5つの臨床推論で整理して学ぶ

作業療法リーズニングの教科書

作業療法リーズニングの教科書

■編集 藤本 一博
小川 真寛
京極 真

定価 4,620円(税込) (本体4,200円+税)
  • B5判  256ページ  2色,イラスト80点
  • 2022年8月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-2056-6

効果的な作業療法を行うための5つのリーズニングプロセスを身につけ理論をうまく活用しよう!

『5W1Hでわかりやすく学べる 作業療法理論の教科書』の姉妹編(第2弾)が登場!
一通りの理論を理解した若手作業療法士や実習生向けに,5つの臨床推論(科学的/物語的/実際的/倫理的/相互交流的リーズニング)を使った統一的枠組みを用いて効果的な臨床実践を行うことを提案し,リーズニングが求められる臨床の各場面において有効な理論を選択し活用できるようになるための書籍。
冒頭でリーズニングの歴史や5つの臨床推論の概要と統合法の概要を整理した上で,身体障害をはじめとした7領域におけるリーズニングの特徴について事例を示しながら解説し,さらにメタ理論~小範囲理論や代表的なプロセスモデルについて,リーズニングのなかでの使い方のポイントなどを事例を示しながら解説。また,リーズニングについてよくある悩みや疑問点についてQ&A形式で解説する。


序文

 ミレニアムOTという言葉で表現された2000年に私は作業療法士となったが,養成校時代には多くの理論を習う機会に恵まれていた。しかし実習先では理論を使用したり調べたりする機会はなく,検査やスキルに焦点があてられていたため,理論は机上の話で実践とは異なり,テスト用に暗記するものという認識であった。実際に就職した身体障害領域の職場でも同様の状況であったため,編み物をクライエントに提供するようなOTは,「楽をしている」「お気楽な仕事」などと表現されていた。その教育と臨床のギャップに疑問をもちながら,先輩の教えや職場の方針を頼りに過ごしていた。
 そんななか妻から突然「新婚旅行に行かなくていいからAMPSに行こう」と誘われた。妻は勉強熱心なOTであり,OTとしての視点を習得したいが一人では不安とのことで,難色を示す私を熱意で説き伏せ,AMPSに申し込んだ。そして,二人でAMPSのスキルを修めた。そこで教えて頂いたOTの世界感は,人生を大きく変えるほどの圧倒的な存在感をもっており,私に理論の大切さと必要性を与えてくれた。そこからは夢中で人間作業モデル,カナダ作業遂行モデル,作業科学などの理論を学んだが,その知識は職場では受け入れられなかった。「言葉遊び」「それよりもスキル」などと言われ,四面楚歌であった。その後この逆風にくじけずに学びや工夫を続けたところ,カンファレンスで自己の臨床が表現しやすくなり,看護師などから分かりやすいとの評価が得られた。このときにリーズニングという概念と出会い,理論を職場で浸透させるためには,リーズニングを説明する,つまり臨床での推論,思考過程を表現する力が必要なのだと気がついた。しかし専門的に学べる書籍がなく,いつか誰かがリーズニングの専門書を出してくれることを願った。
 月日は流れ,2020年に縁あって『5W1Hでわかりやすく学べる 作業療法理論の教科書』の編集に加えて頂き,多くの臨床家,学生に理論の大切さや理論の有用性を伝える仕事に関わらせて頂いた。この本は教科書として多くの学校で採用があり,今ではOTの基盤づくりに少し寄与できていると感じるが,1つの不安が生まれた。それは私が経験したように,突然に理論を臨床へ持ち込んだ場合,四面楚歌となりはしないだろうか,理論を浸透させるリーズニング教育も必要ではないだろうか,ということである。その不安を『作業療法理論の教科書』の出版を担当してくださったメジカルビュー社編集部の榊原優子氏に雑談として話をすると,すぐに新企画として検討してくださった。しかし前例のないリーズニングの本となるため,私の手に負えるものではない!と考え,信頼を寄せる小川真寛氏と京極真氏に相談した。難色を示されるかもしれないと考えていたが,二つ返事で協力することを快諾頂けたため,この新たな道を作っていく決意が固まり,仲間のありがたさを感じた。
 しかしここからが思い返すのもつらい苦難の道であった。第1章で記しているが,現状のわが国のOTは施設ごとに異なる作業療法士像を有している。これは共有のリーズニングが存在しないこと,同一性が欠如していることを意味しているが,本書の企画ではそれを統合できる形を作ることが求められる。そこで統合できる形を目指し,第2章で紹介している5つのリーズニングを枠として組み立てる試みを行った。最初は枠に当てはめる方法のみによる表現を試みたが,作業療法のリーズニングを網羅しているとは到底言えないものになった。次に自己の臨床実践の手順をそのまま5つのリーズニング枠に当てはめると,5つのリーズニングが相互交流しており,複雑に絡まるため表現が困難であった。これはクライエント中心のオーダーメイドの実践がOTの本質であるため,当然の結果であった。この頃は3カ月くらいの期間,自己の臨床を言語化し,最適な表現方法を探し続ける日々を送っていたが,形にならない自身の能力の低さに打ちのめされている時間であった。何度もくじけて,もう無理かもしれないと思いながら,ボツとしてきた3カ月分の残骸を眺めてみると,リーズニングの第一歩目の部分である,「どのようにクライエントを捉え,どこにポイントを置くか」といったところは共通項として存在し,OTの複雑な個別性はそこから枝分かれしたものとすれば,枝分かれ前の最初の一歩,それならば表現できるかもしれないということに気がついた。
 そうして最初の一歩を表現することに絞った表現方法が生まれ,5つのリーズニングの表現,リーズニングの手順,リーズニングの一覧表の記載など,少しでも分かりやすくなるよう工夫や整理を行い,形作った表現を第2章のリーズニングの統合の部分で記述させて頂いた。この新たな形で難解な作業療法のリーズニングを可視化しようと,各分野のスペシャリストに執筆を依頼し,執筆説明会を開催したが,多くの参加者がその新しい内容に頭を抱えた。執筆依頼により私と同じ苦悩を強いることになってしまったが,困難な可視化を乗り越え,領域別,理論別のリーズニングを特徴溢れる形で表現してくれた。
 本書は作業療法のリーズニングの可視化に挑戦する最初の本である。
 この難解な依頼に全力で応え,執筆して下さった齋藤佑樹氏,真下いずみ氏,南征吾氏,仲間知穂氏,澤田辰徳氏,寺岡睦氏,鈴木憲雄氏,小林隆司氏,急遽の依頼で時間のないなかでも執筆をして下さった河本聡志氏,そしてどんなに忙しい時でも,一緒に同伴してくださった小川真寛氏と京極真氏,多大な支援と助言をして下さったメジカルビュー社編集部の榊原優子氏に,この場を借りて心から感謝申し上げます。

