疑問・難問を解決!

外国人診療ガイド

外国人診療ガイド

■著者 西村 明夫

定価 3,520円(税込) (本体3,200円+税)
  • A5判  248ページ  2色
  • 2009年8月18日刊行
  • ISBN978-4-7583-0425-2

在庫僅少です。


日本語を話せない患者さんが来院したら?  言葉の問題から文化や宗教の違いまで医療現場での疑問を解決!

近年の在住外国人の増加に伴い,医療機関を受診する外国人患者の数は増加の一途にある。いわゆる「医療英会話」の教材は従来から多数刊行されているが,実際の医療現場では,ことばの問題に加えて,文化/宗教や医療制度の違いに起因する種々の問題を抱えており,会話の表現を紹介するだけの従来の医療英会話教材では,こうした問題の解決の助けにはならない。
本書では,NPO法人「MICかながわ」(医療通訳派遣システム構築事業)での活動を通じて,医療現場での具体的な問題点を見聞してきた西村氏が,外国人患者の受け入れにあたって多くの医療機関が抱える問題点を明らかにし,その対策を紹介する。


序文

 日本に在住する外国人はすでに200万人を超え,毎年増え続けています。そうした外国人も地域で暮らす住民ですから,生活していく中で病気やけが,出産で医療機関を訪れることがあります。そのとき困るのが文化・習慣・医療制度の違いやことばの違いによってコミュニケーションがうまく取れないことです。実際,外国人患者さんとのコミュニケーションに戸惑う医療関係者の方々も少なくないのではないでしょうか。しかし患者さんの「違い」を理解しないで診療効率を上げようとすると医療リスクが高ってしまいます。また,一方の外国人患者さん側も日本の医療に対してストレスをため込み,不信感をつのらせるという状況が見られます。
 そこで,本書は,どうしたら外国人診療をより良いものにしていけるか,どうしたらリスクを低減させることができ,診療効率を向上させることができるかということをテーマに執筆しています。
 医療の現場におけるコミュニケーションの基本は「ことば」ですが,たとえば,日本では民間の通訳派遣会社にプロ通訳者を頼むと1時間で1万円以上の料金がかかります。経費をかけないためには,家族や友人・知人,ボランティアに通訳をお願いせざるを得ないわけですが,医療通訳に関する適正なトレーニングを受けていなければ,診療に必要十分な意思疎通は期待できないばかりでなく,誤訳の危険性もあります。
 そこで,日本語会話が困難な外国人患者さんが来院したとき,今,できることは何かということになります。つまり,外国人医療において,患者さんの「違い」を踏まえ,より効率的でリスクが低く,確実性の高いコミュニケーション方法は何かということになります。本書では,その秘訣をできるかぎり具体的に記載したつもりです。
 外国人患者さんへの対応をつきつめていくと,おそらく「外国人患者さんにとって良いコミュニケーションは日本人患者さんにとっても良いコミュニケーション」になるのではないかと思います。その意味でも本書が外国人患者さんとの関係とともに,すべての患者さんとのより良い関係のための一助となれば幸いです。

2009年7月
西村明夫
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目次

イントロダクション
 1 外国人患者はどんな問題をかかえているのでしょうか?
 2 日本語ができない外国人患者が来院したらどう対応すればよいでしょうか?
 3 外国人患者の不安を和らげるにはどうすればよいでしょうか?
 
第1章 医療と文化の違い
 1 母国の医療事情と文化の違いでトラブルになりませんか?
 2 宗教上のことで注意することはありますか?
 3 中国の医療と文化の違いで注意することはありますか?
 4 ブラジルの医療と文化の違いで注意することはありますか?
 5 ペルーの医療と文化の違いで注意することはありますか?
 6 フィリピンの医療と文化の違いで注意することはありますか?
 7 タイの医療と文化の違いで注意することはありますか?
 8 ベトナムの医療と文化の違いで注意することはありますか?
 9 パキスタンの医療と文化の違いで注意することはありますか?
 10 欧米諸国の医療と文化の違いで注意することはありますか?
 
