リハスタッフのための

イチからわかる臨床検査値活用術

イチからわかる臨床検査値活用術

■監修 美津島 隆
山内 克哉

■著者 鈴木 啓介
加茂 智彦

定価 3,740円(税込) (本体3,400円+税)
  • B5判  180ページ  2色,イラスト200点,写真50点
  • 2018年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1935-5

臨床検査データを正確に読み取ることができれば,リハビリテーションはさらに深められる!

リハビリテーションを行ううえで,問診,観察,触診だけではわからない情報がたくさんある。身体の内部で起こっている生理現象を的確にとらえていくためには,血液検査データ,生化学検査データを読み解くことは欠かせない。
本書は,各検査項目について,検査値の生成メカニズムや意義,リハビリテーション時の解釈,リハビリテーションへの活かし方をわかりやすく解説。各項目は検索しやすい見開きページにまとめる構成とし,リハビリテーション医からのアドバイスや注意事項である「Dr’sコメント」や,コラムとして症例も掲載するなど,実践に即した内容になっている。
患者さんの症状を深読みして,より効果的なリハビリテーションにつなげていくための必読書である。


序文

監修の序

 日常診療においては,画像所見と並んで検査所見は診断,治療を進めるうえでたいへん重要な手がかりを与えてくれており,その重要性については疑問の余地を挟みません。
 しかしながら,リハビリテーション医療においては,さほど重きをおかれていないのが現実です。それは画像所見と同様に,療法士の皆さんに対して卒前教育で検査値の解釈についての教育がなされる時間が少ないからと考えられます。
 とはいっても,現実に患者と向き合ったとき,検査項目の解釈ができるかどうかはリハビリテーションを進めていくうえで大きな差となって現れます。何より患者がより安心して訓練に取り組めるという利点があります。そのためでしょうか,心ある療法士の皆さんから画像所見に続いて検査所見の解釈もできるようなテキストを切望されました。
 昨今の医療の進歩により,検査の項目が急増してきたことは周知の事実であり,日常診療に用いられる検査項目は実に1,000を超えるといわれています。しかしながら,われわれが,リハビリテーション医療を行うにあたって,その意味を知っておかねばならない検査項目はさほど多くはありません。
 本書はリハビリテーション医療との関連で是非,療法士の皆さんに理解しておいてほしい項目に絞って,なるべく臨床に役立つように編まれました。
 リハビリテーション医療は基本的には「運動」が中心であることは論をまちません。薬と同様に運動を「処方」している以上,各種検査についての理解を深めておく必要があります。療法士の皆さんが,検査値の意味を理解することにより,患者のリスク管理がさらに容易になることは,訓練室での事故を軽減させ,患者にも多大な恩恵を与えます。
 内部障害領域を専門とする新進気鋭の療法士に執筆を依頼し,われわれが総合的に監修するという形式をとりましたが,新しい試みとして,「Dr’sコメント」として,医師からのワンポイントアドバイスを入れました。
 検査所見をより身近なものとして日常診療に応用していただけるようになれば,われわれにとってもこれに勝る喜びはございません。

