膝靱帯手術のすべて

膝靱帯手術のすべて

■編集 越智 光夫

定価 19,800円(税込) (本体18,000円+税)
  • B5変型判  412ページ  オールカラー,イラスト500点,写真400点
  • 2013年3月25日刊行
  • ISBN978-4-7583-1047-5

膝の靱帯損傷治療をこの一冊に凝縮!

靱帯損傷は,膝分野において人工関節置換術と並ぶ大テーマである。本書では前十字靭帯,後十字靭帯,内・外側副靭帯,内側膝蓋大腿靱帯,膝蓋腱の損傷に加え,複合損傷例についてもその解剖とバイオメカニクス,発生機序から修復・再建・補強などの各手術の手技を精緻なイラストと共に詳説している。
症例によってどの手技が適応となるか,再建材料をどこから採取するか,再建用の骨孔をどの位置に作製するかなど,手術を行ううえでのポイントとコツを豊富に記載した本書は,靱帯治療の現場にいる医師すべてに訴求力のある「膝機能を快復させる手術手技」を徹底解説した,本分野におけるスタンダードである。


序文

巻頭言

 スポーツ人口の増加に伴い,スポーツ障害や外傷が増加の一途をたどっている。膝関節靱帯は,走ること,跳躍することなどアスリートのパフォーマンスを支える極めて重要な機能を有しているが,ことに膝前十字靱帯(ACL)損傷は事例も多く,スポーツを継続しようとする人々の前に立ちふさがる深刻な障害である。万一,損傷を放置したままスポーツに復帰すれば,パフォーマンスが不十分となることはさて置くにしても,二次的な半月板損傷,軟骨損傷が確実に引き起こされ,再起不能の致命的損傷に到る場合もある。アメリカでは年間約15万件,日本では約2万件の前十字靱帯再建術が行われていると言われている。
 日本の統計には不確かな部分も多く,日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会では,現在,その頻度,手術術式等に関して,詳細な調査検討を行っているところである。2〜3年以内には比較的正確な数字を公表できるのではないかと思っているが,いずれにしても,ACLを含めた靱帯損傷の際の受傷メカニズムについても不明なところが少なくない。
 2方向からの受傷ビデオを用い,スケルトンモデルでACL損傷時の膝の肢位を解明して得られたデータに基づくACL損傷の予防法の効果が徐々に出始めてはいる。しかし,ACL損傷をひとたび起こしてしまうと,再建術によって正常膝により近い機能を獲得しなければならない。正確な骨孔の位置を含めた再建法,適切な再建材料の選択,力学的に十分な再建材料の固定法,時期に合わせたリハビリテーション,トレーニングの方法などが完全に行われた後に,初めてスポーツへ復帰できる膝を取り戻すことが可能になるのである。
 再建術に関しては,これまで莫大なデータの蓄積がある。しかし,その詳細について国際的なコンセンサスがすべて得られているわけではない。2012年,アメリカ合衆国ワイオミングで開催されたACL Study Groupで実施されたアンケートでは,ACL再建術の豊富な経験を持つ国際的な専門家集団においても以下のように多くの意見の相違があることがわかっている。

1)評価にKT1000などの機器を使用するのは約半数にすぎない。
2)MRIの術前評価は複合靱帯損傷では100%使用されるが,PCL損傷では94%,ACL損傷では83%の使用に過ぎない。
3)ACL手術の年齢制限は決めている外科医は8%にしかすぎない。
4)再建材料としてハムストリング腱は56%に,骨付き膝蓋腱は35%に使用されている。
5)脛骨側の固定には吸収性のinterference screwが約半数に使用されている。
6)double bundle ACL再建術を常に行っている人は15%に過ぎない。85%の外科医はdouble bundle ACL再建術がsingle bundle ACL再建術より優れているとは思っていない。
7)大腿骨側の骨孔作製は脛骨トンネルからのものが8%,前内側ポータルが63%,臨機応変の対応が25%である。
8)日本では,ほぼ使用できない同種腱の臨床結果が自家腱のそれと同等であると思っている医師は20%にしか過ぎない。
9)2つの皮膚切開を用いる外科医が現在でも26%いる。
10)Derotation Braceを常に術後使用する頻度は35%であり,数年前の統計時より増加している。

