産婦人科・新生児領域の血液疾患 診療の手引き

産婦人科・新生児領域の血液疾患 診療の手引き

■編集 日本産婦人科・新生児血液学会

定価 6,380円(税込) (本体5,800円+税)
  • B5判  180ページ  2色
  • 2017年7月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-1747-4

周産期に携わる医師必携! 知っておかねばならない血液疾患の実践的な知識が理解できる書籍

代表的な妊産婦の死亡要因である「分娩時の大量出血」や「妊婦の血栓」など,迅速な対応が要求される周産期における血液疾患の知識を広めるために刊行された,日本産婦人科・新生児血液学会編の指針。
周産期に携わる医師として,知っておかねばならない血液疾患の知識を総論的に解説した上で,CQをベースとして実践的な知識をわかりやすく,すぐに確認・理解ができる書籍である。


序文

刊行にあたって

 日本産婦人科・新生児血液学会は,産婦人科医と新生児科・小児科医が共に血液学に関するテーマ,すなわち,妊娠,分娩,産褥,胎児,新生児,および婦人科でも血液に関連する話題に特化した研究や全国調査などを行い,診療ガイドラインにはあまり取り上げられないような稀有な疾患を啓発することを主な役割として活動しています。学会ホームページには,「出血と血栓-死亡ゼロを目指して-」という学会の理念ともいうべきスローガンが記載されています。
 現在学会ホームページには,お母さんと赤ちゃんに影響する血液に関係する疾患について,患者さんやそのご家族のご理解の助けとなることを目的としてQ&Aが公開されています。このQ&Aの対象はあくまでも一般の方でありますが,今回の手引きは,医師向け,医師と言ってもエキスパート向けに「産婦人科・新生児領域の血液疾患診療の手引き」を刊行することになりました。
 近年,学会や厚生労働省研究班などから様々な診療ガイドラインが発刊されています。ガイドラインは一般的にエビデンスに基づく標準的な治療の目安であり,臨床医の日頃の診療に欠かせないものです。しかし,症例数が少ない稀少疾患ではエビデンス自体が乏しいため,エビデンスに基づくガイドラインを作成することが困難です。しかし,稀有な疾患であればあるほど,経験豊富な専門医の適切なオピニオンが求められます。そこで日本産婦人科・新生児血液学会編集委員会では,これらの要望に応えるべく6年前よりエキスパート向けの診療ガイドライン作成を企画し,この度発刊するに至りました。この「診療の手引き」は,ガイドラインというよりもガイドラインには記載されていない比較的稀有かつ重篤な産科ならびに新生児・小児科の血液疾患,その中でも出血,血栓および血液型不適合に特化して,研修医や一般臨床医から助言を求められたときに役立つよう,本領域に経験豊かなエキスパートの諸先生方に執筆して頂きました。
 本書に記載されている稀有な血液疾患で苦しむ母児の命に光を与えられる,先生方にとっての座右の書となっていただければ幸甚です。

2017年6月
日本産婦人科・新生児血液学会
前理事長 小林隆夫
理事長 瀧 正志

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序文

 近年診療ガイドラインに沿った診療が普及しています。産科領域では,産婦人科診療ガイドライン産科編に「現時点でコンセンサスが得られた適正な標準的産科診断・管理法」が示されて,これを利用した産科診療が広く浸透しています。専門医とは「適切な教育を受け,標準的な医療を提供し,患者から信頼される医師」と定義されています。したがって「産婦人科診療ガイドライン 産科編」に示された推奨は,専門研修を終了して産婦人科専門医となった医師が実施可能な診断・管理法と考えることができます。専門医は,医師として一人前となった称号ですが,終着点ではありません。高いレベルの診療を提供するには,一般的なガイドラインでは十分とは言えず,それぞれの専門書を参考にしたり,エキスパートの講演を聞いたりします。これにより医師としてもさらなる高みに立つこともできます。
 産科は古くから“bloody business” と呼ばれ,またビタミンK欠乏性出血症が多くの新生児の命を奪ってきたように,産婦人科・新生児領域には血液に関連した生命を危険に晒す多数の疾患が存在します。先達によるこれら疾患の研究と管理によって克服され,わが国は世界最高水準の医療提供にまで辿り着くことができています。こうした疾患の管理は,標準的診療のみで完結させることが困難です。
 本書は,日常診療で遭遇する産婦人科・新生児領域の血液に関係する疾患の管理に役立てることを目的として,日本産婦人科・新生児血液学会が編集した,エキスパートの執筆による16項目に亘る血液疾患診療の手引きです。その内容は,前述した一般的な診療ガイドラインを踏まえて,さらに高いレベルの診療の参考になることを目指しています。診療ガイドラインではエキスパートの意見はエビデンスとして相応しくないとされていますが,専門性の高い領域の診療は,ガイドラインでは推奨できないテーマも多く,エキスパートが執筆した書を参考にすることは重要なことです。こうした書を参考にした診療は,医療者と患者・家族との相互理解を助けることも期待できます。
 さらにエキスパートの執筆によるこの書で読者は,「既知と未知」の境界を明確にすることができます。すでにコンセンサスが得られた領域なのか,まだ十分に研究されていない領域なのかを知ることは,今後の医学研究についても,示唆を与えることになるでしょう。
 本書を参考にすることにより,産婦人科・新生児領域の血液疾患に関して適切な診療が普及することを期待します。

