日本医師会生涯教育シリーズ

災害医療2020

大規模イベント,テロ対応を含めて

日本医師会編

災害医療2020

■監修 横田 裕行

■編集 大友 康裕
小井土 雄一
山口 芳裕
跡見 裕
石川 広己

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  376ページ  2色(一部カラー)
  • 2020年7月10日刊行
  • ISBN978-4-7583-1780-1

最新の知見を網羅した災害医療テキスト

災害医療の概念や基礎知識,現場での判断や対応,人為災害や自然災害,オリンピックなどの大規模イベントでの医療対応の考え方について示した一冊。


序文



 「東京2020 オリンピック・パラリンピック」が,新型コロナウイルス感染症の蔓延による世界的な感染者増大により,開催目前に延期となった.東日本大震災(2011 年),御嶽山噴火(2014年),熊本地震(2016 年),九州北部豪雨(2017 年),そして今年の新型コロナウイルスの蔓延も災害と考えるのであれば,ここ10 年の間に予想もつかない災害が立て続けに私たちの身に降りかかってきている.災害大国日本と言われる所以である.
 1959 年の伊勢湾台風による甚大な被害を被ったことをきっかけとして,日本の災害対策基本法(1961 年制定)が制定された.本法では災害を「暴風,竜巻,豪雨,豪雪,洪水,崖崩れ,土石流,高潮,地震,津波,噴火,地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と定義している.
 今回の本書『災害医療2020−大規模イベント,テロ対応を含めて』は上記基本法の定義にある災害がいつ起こるかわからない現状の中で,災害が起きた際に,災害派遣医療チームによるどのような医療体制・医療行為が行われているのか,疾患別の対応はどうするのか,また被災者の災害ストレスなど個別対応の必要なケアも含め,何が必要とされているのか現状を知り,実際に行ううえで必須の知識をお手元に届けられると考える.
 古くは阪神淡路大震災,近年の東日本大震災,熊本地震と震災を経験し学んだことを共有し,今後起きるであろうと考えられる南海地震,首都直下型地震を含む災害に対し,常に何が起きても冷静に対処・行動できるような危機管理体制を整えていければよいと考える.
 最後に「災害医療」という広く複雑な課題の成書化にご尽力をいただいた監修の横田裕行先生,編集の大友康裕先生,小井土雄一先生,山口芳裕先生,跡見 裕先生,そしてご執筆いただいた先生方に心より感謝申し上げる.

