がんリハビリテーション
実践マニュアル

がんリハビリテーション実践マニュアル

■編集 宮越 浩一

定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
  • B5判  268ページ  2色(一部カラー),イラスト100点,写真80点
  • 2021年3月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-2038-2

ゴール設定に必要な生命予後や治療方針の把握方法の解説を充実させた新版!

2019年改訂の「がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版」(日本リハビリテーション医学会)に準拠した最新の情報を元に,臨床の理学療法士・作業療法士向けに,がんの基礎知識,各種がんの病態,症状,進行による合併症や医学的治療およびリハ治療方針,がんのリハに特有の練習手技,合併症の管理のポイントを解説。臨床現場で難渋するリハビリテーションのゴール設定に必要な生命予後や治療方針の把握方法の解説を充実させた。


序文

 がん治療の進歩により,がん罹患後の生存率は向上している。近年では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の開発も進み,治療成績はさらに改善してきている。これにより,進行がん患者においても長期生存が期待できるようになってきた。しかし,がんは重度の疾患であることに変わりはなく,がんの進行によりさまざまな障害を生じることが多い。また,がん治療による有害事象も障害を生じる原因となる。これらの障害は患者のADL やQOL を低下させるものとなる。このような障害に対して, リハビリテーション治療が実施される機会は増え,2010 年の診療報酬改定ではがん患者リハビリテーション料が追加された。そして,徐々にその効果に関するエビデンスも蓄積されてきている。日本リハビリテーション医学会からは2013 年に『がんのリハビリテーションガイドライン』が刊行され,2019年には『第2版 がんのリハビリテーション診療ガイドライン』に改訂されている。これらのことからがんリハビリテーションはさらに普及した。現在では,がん専門病院のみでなく,一般的な病院においてもがんリハビリテーションは広く実施されていることと思われる。
 リハビリテーションを開始するにあたっては,適切なリハビリテーション治療計画が必要となる。ここでは,ゴールとなるADL や治療期間を予測しなくてはならない。また,がん治療においては経過中に有害事象を生じる頻度が高いため,適切なリスク管理が必要となる。がん患者のリハビリテーション治療計画を考えるうえでは,疾患の基本的知識やその一般的な帰結,治療方針やその経過で生じ得ることを理解しておくことが求められる。がんは全身のさまざまな部位から発生し,その組織型や進展形式などの特徴は多様である。そして,治療方針も手術,放射線療法,化学療法とさまざまなものがある。このため,必要となる知識は膨大かつ難易度の高いものとなる。
 本書の編集にあたっては難解かつ膨大となりがちな内容を,要点に絞って解説することを心がけた。特にリハビリテーション治療の目的を明確にするための生命予後の予測,がん治療方針の把握,合併症管理に重点を置くこととした。これによりがんリハビリテーションの現場で活用しやすい書籍となることを目指している。
 最後に本書を作成するにあたり尽力を頂いたメジカルビュー社の榊原氏にお礼を申し上げたい。
 本書が,がんリハビリテーションの質と安全の向上の一助となれば幸いである。

2021年2月
宮越浩一
全文表示する
閉じる

目次

I 総論
 1.がんの基礎知識   宮越浩一
  がんの分類と罹患状況
  希少がん
  がんの診断
  がんの進行による問題
 2.がん治療   宮越浩一
  がんの治療方針
  手術療法
  放射線療法
  化学療法(薬物療法)
  ベストサポーティブケア(BSC)
  治療効果判定(RECISTガイドライン)
  有害事象の評価(有害事象共通用語基準:CTCAE)
 3.リハビリテーション治療計画   宮越浩一
  がん患者に生じる問題
  リハビリテーション治療計画
  生命予後の予測
  Dietz 分類
  リハビリテーション開始時に行うべき評価
  途中経過において行うべき評価
  がんリハビリテーションで使用する機能評価
 4.練習中止を考慮する状態   宮越浩一
  がんに関連する有害事象
  練習中止を考慮する基準

II 原発巣別各論
 1.肺がん   宮越浩一
  基礎知識
  ステージ分類
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
 2.消化器がん(食道がん,胃がん,大腸がん)   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療
 3.消化器がん(肝がん,胆道がん,膵がん)   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療
 4.乳がん   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療
 5.前立腺がん   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療
 6.腎がん,尿路上皮がん(膀胱がん・腎盂がん・尿管がん)   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療
 7.婦人科がん   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療
 8.頭頸部がん(口腔・咽頭がん,喉頭がん)   永田智子
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  化学放射線治療に伴う合併症と対策
  リハビリテーション治療
 9.血液がん   宮越浩一
  基礎知識
  白血病
  悪性リンパ腫
  多発性骨髄腫
  造血幹細胞移植
  リハビリテーション治療
 10.脳腫瘍   宮越浩一
  基礎知識
  がんによる症状と,進行により生じる合併症
  がん治療の方法
  リハビリテーション治療

III リハビリテーション治療
 1.開胸・開腹術後呼吸リハビリテーションと早期離床   鵜澤吉宏
  基礎知識
  練習の実際
 2.乳がん   近藤絵美
  基礎知識
  練習の実際
 3.頭頸部がん   永田智子
  基礎知識
  練習の実際
 4. 化学療法・放射線療法,造血幹細胞移植に対するリハビリテーション治療  宮越浩一
  基礎知識
  練習の実際
 5.リンパ浮腫   沼口友美
  基礎知識
  浮腫とは
  リンパ浮腫とは
  リンパ浮腫の治療方法
  終末期のケア
 6.進行がん   近藤絵美
  基礎知識
  生命予後を考慮した目標設定
  QOL評価
  練習の実際:がん特有の症状の評価と対応

IV 有害事象対策
 1.骨転移
 1-1.骨転移:リスク評価   宮越浩一
  がんと骨転移
  画像評価
  長管骨転移
  脊椎転移
  骨盤転移
  放射線療法
  骨転移治療薬
  骨転移患者における生命予後
 1-2.骨転移:動作指導   彦田由子
  骨転移患者に対する動作指導の進め方
  脊椎転移の場合
  骨盤・長管骨転移の場合
 2.がん関連血栓症   宮越浩一
  がんと血栓症
  がん関連静脈血栓塞栓症(VTE)
  がん関連動脈血栓塞栓症(がん関連ATE)
  播種性血管内凝固症候群(がん関連DIC)
 3.神経障害   宮越浩一
  がんと神経障害
  がんによる神経障害
  化学療法による有害事象
 4.低栄養・サルコペニア   吉村芳弘
  基礎知識
  低栄養
  サルコペニア
  悪液質
  リハビリテーション治療と栄養療法
  リハビリテーション栄養ケアプロセス
 5.せん妄   小澤里恵
  基礎知識
  せん妄の危険因子
  せん妄の評価
  せん妄の問題点
  対策
 6.疼痛   宮越浩一
  がん患者の疼痛
  疼痛の評価
  疼痛管理
全文表示する
閉じる

関連する
オススメ書籍

最近チェック
した書籍・雑誌

会員登録されている方

メールアドレスとパスワードを入力してログインしてください。

注)共有パソコンの方はチェックを外してください。

会員登録されていない方

会員登録されると次回からお客様情報をご入力いただく必要がありません。
また,購入履歴の確認ができる便利な機能がご利用いただけます。

個人情報の取り扱いについてはこちら