はじめましてのPET/CT

はじめましてのPET/CT

■編集 村上 康二
鳥井原 彰
岩渕 雄

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • B5判  200ページ  オールカラー,イラスト20点,写真450点
  • 2023年3月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-2115-0

基礎・原理・機材から読影の手順まで,PET初学者向けにじっくり解説!

現在の主流であるFDG PET/CTをこれから学ぶ初学者のために,基礎・原理・機材から読影の手順までをじっくり解説。
1章では実際の検査の流れとプロトコール,ピットフォールを,2章では部位ごとに頻度の高い疾患の撮像法と画像診断のコツを解説。撮像・読影の要点を解説する「Hot Point」,初学者には難しいので読み飛ばしてもいいが知っておくと理解が深まる「ちょっとだけ深いPETの世界」などのコラムでPET初学者にもわかりやすい紙面としている。さらに3章では読影クイズを掲載し,実臨床に近い実力試しができる。
巻末付録として,FDG集積の特徴から疾患を探せる早見表も掲載。


序文

 2002年にFDG PETが保険適用になってから20年余りが経過した。当初の適用疾患はわずか10種類の癌腫であったが,次第に適応が拡大され,2010年には「早期胃癌を除く」すべての悪性腫瘍に保険適用となった。現在では治療前の病期診断,治療後の再発・転移診断と,広く臨床応用が可能である。しかもこの間,FDGの商業用供給(いわゆるデリバリー)の開始,PET/CTやPET/MRIの登場とPETを取り巻くさまざまなソフト・ハード面で長足の進歩を遂げてきた。このような進歩は今後も当分続き,PET検査のさらなる普及と発展が期待されている。
 PETは高額な医療機器であるが,現在では特定機能病院の91%がPET(PET/CTを含む)を導入しており,一般診療,特に癌診療においては不可欠の診断法として普及している。従来,放射線診断医の役割は主としてCTやMRIの読影であり,加えてIVRや核医学を一部の診断医が行っている場合が多い。しかしPETの普及により従来は核医学の経験の少ない放射線科医がPETの読影をする機会が増えている。しかも最近ではタスクシフトにより,放射線技師もある程度の画像診断の知識が要求され,最適な撮像法の選択や重大所見の報告を要求される場合がある。本書はこのような,これからFDG PET(PET/CT)の読影を始める放射線科医,PET診療に携わる放射線技師を対象としている。診断医であれば各論,技師であれば総論を読めばほとんどの臨床現場で対応が可能と思われるが,さらに深く知る場合にはぜひ総論,各論の両方を読破していただきたい。必ずやPET診療における従来と異なった景色が見えてくるものと思われる。
 本書は私が慶應義塾大学在籍中に始めたPET合同カンファレンスのコアメンバーである鳥井原 彰先生(総合病院国保旭中央病院,前東京医科歯科大学),岩渕 雄先生(慶應義塾大学)のお二人を中心に企画が立てられた。またメジカルビュー社編集担当苅谷氏にも大変なご尽力をいただいた。この場を借りて深謝し,序文とさせていただく。

2023年2月
順天堂大学医学部・大学院医学研究科放射線医学教室放射線診断学講座教授
村上 康二

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 皆さんは核医学(nuclear medicine)と聞くとどんな印象をもちますか? どうもボーッとした謎の画像を相手に判断を下さなければならない,小難しい検査と感じる方もいるでしょうか? 核医学はその画像の見かけから古くは“unclear” medicineとも揶揄されたそうで,マニアックと敬遠したり否定的にとらえたりする方も少なくなかっただろうと想像します。
 そんな核医学検査の中で20年ほど前にわが国の臨床現場に登場し,瞬く間に画像診断に劇的なパラダイムシフトを起こしたのが18F-FDG PETです。ことに悪性腫瘍の診療においては確固たる地位を築き上げており,各科医師もある程度自身で読影されるようになりつつあります。これからの放射線診断医がPETに対して「専門でないからわからない/読めない」というのはもはや許されないでしょう。
 しかし,それをプレッシャーに感じる必要はまったくありません。PET検査はほとんどの施設で「PET/CT」という形で実施されます。CTは吸収補正,解剖学的位置情報の追加,診断能向上といった意義に加え,実は「放射線診断医にとってPETという検査を身近な存在にする」という有用性も秘めています。すなわち「CTが読めればPETも読める」のです。
 本書はCTの経験を積み重ねる過程で,もう一歩踏み込んで診療に貢献したいと思った方がPETという新たな武器を得るための入門書です。臨床,研究の第一線で活躍されている著者陣が,まさに明日からの読影に活かせるポイントをまとめています。本書を座右にPETの読影を開始すれば,すぐにこの検査が小難しくもマニアックでもないことに気付き,「CTが読めればPETも読める」ことを体感されるに違いありません。
 本書を通じてPETの面白さを感じ取り,ひいては核医学という領域自体に興味を抱く方が一人でも増えるならば,私にとってこの上ない喜びです。本書を手に取ってくださったすべての方に深謝申し上げます。