令和2年6月
日本医師会会長
横倉義武

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監修・編集のことば

 地球温暖化による気象変動の結果で,世界的な洪水,干ばつ,巨大台風やハリケーン発生が頻発化し,その結果生じる被害がさまざまなメディアから毎日のように発信されている.もともと本邦は台風による洪水,高潮,土砂崩れや地震や津波など自然災害が多い国と言われてきたが,2019年12月にスペインで開催されたCOP25(第25回気候変動枠組条約締約国会議)では,2018年に地球温暖化の影響を最も受けた国として日本が位置付けられた.2019 年の台風15 号,19 号による豪雨災害では数多くの尊い人命と財産が失われ,長期の停電や断水等々のライフラインの途絶から社会活動にも多くの影響を及ぼした.さらに,30年以内に70%の確率で発生するといわれる首都直下型地震やプレート型の巨大地震である東海地震,東南海地震,南海地震など日本では地震津波災害のリスクも高まっている.
 一方で,現在の不安定な国際政治状況を考慮するとき,本邦においてもテロ攻撃に対する対応も考慮しなければならない.
 このような背景から災害医療の重要性が認識され,発災前の準備段階から発災後の医療対応についても多くの議論がなされている.実際,日本DMATや日本医師会JMATなどさまざまな医療チームが構成され,多くの災害で活躍している.
 さらに,新型コロナウイルス感染症の関係で延期になった国際的大規模イベントである東京2020オリンピック・パラリンピックが来年7月に開催されることが決まり,国内外から多くの競技者やその関係者,観客や旅行者等が多数集まることになる.そのため,日常の医療体制の維持を前提に,大会期間中の医療体制を構築しなければならない.特に,競技会場内や競技会場周辺の医療体制の構築はもちろん,1年間の中で最も暑い環境になる7月下旬から9 月上旬の東京都を中心とした開催という課題の中での医療体制を整備しなければならない.他方で,前述のように国際情勢の不安定要因からのテロ攻撃への対応も検討しておかなければならない.
 このような認識のもとにこの度『災害医療2020−大規模イベント,テロ対応を含めて』を編集することとした.内容は日常の医療と異なる災害医療の考え方や自然災害,人為災害に加えて,前述のテロに対する医学的対応についても解説を加えた.具体的には災害医療の概念や必要とされる基礎知識,現場での判断や対応,人為災害や自然災害への対応や東京オリンピック・パラリンピックに代表される大規模イベント時の医療対応の考え方について,本邦で最も活躍している第一線の先生方に執筆をお願いした.そのような意味で,今回の特別号は最新の知見を網羅した災害医療テキストと自負している.
 この編集作業中にも災害医療で本邦を代表する執筆者の先生方は新たな災害ともいえる新型コロナウイルス感染症の対応に追われている.そのような中でも,本特別号のためにご尽力をいただいた諸先生方に心より感謝と御礼を申し上げる.

令和2年6月
監修・編集者を代表して
横田裕行
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目次

カラー口絵
 JMAT の活動内容  石川広己
 東日本大震災での災害派遣  大友康裕
 西日本豪雨災害  横田裕行
 東京マラソンの救護体制  石川秀樹
 オリンピック・パラリンピックに向けた警視庁IMAT の訓練  横田裕行
 多機関連携センター  永田高志
 ゾーンの設定  中島幹男
 緊急被ばく医療とネットワーク  立崎英夫

序   横倉義武
監修・編集のことば   横田裕行
監修・編集者,執筆者紹介

Ⅰ章.災害医療の概念
 災害と医療のあり方  石川広己
 本邦での災害医療対応の推移  石川広己
 過去の教訓と新しい災害医療体制  石川広己
 災害サイクル  原田正公,高橋 毅

Ⅱ章.災害医療の基礎知識
 災害医療と法律 -医療法(医療計画),災害対策基本法,災害救助法,規則,各種防災関連計画等について  阿南英明
 わが国の災害医療体制  竹内一郎
 防ぎえた災害死  大友康裕
 災害対応の原則(CSCA)  江部克也
 災害時の医療(TTT)
  Triage  森野一真
  Treatment,Transport  石川秀樹
 災害時の保健医療  金谷泰宏
 災害時の精神科医療と検視・検案  吉永和正
 災害におけるロジスティクス  藤原弘之
 災害医学と情報管理(J-SPEED/SNS)  久保達彦
 国際社会と災害医療  甲斐聡一朗
 災害医療の標準的トレーニングコース
  MIMMS  橘田要一
  NDLS  八木雅幸,大友康裕
  MCLS  中川雄公
  PhDLS/BHELP  佐藤栄一
  日本災害医学会セミナー(JADMS)  久野将宗,東岡宏明

Ⅲ章.災害時の医療対応
 発災直後の初動対応  丸山嘉一
 災害医療コーディネート  森野一真
 DMAT  小井土雄一
 JMAT  石原 哲,猪口正孝,小平 博
 DHEAT  千島佳也子
 災害時の看護チーム  石井美恵子
 医療チームの活動と役割  小早川義貴
 避難所,救護所での医療活動  久保達彦
 情報伝達・活用  五十嵐 豊
 外国人への対応―多言語対応  澤 倫太郎
 消防機関との連携  田邉晴山
 行政機関との連携  田邉晴山
 多職種連携  小早川義貴

