基礎と臨床の両側面からみた

胎盤学

胎盤学

■編集 日本胎盤学会

定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
  • B5判  448ページ  オールカラー,イラスト76点,写真351点
  • 2019年12月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-1762-7

「答え」は胎盤の中にある。基礎と臨床を駆け巡る解説,胸躍る遺伝子の展開,「胎盤」はこんなにも深かった!

産婦人科医にとって胎盤を理解することは,妊娠とその疾患を,さらには不妊や児の予後を理解することである。近年,MRIや超音波の機器の向上に伴って妊娠中の胎盤を妊婦の管理に応用したり,遺伝子工学の分野での発展により胎盤研究も進み,胎盤の理解は大きく変化した。本書は,日本胎盤学会が,これら新しい知見に基づいて基礎と臨床の両輪から編んだ,最新の胎盤学である。
産婦人科医が知りたかった胎盤のすべてがここにある!


序文

刊行に寄せて

 この度,胎盤学の基礎と臨床,さらに最近のトピックを網羅した新しい刊行本『基礎と臨床の両側面からみた胎盤学』が,日本胎盤学会編集のもと発刊するに至った。これまでにも胎盤に関する本はそれほど多くはないが,形態学や病理学に関する優れた書籍がいくつか刊行されている。しかし,新書は永らく発刊されておらず,学問の進歩とともに新しい知識を加えた学術書を求める声も少なからず耳にしていた。そのような折,メジカルビュー社から胎盤に関する新しい学術書の作成依頼のお話を戴いた。
 胎盤は,母体と胎児の間に存在して多くの役割を果たしている重要な臓器であるが,その役割についてはいまだ未知の部分が多く残されている神秘的な臓器でもある。その謎を解明するには,従来の知識に加え最新の知識を集約することが重要であり,産婦人科医だけではなく多くの基礎研究者との連携も大切であると考える。
 今回新たに刊行される本書は,すでに確立された形態学や最新の臨床における診断・治療から,胎盤に関する新しいトピックまで幅広い分野での薀蓄が詰め込まれた今までにない新しいタイプの学術書である。本書は,産科に携わる多くの若手医師やこれから胎盤に興味をもち研究を始める研究者,そしてこれまで胎盤を研究してきた研究者にとっても間違いなく必需の一冊となるであろう。このような学術書を日本胎盤学会において編集発刊することができたことは,我々胎盤学に携わる者にとってこの上ない喜びである。
 今回の学術書作成にあたり,本学会の齋藤 滋 学術担当常務理事には内容・テーマの構成および執筆者の選考などに多大なるご尽力を戴いた。この場を借りて深甚なる敬意と感謝を申し上げる。また,ご執筆された先生がたには,お忙しいなかで短期間に原稿を仕上げていただき心より感謝申し上げる。最後に,本書の編集にあたり多大のご迷惑をおかけした,メジカルビュー社編集部の浅見直博氏ならびに工藤亮子氏に厚く御礼申し上げたい。

令和 元年11月吉日
日本胎盤学会 理事長
井坂惠一

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序文

 胎盤は母と子をつなぐ重要な臓器であるにもかかわらず,これまで基礎と臨床の両側面から解説する専門書は皆無でした。2 0 1 8年の日本胎盤学会理事会で,学会として胎盤学の編集を行いたいということが井坂惠一理事長より提案され,私,齋藤 滋が編集を担当することになりました。私が胎盤のことを研究した際には,国内の胎盤に関する専門書がなく,海外の専門書も専門的すぎて初心者には理解しづらかった経験があります。また,図や写真が少なく文章のみで,初心者には理解しにくかった苦い経験がありました。一流の基礎研究者,臨床医においても,最新の基礎的な胎盤学,臨床胎盤学を学びたいと切望しています。そのため,まずは項目と担当執筆者一覧表を作成し,日本胎盤学会理事の先生方の支援を得て「基礎と臨床の両側面からみた胎盤学」を発行することになりました。
 本書では,①基礎と臨床の両側面から胎盤のことを理解する,②なるべく写真や図を多くして理解しやすくする,③日本のトップ研究者に執筆を依頼する,④日本胎盤学会が編集することにより学術的な質を担保する,⑤できるだけ購入しやすい価格設定とし多くの研究者,臨床医に本書を利用してもらう,ことにいたしました。今回,6 2名の先生方に執筆をお願いし,5 8編に及ぶ胎盤のすべての領域につき解説していただきました。
 私もすべての原稿に目を通しましたが,最新の知識を学ぶことができ,本書の有用性を確信しました。
 ぜひとも本書を利用していただき,最新の研究成果を日本胎盤学会もしくはIFPA(国際胎盤学会)で発表していただきたいと存じます。皆様の「胎盤」に関する関心が高まり,胎盤学が益々発展することを願っております。
 最後になりますが,本書の作成にあたりご尽力いただいたメジカルビュー社の浅見直博氏,工藤亮子氏に感謝いたします。