2017年6月
日本産婦人科・新生児血液学会 編集委員長
順天堂大学医学部産婦人科学講座教授
板倉敦夫
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目次

■先天性血液凝固・線溶異常合併妊娠
先天性血液凝固異常合併妊娠
 総論
  general recommendation/妊娠時の総循環血液量・血漿量の変化と補充量/凝固因子活性あるいは量の血中半減期と補充間隔
 まれな先天性血液凝固異常合併妊娠
  第XIII因子subunit A 欠損症/先天性フィブリノゲン欠損症/第II因子(プロトロンビン)欠損症/第X因子欠損症/第V因子欠損症/第VII因子欠損症/第XI因子欠損症/第XII因子欠損症
 血友病合併妊娠
先天性血液線溶異常合併妊娠
  α 2-PI 欠損症/PAI-1 欠損症
  【CQ 1】 先天性第 因子欠損症に対する妊娠時の補充療法には,何が用いられるか?
  【CQ 2】 先天性プロトロンビン欠損症に対する妊娠時の補充療法は,いつから開始することが妥当か?
  【CQ 3】 先天性第Ⅹ因子欠損症に対する妊娠時の補充療法は,いつから開始することが妥当か?
  【CQ 4】 先天性第Ⅺ因子欠損症に対する妊娠時の補充療法には,何が用いられるか?

■特発性血小板減少性紫斑病(ITP)合併妊娠
  病態および疫学/機序/診断/管理法/新生児の転帰
  【CQ 1】 ITPと診断されているが,妊娠は可能か?
  【CQ 2】 妊娠性血小板減少症(GT)とITPはどちらも除外診断であるが,鑑別の留意点はどのようなものがあるか?
  【CQ 3】 妊娠時のITP の標準治療の詳細,無効のときの対応は?
  【CQ 4】 新生児の管理はどのようにすればよいか?

■全身性エリテマトーデス(SLE)合併妊娠
  病態/管理
  【CQ 1】 SLE合併妊娠で留意すべき産科合併症は?
  【CQ 2】 SLE合併妊娠で留意すべき児への影響は?
  【CQ 3】 SLE合併妊娠を管理するうえで,評価すべき検査項目は?

■抗リン脂質抗体症候群(APS)合併妊娠
  病態/流・死産を起こす機序/管理法
  【CQ 1】 産科抗リン脂質抗体症候群を疑ったら,何を測定すればよいか?
  【CQ 2】 診断基準の妊娠合併症のほか,どのようなときに抗リン脂質抗体を調べるか?
  【CQ 3】 抗リン脂質抗体偶発例の扱いはどうするか?

■血液型不適合ならびに不規則抗体陽性妊娠
  病態・妊娠初期の管理/Rh(D)以外のRh血液型不適合妊娠,および抗Rh 以外の血液型不適合妊娠/新生児への対応
  【CQ 1】 以前すでに,不規則抗体陽性で,重症HDFNにより胎児水腫や新生児死亡の既往をもつ妊娠は,どのように対応すればよいか?
  【CQ 2】 Rh(−),胞状奇胎であった。抗D人免疫グロブリンの投与をどうするか?

■血栓塞栓症合併妊娠
  病態/診断/管理法
  【CQ 1】 ヘパリン投与中に注意することは?
  【CQ 2】 妊娠・産褥期の女性に対するDOAC(直接経口抗凝固薬)の投与は?
  【CQ 3】 血栓性素因を有する妊婦への対応は?
  【CQ 4】 機械弁置換術を受けている妊婦に対する抗凝固療法は?