2018年8月
美津島 隆
山内 克哉

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 「臨床検査値って覚えることがたくさんあるし,リハにどうやってつなげればいいかわからない…。苦手だ…。」
 筆者らが臨床で検査値と出会ったときの印象はこのようなものでした。今勉学に励んでいる学生の方や臨床のリハスタッフの方も同様な思いをしている人が少なからずいるのではないでしょうか。
 臨床検査値は項目もたくさんありますし,複数の項目を組み合わせて解釈するものもあり複雑に感じると思います。しかし,臨床検査値を1つ1つ丁寧に理解し読み解いていくと,驚くほど臨床で役に立ちます。なぜならば,目には見えない患者の身体の内部で起きていることが数値として可視化されるため,重症度の理解や予後予測,リスクの層別化につながり,リハ実施への道しるべとなるからです。また,臨床検査値を読み解いた情報を元に,患者に対してフィジカルアセスメントを行い,両者の情報をつなぎ合わせることで,リハでの介入(対処)方法をある程度決めることができます。“使い方”さえわかれば臨床検査値はリハスタッフにとって患者へよりよい治療を行うための“武器”となります。しかし,臨床検査値に関する書籍の多くは医師や看護師向けであり,実際にどうやってリハに活かせばよいのかについては記載されておらず,情報が不十分でした。
 そこで本書では,臨床検査値が苦手と感じるリハスタッフでも理解しやすいように各検査項目の産生のメカニズムや役割など基礎的な項目に加え,リハ視点としてどう解釈すればよいのかについて解説をしました。また,リハにどのように活用すればよいのかについても説明し,CASEを通じて実際の使い方の実例も提示しました。さらに併せて確認すべき検査項目や,検査値に影響を与える注意すべき薬剤についても記載し,臨床で検査値を活用するためにイチから理解できる内容となっています。本書を片手に臨床検査値を理解して,今までよりも1歩踏み込んだリハにつながれば幸いです。
 最後になりますが,本書の執筆にあたり,快く監修を引き受け的確なご助言と「Dr'sコメント」のご執筆をいただいた獨協医科大学医学部リハビリテーション科学講座 主任教授の美津島 隆先生,浜松医科大学医学部附属病院リハビリテーション科 准教授の山内克哉先生に感謝申し上げます。また,本書の刊行にあたり,読者が理解しやすいようアイデアを駆使していただいた野口真一氏をはじめとするメジカルビュー社編集部の皆さまに心より感謝申し上げます。

2018年9月
鈴木啓介
加茂智彦
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目次

1 章 まずは検査値の基本を知ろう  鈴木啓介
 検査値の使い方

2 章 血液・凝固系の検査データを読み解きリハに活かす  鈴木啓介
 ・WBC(白血球)・・・感染症,炎症,骨髄異常を反映
 ・Neut(好中球),Lymph(リンパ球),Mono(単球),Eo(好酸球),Baso(好塩基球)・・・白血球分画
 【CASE 1】急性期脳出血患者に肺炎が合併した症例
 ・RBC(赤血球)・Ht(ヘマトクリット)・・・貧血や脱水を反映
 ・Hb(ヘモグロビン)・・・貧血の程度,酸素運搬能の低下を反映
 ・MCV,MCH,MCHC(赤血球恒数)・・・貧血の種類
   貧血と起立性低血圧
   起立性低血圧の機序
 【CASE 2】右大腿骨頸部骨折,大腿骨頭置換術後に貧血を呈した症例
 ・PLT(血小板)・・・血栓リスクと出血傾向を反映
 ・PT,APTT(プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間)・・・血栓リスクと出血傾向を反映
 ・FDP(フィブリン分解物) ・D-dimer 血栓を反映
   深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症
   播種性血管内凝固症候群(DIC)
 【CASE 3】 脳梗塞後深部静脈血栓を認めた症例

3 章 肝・胆・腎・膵系の検査データを読み解きリハに活かす  加茂智彦
 ・BUN(尿素窒素)・・・腎機能を反映
 ・Cr(血清クレアチニン)・・・腎機能を反映
 ・eGFR(推算糸球体濾過量)・・・腎機能を反映
 ・UA(血清尿酸)・・・痛風を反映
 ・Bil(血清ビリルビン)・・・肝機能を反映
 ・AST,ALT(アスパラギン酸アミノトランスアミナーゼ・アラニンアミノトランスアミナーゼ) 肝機能を反映
 ・ChE(コリンエステラーゼ)・・・肝機能を反映
   肝機能の移り変わりと運動負荷
 【CASE 4】 脂肪肝の症例
 ・γ-GTP(γ-グアノシン三リン酸)・・・肝機能を反映
 ・CK(クレアチンキナーゼ)・・・筋の状態を反映
 ・心筋マーカー(トロポニン,H-FABP)・・・心臓の状態,腎機能を反映
 ・アミラーゼ,リパーゼ 膵臓機能を反映

4 章 タンパク・酵素系の検査データを読み解きリハに活かす  加茂智彦
 ・CRP(C反応性タンパク)・・・炎症を反映
   慢性炎症について
 ・PCT(プロカルシトニン)・・・感染を反映
 ・TP(総タンパク)・・・栄養状態を反映
 ・Alb(アルブミン)・・・栄養状態を反映
 【CASE 5】 介護老人保健施設に入所している要介護高齢者の症例
 ・Tf,TTR(トランスフェリン,トランスサイレチン)・・・栄養状態を反映
   栄養状態を反映する指標と半減期
 ・LDH(乳酸脱水素酵素)・・・障害臓器の予測
 ・ALP(アルカリフォスファターゼ)・・・障害臓器の予測