 この本から作業療法リーズニングの議論が始まることを期待します。

2022年6月
編者を代表して
藤本一博
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目次

第1章 作業療法とリーズニング
 作業療法におけるリーズニング
 リーズニングの歴史
 リーズニングと作業療法理論
 リーズニングと作業療法臨床
 作業療法におけるリーズニングの教育
 リーズニングと作業療法研究

第2章 リーズニングの種類
 科学的リーズニング
 物語的リーズニング
 実際的リーズニング
 倫理的リーズニング
 相互交流的リーズニング
 リーズニングの統合

第3章 領域別のリーズニング
 領域別のリーズニングの特徴
 身体障害におけるリーズニングの特徴
 精神障害におけるリーズニングの特徴
 発達障害におけるリーズニングの特徴
 老年期におけるリーズニングの特徴
 緩和ケアにおけるリーズニングの特徴
 学校作業療法におけるリーズニングの特徴
 訪問におけるリーズニングの特徴

第4章 理論別のリーズニング
 理論別のリーズニングの特徴
 OBP2.0(超メタ理論)
 人間作業モデル(大範囲理論)
 プール活動レベル(中範囲理論)
 ポジティブ心理学(小範囲理論)
 MTDLP(プロセスモデル)

第5章 リーズニングに関するQ&A
 Q1 OT養成校や卒後にリーズニングを勉強する機会はありませんか?
 Q2 作業療法領域においてリーズニングの研究はどのくらいされているのでしょうか?
 Q3 リーズニングとEBPはどう違うのですか?
 Q4 リーズニングって作業療法の理論を使って考えることですか?
 Q5 自分のリーズニングが正しいのか間違っているのかわかりません。
 Q6 OTごとに違う考え方があることで支援や治療の方向性が変わってしまいます。
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