2019年11月 吉日
日本胎盤学会常務理事 学術担当
富山大学長  齋藤 滋 
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目次

Ⅰ章 胎盤を知るための基礎知識
 1 胎盤とは
   胎盤とは
   哺乳動物胎盤の型式と分類
 2 胎盤の発生
   胎盤を構成する細胞の種類
   カーネギー発生段階(CS)分類に基づく胎盤の形態発生
   胎盤の分子発生
 3 胎盤の電顕所見
   胎盤学における電顕解析
   電顕解析のポイント
   正常胎盤の構造
   異常妊娠における電顕所見
 4 娩出胎盤の診断(マクロの見方)
  ■ 診断の準備
   なぜ胎盤をみるのか
   胎盤病理の進化
   実際の道具— 包丁とまな板(切り出し用ナイフとボード)
  ■ 臍帯の見方
   なぜ臍帯を見るのか
   超音波診断でリスクを予測する妊娠初期のスクリーニング
   肉眼所見の取り方のコツ
   その他の臍帯異常と周産期異常
  ■ 卵膜の見方
   色調
   羊膜結節
   羊膜剥離
   肥厚
  ■ 胎盤重量と容積測定
   胎盤計測からみた病理検査の必要性
   実際の胎盤重量
   胎盤の病理検査の現状と胎盤重量から推測されるリスク
   測定のこだわり
  ■ 胎盤胎児面の見方
   形態
   色調
   血管
   その他の所見
  ■ 胎盤母体面の見方
   色調
   白色病変
   血腫
  ■ 胎盤割面の見方
   色調
   白色梗塞
   血栓
   血腫
   腫瘤
  ■ 組織学的検査
   どの胎盤を検査するのか?
   組織学的検査をして何が得られるのか?
   malperfusion
  ■ 多胎胎盤の見方
   肉眼所見の手順
 5 病理診断アトラス(ミクロの見方) 
     絨毛,卵膜,胎児母体血,胎児面,母体面,臍帯
 6 物質交換
   胎盤関門の実体
   グルコース輸送体
   アミノ酸輸送体
   有機イオン輸送体
   排出輸送体
 7 脱落膜の機能
  ■ 脱落膜(細胞)の役割
   子宮内膜間質細胞の脱落膜化
   脱落膜と胎盤との関係
   妊娠成立過程における脱落膜化の意義
   脱落膜化の異常と妊娠高血圧症候群(HDP)との関係
  ■ 母子間免疫
   脱落膜中と末梢血中のリンパ球構成の差
   免疫学的にみた妊娠維持機構
   制御性T(Treg)細胞と妊娠維持
   妊娠免疫と癌免疫の類似性
   