5 章 糖質・脂質系の検査データを読み解きリハに活かす  鈴木啓介
 ・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)・・・血糖コントロールを反映
 ・BS(血糖値)・・・糖代謝異常を反映
 【CASE 6】 生活習慣病を背景とした2型糖尿病症例
 ・TC(総コレステロール)・・・動脈硬化,脂質代謝異常,栄養状態を反映
 ・HDL-C(高比重リポタンパクコレステロール)・・・動脈硬化,脂質代謝異常を反映
 ・LDL-C(低比重リポタンパクコレステロール)・・・動脈硬化,脂質代謝異常を反映
 ・TG(中性脂肪)・・・動脈硬化,脂質代謝異常を反映

6 章 ミネラル・血液ガスデータを読み解きリハに活かす  加茂智彦
 ・Na(血清ナトリウム)・・・脱水を反映
 ・K(血清カリウム)・・・ミネラルを反映
 ・Ca(血清カルシウム)・・・ミネラルを反映
 ・Fe(血清鉄)・・・貧血を反映
 ・Mg(血清マグネシウム)・・・ミネラル,腎機能,栄養状態を反映
 ・PaO2,SaO2(動脈血酸素分圧,動脈血酸素飽和度)・・・血液ガスを反映
 ・PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)・・・血液ガスを反映
 【CASE 7】 デイサービスに通う慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症例
 ・酸塩基平衡・・・血液ガスを反映

7 章 ホルモン系の検査データを読み解きリハに活かす  鈴木啓介
 ・TSH(甲状腺刺激ホルモン)・・・甲状腺の機能を反映
 ・FT3,FT4(甲状腺ホルモン)・・・甲状腺機能亢進を反映
 ・ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)・・・ステロイド分泌状態を反映
 ・レニン,アルドステロン・・・血圧を反映
 ・CPR(Cペプチド)・・・膵臓からのインスリンの分泌機能を反映
 ・BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)・・・心負荷を反映
 【CASE 8】 心不全急性増悪症例

8 章 尿の検査データを読み解きリハに活かす  加茂智彦
 ・尿量・・・脱水,腎機能を反映
 ・尿比重・・・脱水,腎機能を反映
 ・尿タンパク・・・腎機能・栄養状態を反映
 ・尿糖・・・糖尿病,腎機能を反映

9 章 腫瘍マーカーの検査データを読み解きリハに活かす・・・鈴木啓介
  腫瘍マーカー
 ・CEA(がん胎児性抗原)・・・消化器を中心に広範囲のがんを反映
 ・CA19-9(糖鎖抗原19-9)・・・膵臓がん,胆道がんを反映
 【CASE 9】 直腸がんから血球減少を生じた症例
 ・AFP(α-胎児型タンパク)・・・肝細胞がんを反映
 ・PIVKA-II(ビタミンK依存性凝固因子前駆体)・・・肝細胞がんを反映
 ・CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)・・・肺がんを反映
 ・SCC(扁平上皮がん関連抗原)・・・子宮頸がん,頭頸部がんを反映
 ・CA15-3(糖鎖抗原15-3)・・・婦人科がんを反映
 ・CA125(糖鎖抗原125)・・・婦人科がんを反映
 ・SLX(シアリルLewis X-i 抗原)・・・肺がん,卵巣がんを反映
 【CASE10】乳がんから骨転移を生じた症例
 ・PSA(前立腺特異抗原)・・・前立腺がんを反映

10 章 免疫系の検査データを読み解きリハに活かす  鈴木啓介
 ・Ig(免疫グロブリン)・・・感染症,アレルギー疾患,腫瘍を反映
 ・RF, MMP-3(リウマトイド因子,マトリックスメタロプロテアーゼ-3)・・・関節リウマチを反映
 ・ANA(抗核抗体)・・・自己免疫疾患を反映
 ・β2-MG(β2-ミクログロブリン)・・・間質性腎炎,尿細管障害,腎不全を反映
 ・MPO-ANCA, PR3-ANCA(抗好中球細胞質抗体)・・・多発血管炎を反映
 【CASE 11】急速進行性糸球体腎炎により透析導入となった症例
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