋渡し的な書籍だと考えています。
 触診技術で用いる触診方法は収縮や伸張を利用しているので,本書のような応用をすれば治療として使えます。ナビゲーションで用いている治療は,患部保護などさまざまな制約のためにひと手間ふた手間が加わっていますが,本書ではその制約を除いた基本的な技術をシンプルに紹介しており,理解しやすくなっていると思います。
 本書は両書籍の隙間を埋めるべく,写真をふんだんに使い,詳細な技術を順を追って丁寧に説明しています。触診技術をどう治療に役立てるのか,ナビゲーションを読んでもなぜそのように治療するのかがわからなかった場合も,本書を読んでいただいた後ならきっと理解できるでしょう。もちろん両書籍の所有の有無にかかわらず,本書単独でも利用価値の高い本になっていると自負しています。ストレッチングのメソッドを真似るだけではなく,知識を技術に変換し,評価や治療技術を自分で創作する方法を本書から読み取っていただけたら幸いです。

 最後に,本書執筆の機会を作っていただきました整形外科医の加藤 明先生,半生にわたる恩師である林 典雄先生,いつも優しくご指導いただいている浅野昭裕先生,学生時代からの頼れる盟友である岸田敏嗣先生,整形外科リハビリテーション学会の仲間たち,トレーナーとしての師である亀卦川正範先生,スポーツ領域の理学療法士としての道を作っていただきました浦辺幸夫先生・小林寛和先生,本書の誌面作成にご尽力いただき,度重なる執筆の遅れにも完成まで忍耐強く励ましていただきましたメジカルビュー社の間宮卓治さん,写真撮影にご協力いただいた中村桃子さん・堀内奈緒美さん・山中咲陽子さん,そのほか書ききれませんがお世話になった多くの方々,患者さん,選手やスポーツ指導者の方々,教え子たちに深く感謝いたします。
 そして私の好き放題の人生を広い心で許容し,私と子供達の成長を支えてくれた妻陽子にもこの場を借りて深く感謝致します。
 そして本書を1年間の闘病の末,2016年1月16日に膵臓癌で他界した母宏子に捧げます。

2016年9月
中部学院大学 鵜飼建志
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目次

第Ⅰ章 概論
 1 ストレッチングとは,概要
 2 筋の運動学
 3 ストレッチングの運動学
 4 ストレッチングで期待できる効果
 5 セレクティブストレッチングの基本的な考え方 −多関節筋と単関節筋の分け方
 6 セレクティブストレッチングの手順
 7 ストレッチングでの把持の仕方 −握らないことの重要性
 8 セレクティブストレッチングの臨床応用例
 9 セレクティブストレッチングの応用
 10 本書の理想的な利用の仕方
 11 本書ストレッチング写真上の矢印・囲みの表記ルールについて

第Ⅱ章 ストレッチングの実際
1 肩甲胸郭関節の筋
 僧帽筋上部線維
 僧帽筋中部線維
 僧帽筋下部線維
 大・小菱形筋
 肩甲挙筋
 小胸筋
 前鋸筋
2 肩甲上腕関節の筋
 三角筋前部線維
 三角筋中部線維
 三角筋後部線維
 大胸筋鎖骨部線維
 大胸筋胸肋部線維
 大胸筋腹部線維
 棘上筋
 棘下筋
 大円筋
 肩甲下筋
 小円筋
 広背筋
3 肘関節の筋
 烏口腕筋
 上腕二頭筋長頭
 上腕二頭筋短頭
 上腕筋
 腕橈骨筋
 上腕三頭筋長頭
 上腕三頭筋外側頭・内側頭
 円回内筋
4 手関節および手指の筋
 長掌筋
 橈側手根屈筋
 尺側手根屈筋
 長橈側手根伸筋
 短橈側手根伸筋
 尺側手根伸筋
 総指伸筋
 示指伸筋
 小指伸筋
 長母指伸筋
 短母指伸筋
 長母指外転筋
 浅指屈筋
 深指屈筋
 長母指屈筋
 短母指屈筋
 短母指外転筋
 母指内転筋
 母指対立筋
 小指外転筋
 短小指屈筋
 小指対立筋
 虫様筋,背側骨間筋,掌側骨間筋

上肢筋の起始・停止一覧
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