Ⅱ章 胎盤の臨床
 1 妊娠中の胎盤診断
  ■ MRI
   適応と検査時の注意点
   撮像法
   正常像
   異常像
  ■ 超音波診断
   経腹超音波による観察の流れ
   基本的な観察方法
   アプリケーションを用いた観察方法
 2 前置胎盤・癒着胎盤
  ■ 超音波診断
   前置胎盤,癒着胎盤の現在
   癒着胎盤(前置胎盤の有無は問わず)の術前診断に有用な超音波所見
   前置癒着胎盤の術前予測に関するこれまでの筆者らの研究成果
  ■ MRI
   前置胎盤,癒着胎盤の管理
   MRI 検査
  ■ 帝王切開
   前置胎盤,前置癒着胎盤の妊娠管理
   前置胎盤,前置癒着胎盤の分娩管理
   子宮底部横切開法
 3 常位胎盤早期剥離
   胎盤病理を基本とした胎盤早期剥離の分類
   常位胎盤早期剥離の臨床診断
   常位胎盤早期剥離の管理
 4 chronic abruption-oligohydramnion sequence(CAOS)
   chronic abruption-oligohydramnion sequence(CAOS)
   CAOS を発症した31 例の胎盤の分類
   胎盤辺縁部の脱落膜炎と出血
   CAOS の疫学・診断・予後
   CAOS の管理と治療について
   CAOS の病態と頻度
 5 胎盤機能不全
   胎盤病理
   臨床からみた胎盤機能不全と高度FGR の至適分娩時期
   症例で考える胎盤機能不全
 6 妊娠高血圧症候群
   正常妊娠における胎盤形成
   妊娠高血圧腎症(PE)における胎盤形成
   PE で胎盤形成不全となる機序
   妊娠初期から低用量アスピリン投与によるPE 予防マーカー
 7 妊娠高血圧腎症の予知
   妊娠高血圧腎症とは
   PE に関する基礎研究
   妊娠初期におけるPE ハイリスク妊婦の同定
   妊娠中期~後期前半におけるPE 発症閾値を用いた切迫したPE の発症予知
   PE 疑い例におけるsFlt-1/PlGF 比> 38 を用いた切迫したPE の発症予知
   PE 発症予知法を利用した低用量アスピリン(LDA)投与効果
   PE 発症予知における課題と展望
 8 前期破水の機序と修復
   前期破水pPROM の機序
   前期破水の修復・治癒機構-マウス前期破水モデルの解析
   ヒトでの前期破水の治癒の可能性
 9 早産
  ■ 胎盤と自然早産
   胎盤と絨毛膜羊膜と早産の関係
   組織学的絨毛膜羊膜炎
   組織学的絨毛膜羊膜炎の診断
   新生児予後について
   出生前に組織学的絨毛膜羊膜炎を判断する方法
   治療
  ■ 慢性歯性感染症と早産
   歯周炎と早産について
   歯周炎が早産に影響を及ぼすメカニズム
   In vitro の研究
   動物モデルを用いた研究
 10 胎盤と流産
   自然流産
   自然流産の原因
   流産の病理学
 11 多胎妊娠
   双胎の卵性と膜性
   膜性による胎盤の特徴
   一絨毛膜胎盤における吻合血管
   一絨毛膜胎盤における吻合血管の観察方法 Color dye injection test
   一絨毛膜胎盤における臍帯の異常
   一絨毛膜双胎特有の病的状態
 12 絨毛膜羊膜炎
   絨毛膜羊膜炎の病態
   絨毛膜羊膜炎の関連疾患
   絨毛膜羊膜炎の診断
   絨毛膜羊膜炎の管理
 13 死産の胎盤
   死産の疫学
   死産になった胎盤はいかなるものか?
   死産の胎盤病理の日米の比較
   胎盤検査の現状と今後の胎盤病理
   これからの胎盤病理
 14 母子感染と胎盤
   サイトメガロウイルス(CMV)
   パルボウイルス
   風疹
   リステリア感染症
   トキソプラズマ症
   結核
   梅毒
   水痘
   コクサッキーウイルス
   マラリア
 15 糖代謝異常と胎盤
   妊娠中に取り扱う糖代謝異常
   母体糖代謝異常による母児合併症
   母体糖代謝異常による胎盤所見と機能の変化
   高血糖の胎盤機能への影響
 16 villitis of unknown etiology
   villitis of unknown etiology(VUE)とは
   免疫寛容とVUE の病態
   VUE の病理組織像・Grade 分類
   VUE の臨床像
   VUE の症例
 17 母体血漿中胎児由来DNA を用いた出生前検査
   母体血漿中胎児cfDNA の由来
   母体血漿中胎児cfDNA の濃度
   母体血胎児染色体検査(NIPT)
   母体血漿中cfDNA の出生前検査以外での活用
 18 胎盤由来mRNA と疾患
   血漿中における胎盤由来mRNA の特徴
   胎盤由来mRNA と疾患
   今後の展望
 19 絨毛性疾患
  ■ 絨毛性疾患の臨床的分類,診断,治療,最近のトピックス
   絨毛性疾患の臨床的分類
   胞状奇胎
   絨毛性腫瘍
  ■ 胞状奇胎の画像診断
   変容する胞状奇胎の臨床像
   全胞状奇胎
   部分胞状奇胎
  ■ 絨毛性疾患の病理
   胞状奇胎
   腫瘍性病変
   中間型トロホブラスト腫瘍
   非腫瘍性病変
  ■ 胞状奇胎の遺伝学的診断
   胞状奇胎の細胞遺伝学的構成
   STR 多型解析による遺伝学的診断
   STR 多型解析の応用
   遺伝学的診断のピットフォール
   展望
   