■羊水塞栓症
  病型と病因・病態/管理法/対応と治療/予防
  【CQ 1】 羊水塞栓症の主な病型は?
  【CQ 2】 羊水塞栓症の初期では出血量に見合わない低血圧,出血量に見合わないDICが観察される病態は?
  【CQ 3】 初期血液検査のポイントは?
  【CQ 4】 羊水塞栓症のDIC対策で重要なポイントは?

■血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)
 血栓性微小血管症(TMA)の鑑別診断
 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
  先天性TTP(Upshaw-Schulman syndrome;USS)/後天性TTP
 溶血性尿毒症症候群(HUS)
  典型HUS(STEC-HUS)/非典型HUS〔aHUS(C-HUS/C-TMA)〕
  【CQ 1】 USS患者が胎児として母体内にいるときはTMA発作を起こさないが,生後間もなく重症黄疸と血小板減少を伴ったTMA 発作を呈するのはなぜか?
  【CQ 2】 USS患者が女性の場合,妊娠時に流産や死産などの不育症を呈するのが多いといわれているが,これはなぜか?
  【CQ 3】 USSの患者数はどのくらいか? また,妊娠以外のTMA症状増悪因子は何か?
  【CQ 4】 TTPの診断に必須のADAMTS13活性測定と,診断後の治療のポイントは何か?
  【CQ 5】 「 TTP患者への血小板輸血は一般に禁忌」といわれているが,それはなぜか?
  【CQ 6】 aHUSの具体的な診断法は?

■HELLP 症候群,急性妊娠脂肪肝(AFLP)
  HELLP 症候群とAFLP 診断/病態/管理
  【CQ 1】 血小板数が正常範囲内でも,AT 活性が低下している場合は肝機能異常を示しやすいか?
  【CQ 2】 どのような場合にAT活性を測定するか?
  【CQ 3】 妊娠中に血小板数低下あるいはAT活性低下が認められ,ヘマトクリット高値(>40%)が認められた場合,輸液が奏効するか?
  【CQ 4】 分娩後に乏尿に気づいた。利尿薬を使用するのはどうか?

■脳出血
  病態/管理法
  【CQ 1】 妊娠中の脳動静脈奇形やもやもや病による脳出血と妊娠高血圧症候群による脳出血の臨床像に違いはあるか?
  【CQ 2】 脳出血の発症は妊娠中,分娩中,産褥期のどの時期が多いのか? その背景に違いはあるか?

■分娩時大量出血
  病態/診断/管理法
  【CQ 1】 分娩後出血例で子宮腔内バルーンタンポナーデテストはいつから始めればよいか?
  【CQ 2】 出血量をより正確に把握するためには,何をすればよいか?
  【CQ 3】 救急科が設置されていない施設での大量出血への対応は?

■産科DIC
  病態/診断/管理法
  【CQ 1】 子宮収縮薬の使用法は?
  【CQ 2】 産科DICの治療開始基準は?
  【CQ 3】 産科DICに対する有効な治療法は?

■新生児播種性血管内凝固症候群(DIC)
  機序と病態/管理法
  【CQ 1】 新生児がDICにかかりやすい理由は?
  【CQ 2】 新生児のDIC発症頻度は?
  【CQ 3】 新生児DICの特徴は?
  【CQ 4】 治療開始の目安と選択すべき治療は?

■同種免疫性新生児血小板減少症(NAIT)
  病態/管理法
  【CQ 1】 母体への静注用ガンマグロブリン投与は,胎児血小板同種免疫性血小板減少症に起因する頭蓋内出血や新生児出血性疾患の防止に有用か?
  【CQ 2】 出生直後からの血小板低下に対しても,血小板特異抗原同型の血小板製剤を輸血しなければならないか?

■新生児血栓症
  病態/疫学/診断と治療
  【CQ 1】 新生児期に発症する血栓症の危険因子は?
  【CQ 2】 新生児血栓症を疑ったときに行うべき検査は?
  【CQ 3】 新生児電撃性紫斑病(PF)に対して行う治療は?

■ビタミンK 欠乏性出血症
  発症機序/病態
  【CQ 1】 母体の基礎疾患が原因と考えられる胎児・新生児ビタミンK欠乏性出血症の特徴は?
  【CQ 2】 週1回の予防投与で,胆道閉鎖症などに合併する二次性乳児ビタミンK 欠乏性出血症を予防できるか?
  【CQ 3】 週1回投与の場合,診療現場での処方の仕方は?
  【CQ 4】 ビタミンK製剤の投与は保険請求できるか?

資料 新生児DIC診断・治療指針 2016 年版
資料 エキスパートの意見に基づく血友病周産期管理指針 2017年版
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