 John Campbellにより採られたアンケート結果であるが,アメリカからの参加者は45%,アメリカ以外の参加者は55%であり,アンケートの回答率は38%であった。
 以上のことを踏まえたうえで,内容を理解し,解釈する必要があるが,靱帯再建,その後のリハビリテーションに関しても,意見の一致を見てはいない。
 靱帯再建に関して,解剖学がいつの世も大切なお手本であることに変わりはない。その解剖学の新しい成果を再建術に際し,どのように解釈し,生かして行くかが問われている。1975年にGirgisらがすでに,ACLは2束のバンドからなり,その解剖学的付着部についても正確に示した論文を発表し,多くの外科医によって引用されてもきた。ところが,Girgisらの知見は,その後のACL再建術には,まったくといってよいほど生かされてこなかったのである。残念なことに, 世界中の外科医,少なくとも影響力のある先生方は全員「視れども 見えず。」であったと言わざるをえない。 
 本書は現在,膝靱帯に関して日本の最先端をリードする多くの先生方に,その最も得意とされる分野について,それぞれの先生方の新しい知見に基づいて,総説していただいたものである。
 しかしながら,遠い未来から医学の進歩を振り返ることを想像すれば,本書の中に紹介された術式が,より進化した新たな術式に次々と取ってかわられることを期待せざるを得ないのも,私の正直な思いである。
 本書が日常の診療や手術に役立つことに加え,膝を志す日本の若い先生方が本書の内容を書き改めるに足る知見を世界に発信し,国際レベルで靱帯再建術の進化に貢献されることを祈念して,巻頭言としたい。

2013年1月
広島大学大学院医歯薬保健学研究院整形外科学教授
越智光夫
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目次

Ⅰ.膝関節を構成する靱帯の解剖とバイオメカニクス
 前十字靱帯の解剖とバイオメカニクス  望月知之,ほか
 後十字靱帯の解剖とバイオメカニクス  田島吾郎,ほか
 内側側副靱帯の解剖とバイオメカニクス  加藤有紀,ほか
 後外側支持機構の解剖とバイオメカニクス  宮武 慎
 内側膝蓋大腿靱帯の解剖とバイオメカニクス  黒田良祐,ほか
Ⅱ.前十字靱帯損傷 
 前十字靱帯損傷の発生機序  中村英一,ほか
 前十字靱帯損傷に対する再建術—ハムストリング腱を用いた前十字靱帯1重束再建術  中村英一,ほか
 前十字靱帯損傷に対する再建術—ハムストリング腱を用いた前十字靱帯2重束再建術  栗林 聰,ほか
 前十字靱帯損傷に対する再建術—ハムストリング腱を用いた前十字靱帯3重束再建術  田中美成,ほか
 前十字靱帯損傷に対する補強術  安達伸生,ほか
 遺残靱帯組織を温存した解剖学的2束前十字靱帯再建術  安田和則,ほか
 骨付き膝蓋腱を用いた脛骨経由前十字靱帯再建術—脛骨骨孔経由で遺残靱帯内を内側前方から外側低位後方に斜走するルートの作製  福岡重雄
 前十字靱帯損傷に対する再建術—膝蓋腱を用いた解剖学的長方形骨孔再建術  史野 根生,ほか
 前十字靱帯損傷に対する再建術—ナビゲーションを用いた再建術  前田周吾,ほか
Ⅲ.後十字靱帯損傷 
 後十字靱帯損傷の発生機序  藤本英作
 後十字靱帯損傷に対する補強術—後十字靱帯1束補強術  藤本英作
 後十字靱帯損傷に対する2重束再建術  佐伯和彦
 後十字靱帯損傷に対する再建術—Tibial inlay法による靱帯再建  徳永真巳
Ⅳ.内側側副靱帯損傷 
 内側側副靱帯損傷の発生機序  古賀英之,ほか
 内側側副靱帯損傷に対する修復術—つり上げ修復法と半腱様筋補強術  古賀英之,ほか
 内側側副靱帯損傷に対する修復術—脛骨付着部からの引き抜き損傷  武冨修治,ほか
 内側側副靱帯損傷に対する再建術  米谷泰一
 内側側副靱帯損傷に対する再建術—isometricityに留意した再建法  眞田高起,ほか
Ⅴ.内側膝蓋大腿靱帯損傷 
 内側膝蓋大腿靱帯損傷の発生機序  出家正隆,ほか
 内側膝蓋大腿靱帯損傷に対する修復術  出家正隆,ほか
 内側膝蓋大腿靱帯損傷に対する再建術  野村栄貴
 内側膝蓋大腿靱帯損傷に伴う合併損傷  夏梅隆至
Ⅵ.複合靱帯損傷 
 複合靱帯損傷の発生機序  遠山晴一,ほか
 急性期複合靱帯損傷の病態と対応  遠山晴一,ほか
 前・後十字靱帯損傷に対する同時再建術  二木康夫
 十字靱帯・内側側副靱帯複合損傷に対する治療  高橋成夫
Ⅶ.膝蓋腱断裂 
 膝蓋腱断裂の発生機序  本庄宏司
 膝蓋腱断裂に対する修復術と再建術  本庄宏司
 膝蓋腱断裂に対する再建術  松本秀男
Ⅷ.靱帯再建後再断裂に対するRevision Surgery 
 再再建術と私のポイント  越智光夫
 再再建術と私のポイント  内山英司
 再再建術と私のポイント  木村雅史
 再再建術と私のポイント  松下雅彦,ほか
 再再建術と私のポイント  近藤英司,ほか
 再再建術と私のポイント  大森 豪,ほか
 再再建術と私のポイント  宗田 大
 再再建術と私のポイント  吉矢晋一,ほか
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