Ⅲ章 胎盤をより詳しく知るために(ホットトピックス)
 1 胎盤の遺伝子工学的応用 perinatal stem cell
   ヒト胎盤幹(TS)細胞
   ヒトTS 細胞の細胞遺伝的特徴
   ヒトTS 細胞のエピジェネティックな特徴
   免疫不全マウスへのヒトTS 細胞の移植
   遺伝子工学的技術の応用
 2 胎盤と内在性レトロウイルス
   細胞融合遺伝子 syncytin-1 ,syncytin-2
   細胞融合抑制遺伝子 suppressyn
 3 胎盤からの細胞株樹立
   栄養膜細胞の種類
   培養細胞の種類
   栄養膜細胞株
   絨毛癌細胞株
   栄養膜細胞不死化細胞株
   元となる栄養膜細胞の分離
   遺伝子導入
   不死化した細胞の培養・単離,性質の確認
   初代培養栄養膜細胞
   初代栄養膜細胞の培養
 4 インプリンティング異常
   ゲノムインプリンティングとDNA メチル化
   インプリンティング異常と疾患
 5 胎盤のホルモン産生
   ステロイドホルモン
   合成経路
   黄体ホルモンの作用
   エストロゲンの作用
   エストロゲン測定の臨床的意義
   ヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)
 6 胎盤とオートファジー
   オートファジーとは?
   オートファジーの胎盤形成への役割
   オートファジー不全と妊娠高血圧腎症(PE)
   オートファジーと妊娠関連疾患
   オートファジーと胎盤:今後の展望
 7 エピゲノム進化 
    -胎盤の発生に必要とされる遺伝子群とそのエピジェネティックな制御
   哺乳類進化と胎盤獲得のエピゲノム
   DNA メチル化酵素
   X 染色体不活性化
   胎盤mRNA のメチル化と胎児発育や周産期疾患との関連
 8 ナノマテリアルの胎盤移行性と胎盤毒性
   ナノマテリアルの台頭と,安全性への懸念
   ナノマテリアルの胎盤移行性
   ナノマテリアルによる胎盤毒性
 9 胎盤絨毛マクロファージ
   胎盤絨毛マクロファージの形態と起源
   絨毛マクロファージの生理機能
   胎盤絨毛マクロファージと周産期疾患
 10 樹状細胞と流・早産
   妊娠維持と免疫バランス
   樹状細胞の機能とサブタイプ
   樹状細胞の役割~その功罪
   樹状細胞制御と新しい流・早産治療へ
 11 陣痛とプロスタグランジン
   プロスタグランジン受容体とその作用
   プロスタグランジンと妊娠・分娩
   プロスタグランジンと関連する製剤
   これからの分娩誘発
 12 胎盤とインフラマソーム
   妊娠における免疫の関与
   インフラマソームとは
   胎盤におけるNLRP3 インフラマソーム
   異常妊娠におけるNLRP3 インフラマソーム
 13 胎盤特異的遺伝子導入
   ウイルスベクター
   初期胚への遺伝子導入
   胎盤特異的な遺伝子導入
   遺伝子発現補完による胎盤異常の遺伝子治療モデル
   遺伝子機能喪失型モデルによる胎盤特異的な遺伝子機能解析
   胎盤特異的遺伝子操作による妊娠高血圧症候群モデル
 14 胎盤由来miRNA
   胎盤由来miRNA
   胎盤の生理機能に関与するmiRNA
   妊娠高血圧腎症における胎盤miRNA の発現異常
   妊娠高血圧腎症の予知マーカーとしての血漿中の胎盤由来miRNA
 15 絨毛性腫瘍とhCG の糖鎖修飾
   H-hCG と糖転移酵素の役割
   ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
   hyperglycosylated hCG(H-hCG)
   絨毛性疾患におけるhCG 糖鎖の多様性と糖転移酵素
 16 絨毛性腫瘍の免疫寛容と標的免疫治療
   免疫学的にみた絨毛性腫瘍の特徴
   絨毛性腫瘍が免疫寛容を獲得するメカニズム
   絨毛性腫瘍におけるindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現と役割
   絨毛性腫瘍におけるprogrammed cell death 1 ligand 1(PD-L1)の発現
   絨毛性腫瘍におけるIDO,PD-L1 による免疫寛容とその標的免疫治療の展望
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