第2章 ことばの違い
 1 院内外の案内表示(日本語)が読めるのでしょうか?
 2 医療機関の書類(入院説明書や手術同意書など)を翻訳するときに注意する点は?
 3 妊産婦に渡す多言語の母子健康ガイドはありますか?
 4 カタコトの日本語が話せる患者はどの程度通じているのでしょうか?
 5 多言語医療情報ツールはどの程度有効でしょうか?
 6 外国人はみんな英語ができるのでしょうか?
 7 診療で通訳が入ると違和感や混乱はないでしょうか?
 8 日本語会話ができる家族や友人の通訳は大丈夫なのでしょうか?
 9 ボランティアに通訳を頼んでも誤訳の心配はないでしょうか?
 10 患者の会社の専属通訳者が同伴してきたときの注意点は?
 11 簡単な検査や処置,慢性患者の再診などでも通訳は必要でしょうか?
 12 いい通訳の見分け方はありますか?
 13 通訳を上手に使うコツはありますか?
 14 通訳の誤訳による医療過誤はだれが責任をとるのでしょうか?
 15 医療機関で職員として通訳を雇うのは得策でしょうか?
 16 トレーニングを受けた医療通訳を派遣してくれるところはありますか?
 17 電話で通訳してくれるところはありますか?
 18 医療通訳者はどの程度のスキルと医療用語の知識を持っているのですか?
 
第3章 生活背景の違い
 1 外国人患者が増えていますが,どうしてですか?
 2 在住外国人以外でことばや文化の異なる人たちはいますか?
 3 ビザや在留資格とは,どのようなものですか?
 4 外国人は住民票があるのでしょうか?
 5 不法滞在者とはどういう外国人なのでしょうか?
 6 在留資格のない患者にはどう対処すればよいのでしょうか?
 7 国際結婚の患者の生活背景はどのような状況でしょうか?
 8 留学生・日本語学習生の患者の生活背景はどのような状況でしょうか?
 9 工場労働者の患者の生活背景はどのような状況でしょうか?
 10 研修生・実習生の患者の生活背景はどのような状況でしょうか?
 11 難民の患者の生活背景はどのような状況でしょうか?
 12 永住者の患者の生活背景はどのような状況でしょうか?
 13 健康保険はみんな加入できるのですか?
 14 外国人患者は治療費未払いになりやすいのでしょうか?
 15 外国人が使える公費による負担の制度はありますか?
 16 外国人患者がたくさん来院すると経営面で苦しくなりませんか?
 
第4章 さいごに
 1 外国人患者のことでこんなにいっぱい覚えないといけないのですか?
 2 外国人患者のことで困ったときに電話で相談できるところはありますか?
 
資料編
 1 多言語医療問診票
 2 ママと赤ちゃんのサポートシリーズ
 3 主な多言語医療情報ツール
 4 家族や友人・知人の通訳の活用の割合
 5 医療関係者の意識と態度
 6 全国の主な医療通訳派遣システム
 7 神奈川県医療通訳派遣システムの評価データ
 8 多文化共生年表
 9 多言語外国人相談窓口情報
 10 外国人在留総合インフォメーションセンター
 
Column
 ◎ 日本の習慣,外国の習慣
 ◎ 原理主義
 ◎ 中国の医療事情
 ◎ ブラジルで道を聞かれる日本人
 ◎ 驚きの違い
 ◎ コンドームとレストラン
 ◎ 男の子を産め!
 ◎ 墓と動物
 ◎ 病院の食事は機内食並み?
 ◎ 使用したくない用語・使用すべきでない用語
 ◎ NPOとは
 ◎ 調査する人,される人
 ◎ 外国人医療の要点
 ◎ ちょっと待ってほしい電話通訳
 ◎ かながわエスニックレストラン
 ◎ 外国人も住民です
 ◎ 外国人は印鑑登録できるか
 ◎ 徹底取締とアムネスティ
 ◎ 多様なフィリピン人
 ◎ 卒業後の進路
 ◎ 日系ブラジル人の子どもの行く末
 ◎ 米国の健康保険制度
 ◎ 外国人医療の学術研究活動
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