新NS NOW 6

痛みの手術

PAIN FREEへの扉

痛みの手術

■担当編集委員 菊田 健一郎

定価 12,100円(税込) (本体11,000円+税)
  • A4判  152ページ  オールカラー,イラスト120点,写真100点
  • 2016年5月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-1566-1

PAIN FREE 痛みのない生活へ

No.6では「痛み」をテーマに取り上げた。
脳から脊髄,末梢へと伸びる神経は痛みの発生に大きく関わる。圧迫や狭窄,損傷,難治性の疼痛などその病態はさまざまである。これを取り除き患者を痛みのない生活へと帰還させるには,痛みの発生箇所と原因を正確に把握し,最も的確な治療方法を選び取らねばならない。
本書では主だった神経由来の疼痛を取り上げ,そのメカニズムの解説と治療法の選択,除痛のテクニックを解説している。
脳神経外科医専門医も,これから専門医をめざす医師も必読の1冊である。

■シリーズ編集委員
森田明夫/伊達 勲/菊田健一郎


序文

 脳神経外科の教科書はいまだに毎年ページ数が爆発的に増えています。その大きな要因は年々蓄積する脳機能に関する新たな知見と,それに基づく機能的脳神経外科の発展にあると考えます。
 脳神経外科はこれまで脳血管障害と髄外腫瘍を主なターゲットとして「切除と機能温存」を命題として発展してきました。これらの疾患は局所髄外病変であり,理論的に根治的切除が可能です。CT,MRIなどで正確な局在診断を行い,マイクロサージャリーを用いて機能を温存して病変を切除することがこれまでの脳神経外科医の大きな役割でありました。
 しかし,マイクロサージャリーを中心とした治療技術は完成,成熟の時期に入っています。これからの脳神経外科は,「切除と機能温存」から,「機能調節と症状改善」というより患者のADLにかかわる仕事をしていくことになります。つまり患者の脳や脊髄機能を調整し,症状や苦痛を改善する治療手段として発展していくと思われます。
 機能的脳神経外科は髄内組織にアプローチし,痛みやてんかん,不随意運動など具体的な症状を改善させる治療学であり,三叉神経ブロック,てんかん焦点切除術,定位的神経核破壊術などが古い時代から行われていました。しかし,技術的な限界から効果が不十分な場合があったりして一時期停滞の時期がありました。しかし近年は画像診断の進歩により脳や神経の機能がますます詳しく解析されるようになり,その機能がどのように変化することにより現在の症状が引き起こされているのかが,はっきりとわかる時代となりました。神経刺激装置など電気生理学的な治療手段にも技術革新がなされ,さらにそれを体内に留置する際も,ナビゲーションなど位置情報を扱うテクノロジーが飛躍的に進歩しました。その結果,新しい治療手段が導入されるとともに,従来の治療手段の精度も著しく向上し,近年この分野が再び隆盛となってきた印象があります。
 脳にはご存知の通り,感覚,運動以外にも言語,記憶,計算,書字などきわめて多くの機能が内在しています。しかも,局所で行われる機能だけでなく,ネットワークでなされる機能もあります。そのため,これらを調節する機能的脳神経外科の世界には,とんでもなく広い発展の余地が残されています。若手脳神経外科医が積極的に取り組んでいくべきこれからのフロンティア領域であります。
 しかし,実際興味はあるものの,二の足を踏む人が多いのも実情です。この理由の第一は知識不足にあります。脳神経外科はこれまで髄外病変をマイクロサージャリーで治療することを主に行ってきたため,それに関係する微小外科や頭蓋底解剖などの知識などには精通しています。しかし機能的脳神経外科を行うためには細かな脳脊髄の神経路やネットワークの知識,また末梢神経に関してもわが国では整形外科医が治療を行ってきたため,十分に知識をもっている人は少ないと思います。そのためとっつきにくさを感じているのだと思います。もう一つの大きな理由は,周りに機能的脳神経外科に精通し,指導してくれる指導医がいないため,果たしてその機能的神経外科の治療効果が本当なのか,具体的な実感をもって経験できる機会が少ない点にあります。
 新NS NOW No.6では機能的脳外科のなかでも最も患者のニーズが高く,治療希望も高いと考えられる「痛みの手術」を取り上げました。さまざまな種類や部位における「痛み」の診断とマネージメントに関して,その領域に精通し,かつ実際の治療を行われている専門の先生に,非観血的治療から手術治療に至るまでの現在の最新の治療法と成績をわかりやすく記述していただきました。本書を一読いただくと,痛みに関する現在のわが国の脳神経外科治療の最前線が理解できると思います。
 脳神経外科医であれば,視床痛や根性疼痛に悩む患者を外来で経験することは少なくないと思います。長年鎮痛薬や鎮痙薬を投与してはいるが,あまりよくはならず,それどころか年々少しずつに悪化していくケースも経験しておられるのではないかと思います。本書を読まれた先生が,そのような患者の苦痛をやわらげるためのほかの選択肢をもたれる機会となりますれば幸いです。さらにこの教科書を読まれた若手脳神経外科医が,機能的脳神経外科に興味をもち,この領域に携わるきっかけとなればこれほど嬉しいことはありません。

2016年5月
福井大学医学部脳脊髄神経外科教授
菊田健一郎
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目次

除痛のメカニズム 神経障害性疼痛に対する脊髄刺激療法を中心に  大島秀規
特発性三叉神経痛に対する神経血管減圧術  戸田弘紀
舌咽神経痛に対する神経血管減圧術  松島俊夫,ほか
特発性三叉神経痛に対するガンマナイフ治療  堀場綾子,ほか
特発性三叉神経痛に対する神経ブロック  有島英孝,ほか
帯状疱疹後神経痛に対する神経ブロック  馬場胤典,ほか
頚椎症性疼痛に対する神経根ブロック  竹内幹伸
難治性腰痛に対する脊髄刺激療法  上利 崇,ほか
難治性腰背部痛に対する腰髄神経後枝内側枝および仙腸関節の高周波熱凝固術  寺尾 亨,ほか
難治性神経障害性疼痛に対する1次運動野電気刺激療法(EMCS)および反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)  齋藤洋一
難治性疼痛に対する視床刺激療法(DBS) 視床腹中間核−小細胞性腹尾側核−外側中心核刺激術  平戸政史,ほか
神経根引き抜き損傷に対する後角破壊術  髙井敬介,ほか
末梢神経 絞扼性神経障害に対する手術  金 景成,ほか

・シリーズ わたしの手術記載
 ①神経の手術−上殿皮神経障害  井須豊彦,金 景成
 ②腹側に発生源を有する大後頭孔髄膜腫  高安正和
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