Ⅳ章.災害現場での医療判断と対応
 災害現場での病態評価  北川喜己
 出血と止血  沢本圭悟,成松英智
 気道と循環管理  岩瀬史明
 各種ショックへの対応  和田剛志,土田拓見
 confined  井上潤一
 外傷への対応  本間正人
 銃創・爆傷  木村昭夫
 熱傷  齋藤大蔵
 心疾患  久野将宗,大島一太
 深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症  廣瀬保夫
 圧挫症候群  稲葉基高
 熱中症  清水敬樹
 雷撃傷  齋藤大蔵
 脳卒中  成田徳雄
 感染症,食中毒  櫻井 滋
 妊婦ケア・授乳支援  菅原準一
 災害現場での投薬と処方  川村和宏,田村健悦,今 明秀
 医療的ケア児への対応  土畠智幸
 災害時の慢性疾患への対応
  高血圧  吉川吉曉,大西光雄
  糖尿病  石田健一郎,大西光雄
  透析  曽我部 拓,大西光雄
  在宅酸素,人工呼吸器  矢内 勝

Ⅴ章.医療機関被災時の対応
 災害対応マニュアル  中尾博之,渡邉栄三,吉矢和久
 BCP  出口 宝,佐々木秀章
 医療機関における電源確保の工夫  出口 宝,田名 毅
 平時の取り組みと災害対策訓練  中島 康,田尻康人
 地域の医療機関との連携,帰宅困難者対応  三浦邦久

Ⅵ章.大規模イベントと医療体制
 大規模イベントと救護・医療  田邉晴山
 リスク評価と医療対応  加藤聡一郎,山口芳裕
 日常診療体制の維持  三浦邦久,渡邊大祐
 救護所,診療所の医療体制  石川秀樹
 サーベイランスの強化  西條政幸
 多機関連携センター  永田高志
 事例検討
  東京マラソン心肺停止事案  三浦邦久
  愛・地球博  野口 宏,小澤和弘
  長野オリンピックの医療救護  奥寺 敬
  ツール・ド・おきなわ  出口 宝,上地博之
  東京オリンピック・パラリンピック  森村尚登

Ⅶ章.人為災害
 人為災害とは  川瀬鉄典
 火災  張替喜世一
 交通災害
  列車事故  中田敬司
  航空機事故  中田敬司
  高速道路事故  中田敬司
  海難事故  中田敬司
 産業事故  鈴木健介,中澤真弓,小川理郎
 感染症(集団感染)  佐々木淳一

Ⅷ章.特殊災害,CBRNE 対応
 特殊災害とCBRNE  箱崎幸也
 初期対応  丸橋孝昭,浅利 靖
 ゾーンの設定  中島幹男
 トリアージの基本方針  吉野篤人
 除染  井上孝隆,山口芳裕
 防護服  前田重信
 救急車,病院の養生  山本尚幸
 緊急被ばく医療とネットワーク  立崎英夫

Ⅸ章.自然災害
 自然災害とは  近藤久禎
 地震災害  上杉泰隆,近藤久禎
 津波災害  高橋礼子,近藤久禎
 気象災害
  台風  平林篤志
  竜巻  平林篤志
  集中豪雨  平林篤志
  雪害  林 堅二
  異常高温  三宅康史
 火山噴火災害  井村隆介

Ⅹ章.事態対処医療
 事態対処医療とは  布施 明
 ハートフォードコンセンサス -銃乱射・大量殺傷事件における初動対応と負傷者の救命率向上を目指して  関根康雅
 法執行機関との連携  大西光雄
 事態対処医療ユニット  石井浩統
 イエローゾーンにおける医療  井上潤一

Ⅺ章.災害と精神医学
 急性期の対応とDPAT  渡 路子
 ASD,PTSD  池田美樹,河嶌 讓
 精神科医療機関への対応  渡 路子
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