2023年2月
総合病院国保旭中央病院PET画像診断センター長・核医学科部長
鳥井原 彰

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 「PETの読影はMIPに始まりMIPに終わる。」
 私がPETを読み始めたころにご指導いただいた先生方からよくいわれたのがMIP像の重要性でした。学会のスライドを準備していたときにMIP像を入れ忘れていた私に指導医が「必ずMIPは入れた方がいい」とアドバイスしてくださったのをよく覚えています。
 初めはそんなにMIP像が大切なのかなと疑問に思っていた私でしたが,それから何年か経ち,今ではMIPがすべてだといわんばかりに読影の最初と最後に必ずMIP像を確認する癖をつけるよう後輩に指導しています。
 PETを読影する上で大切なポイントというのはMIP像の重要性以外にもたくさんあります。私はこれまで多くの経験豊富な先生方と接する機会に恵まれ,読影会やカンファレンスを通じてさまざまな読影のポイントを教えていただく機会を得ました。後輩を教育するときはこういった重要なポイントをひとつひとつの症例を通してその都度教えるようにしていますが,限られたローテートの期間内ですべてのポイントを教えるのにはもちろん限界があります。初めてPETを読影される先生がまず手に取って読めるような初級者向けの教科書はないか,経験豊富な先生が普段読影で気にしているポイントやピットフォールがうまくまとまっている便利な教科書はないか,そう思っていた矢先に本書の企画に携わる機会をいただくことができました。執筆者は各領域の第一線で活躍されている先生方で,それぞれのご経験から重要なポイントを非常に分かりやすくまとめてくださっています。
 PET読影の魅力は組織や病変の生理学的背景や病理をよく考慮したうえで,なぜそのような集積を呈しているのかを症例ごとに考えつつ診断していくことにあると思います。同じ病変でも悪性度や活動性により集積は当然変わってきますし,同じ症例の同じ病変であったとしても撮像するタイミングや前処置,薬剤の影響などによって集積は容易に変化します。PETを初めて読影される先生が本書を通じてこういったPET読影の魅力を少しでも感じて頂ければ,編集に携わった者としてとても嬉しく思います。

2023年2月
慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)講師
岩渕 雄
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目次

Ⅰ章 総論 PETはじめました
FDG PET/CT 総論  村松 直人,ほか
FDG PET/CTの実際1:検査の流れ  阿部 光一郎
FDG PET/CTの実際2:撮像プロトコール  大脇 由樹
癌のFDG PET/CTの読影の仕方  鳥井原 彰,ほか
FDG PET/CTの生理的集積  鳥井原 彰,ほか
FDG PET/CTのピットフォール(影響を与えるもの)  中谷 航也

Ⅱ章 疾患別 PETをどう使って何を読むのか
肺  中島 怜子
縦隔,胸膜  金子 恒一郎
頭頸部癌  石守 崇好
悪性リンパ腫(骨髄腫,リンパ増殖性疾患を含む)  馬場 眞吾
食道・胃(良性腫瘍を含み,リンパ腫を除く)  中條 正豊
乳房(良性腫瘍を含み,悪性リンパ腫を除く)  佐藤 葉子
肝臓(肝細胞癌,胆管癌,転移性肝癌,良性腫瘍)  柳田 全孝,ほか
胆道(肝外胆管,胆嚢),膵臓,脾臓(良性腫瘍を含み,リンパ腫を除く)  大図 ひろみ,ほか
下部消化管癌(結腸・直腸・小腸)  鳥井原 彰
子宮・付属器(良性腫瘍を含む)  佐藤 葉子
泌尿器(腎・副腎・腎盂尿管,膀胱,前立腺,精巣)  北島 一宏
骨軟部腫瘍(転移性骨腫瘍を含む)  岩渕 雄
原発不明癌(腹膜癌,腹膜中皮腫)  陣之内 正史
悪性黒色腫(メラノーマ,皮膚癌)  伊藤 公輝
脳(てんかん,脳腫瘍)  金田 朋洋
心臓(サルコイドーシス)・大血管  真鍋 治,ほか
検診PET  陣之内 正史

Ⅲ章 これからのPET製剤
PET 製剤の今までとこれから  中本 裕士,ほか

Ⅳ章 練習問題 あなたはどう読む?
症例クイズ1
症例クイズ2
症例クイズ3
症例クイズ4
付録1 良性だけどFDG 集積を示す病変
付録2 悪性だけどFDG 集積の低い病変
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